基礎からわかるアメリカ大統領選挙

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本選 「選挙人」の獲得数競う

 2024年米大統領選は15日、共和党のアイオワ州党員集会で幕を開ける。世界に与える影響も大きい米大統領の選出過程は、独特で複雑だ。選挙の仕組みと特徴を解説する。

[Q]仕組みは…予備選・集会 候補絞り込み

 米大統領選は、2大政党の民主党と共和党がそれぞれの指名候補を各州の「予備選」と「党員集会」で選んだ後、両党候補が対決する「本選挙」となる長丁場の戦いだ。4年に1度、夏季五輪・パラリンピックと同じ年に行われる。

 各党が全米で指名候補を絞り込む過程には、有権者が投票所で個別に票を投じる予備選、一堂に会した支持者が挙手などで勝敗を決める党員集会がある。予備選か党員集会かの選択、党員集会の実施方法は、それぞれの州や地域に任されている。

 民主、共和両党の指名候補は、7~8月に行われる党大会で正式に決まる。1月中旬から順次行われる予備選・党員集会は、党大会に出席する「代議員」を選ぶ手続きだ。州や地域ごとに代議員の数が割り当てられており、代議員の獲得数が最も多かった候補が党の正式指名を得る。

 予備選と党員集会が多くの州で集中する日は「スーパーチューズデー」と呼ばれる。今回は3月5日になる。このあたりで勝算がないと判断した候補は選挙戦から撤退する。ある候補が過半数の代議員を獲得するか、その見通しが強まった段階で勝利宣言を行い、指名候補が事実上、決まる。

 予備選・党員集会を勝ち抜いた民主、共和両党の指名候補による争いとなるのが本選挙だ。一般有権者の投票日は、連邦法で「11月第1月曜日の次の火曜日」と定められている。今年は11月5日に投票が行われる。

 米大統領選は、正式には有権者が候補に直接投票するのではなく、大統領に投票する「選挙人」を選ぶ間接選挙だ。候補は全米50州と首都ワシントンに割り振られた計538人の選挙人の数を競う。過半数の270人以上を得た候補が大統領の座を射止める。

 各州の選挙人の数は、上院議員2人と人口に基づいて配分される下院議員の数の合計となる。2020年大統領選からは13州で選挙人数が変更された。最も多いのがカリフォルニア州の54人で、テキサス州の40人、フロリダ州の30人が続く。最少はアラスカ、デラウェアなど6州と首都ワシントンの3人。

 48州と首都ワシントンでは、「勝者総取り」方式が採用されている。相手より1票でも多く票を得れば、すべての選挙人を獲得できる。このため、選挙人の数が多い州で勝利することが重要になる。

「揺れる州」勝敗を左右

 例外は、ネブラスカ(選挙人5人)とメーン(同4人)の2州。両州では、州全体の最多得票候補が選挙人2人を獲得し、下院の選挙区ごとにも票を数え、それぞれ最多得票の候補が選挙人1人ずつを得る。

 選挙人の数を争うという独特の仕組みにより、全米での総得票数が相手を上回っても、落選することがある。16年大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン氏は全米で約6585万票を獲得し、共和党候補のドナルド・トランプ氏の約6298万票を上回ったが、選挙人数では232人対306人で敗れた。

 共和党は農村部、民主党は都市部で強く、人口構成によって投票前から結果が明らかな州も多い。民主党が優位な州は「ブルー・ステート(青い州)」、共和党が強い州は「レッド・ステート(赤い州)」と呼ばれる。青と赤はそれぞれの党を象徴する色だ。リベラルな政策に賛同する人が多い「青い州」は北東部や西海岸、キリスト教福音派信者ら保守派住民が多い「赤い州」は南部に広がる。

 勝敗の鍵を握るのは、民主、共和両党の支持率が 拮抗きっこう する「接戦州」だ。接戦州は選挙のたびに勝利する政党が変わり、「スイング・ステート(揺れる州)」と呼ばれる。今回の選挙ではアリゾナ州やウィスコンシン州、ジョージア州などの結果が注目される。

[Q]立候補の要件は…米国生まれの米国民

 米国憲法は大統領の条件として、〈1〉米国生まれの米国民〈2〉35歳以上〈3〉米国に14年以上居住――の3要件をすべて満たす必要があると定めている。

 米国籍を持っているだけでは立候補できず、「米国生まれの米国民」でなければならない。カリフォルニア州知事だったアーノルド・シュワルツェネッガー氏はオーストリア出身のため、出馬できない。海外で生まれても、両親が米国民で本人も米国民であれば、資格があるとされる。

 また、憲法修正14条3項は、過去に憲法を支持する宣誓をしながら、国への反乱に関与した人物が政府の「官職」に就くことを禁じている。コロラド州の最高裁判所は昨年12月、トランプ氏の言動が2021年1月の議会占拠事件につながったとして、3月5日の同州予備選の投票用紙から除外する判断を示した。トランプ氏が連邦最高裁に上訴しており、判断は確定していない。2月8日に口頭弁論が行われる。

選挙権は18歳以上

 選挙権は18歳以上の米国民に与えられ、米国生まれかどうかは問われない。投票するには、選挙人名簿に載せてもらうための有権者登録をする必要がある。

[Q]指名争い 見通しは

バイデン氏有力 再選狙う…民主/トランプ氏独走 人気健在…共和

 共和党は、前大統領のドナルド・トランプ氏(77)が支持率で他候補を引き離している。民主党は現大統領のジョー・バイデン氏(81)以外に有力候補がいない。現時点では、2020年大統領選と同じ対決構図となる公算が大きい。

 共和党支持者の間でトランプ氏の人気は健在だ。政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた最新の世論調査平均では、トランプ氏が支持率61・1%で独走しており、11・3%の元国連大使ニッキー・ヘイリー氏(51)、10・9%のフロリダ州知事ロン・デサンティス氏(45)に差をつけている。

 民主党では、再選を目指すバイデン氏が反トランプ票の結集を試みる。ただ、2期目を終えた時点で86歳となるバイデン氏の高齢を不安視する声は、民主党内にも根強い。指名争いには世代交代を訴える下院議員のディーン・フィリップス氏(54)らが出馬しているが、バイデン氏を追い落とすほどの勢いはない。

 無所属候補では、弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏(69)が注目される。1968年に暗殺されたロバート・ケネディ元司法長官の息子で、ジョン・F・ケネディ元大統領のおいにあたる。一時は民主党からの立候補を模索したが、昨年10月に無所属で立候補を表明した。

 米紙ニューヨーク・タイムズなどが昨年10~11月に実施した世論調査によると、ネバダ州など接戦6州でのケネディ氏の支持率は24%。トランプ氏の35%、バイデン氏の33%に及ばないが、若者からの人気が高い。選挙戦に影響を及ぼす存在になる可能性もある。

[Q]日程は…選挙戦 トランプ氏公判と並行

 今回は、民主、共和両党の予備選・党員集会と並行し、トランプ前大統領の裁判が行われる異例の日程となる。公判でのトランプ氏の言動が選挙戦に影響を与える可能性が高い。

 共和党の初戦は15日のアイオワ州党員集会。23日のニューハンプシャー州予備選、2月8日のネバダ州党員集会、2月24日のサウスカロライナ州予備選と続く。

 トランプ氏が起訴された4事件のうち、3事件の初公判が指名候補争いの最中に予定されている。2020年大統領選の結果を覆すために引き起こしたとされる議会占拠事件の初公判は3月4日で、予備選・党員集会が集中する「スーパーチューズデー」の前日に開かれる。トランプ氏は公判を「ショー」にし、支持固めに利用するのではないかと言われている。

 再選を目指すバイデン大統領の指名が既定路線の民主党は今回、これまでと異なる選挙日程を組んだ。以前は共和党と同様に最初の党員集会をアイオワ州、続く予備選の初戦をニューハンプシャー州で行うことが慣例だった。

 両州は、人口の9割を白人が占める。バイデン氏は選挙日程に人種の多様性を反映させたいという観点から変更を求めた。党全国委員会は、黒人人口が比較的多いサウスカロライナ州で2月3日に最初の予備選を開くと決定した。

 ただ、「初戦」にこだわるニューハンプシャー州はバイデン氏の意向に反し、1月23日に予備選を行う。バイデン氏の名前が投票用紙に記載されないため、結果がそのまま認められる可能性は低いとみられる。

 指名候補が正式に決まる党大会は、共和党が7月、民主党が8月に予定している。9月以降に両党指名候補の討論会があり、選挙戦は佳境に入る。一般有権者による投票は11月5日で、就任式は来年1月20日に行われる。

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4924539 0 アメリカ大統領選挙 2024/01/13 05:00:00 2024/01/15 15:03:55 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/01/20240112-OYT1I50128-T.jpg?type=thumbnail

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