トランプ氏、起訴も逆手に熱狂拡大…「米国を再び偉大な国に」と不満すくいあげ根強い支持

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[米大統領選2024]号砲迫る<1>

 「民主主義に戦争を仕掛けている腐敗した政治家たちから、この国を解放するための正義の聖戦だ」

12月13日、米アイオワ州で開かれた集会で演説するトランプ前大統領=ロイター
12月13日、米アイオワ州で開かれた集会で演説するトランプ前大統領=ロイター

 米共和党のドナルド・トランプ前大統領(77)は12月13日、アイオワ州コーラルビルでの集会で、自らが大統領経験者で初めて起訴されたことに触れ、民主党のジョー・バイデン大統領(81)をののしった。

 2021年1月にトランプ氏支持者らが米連邦議会を占拠した事件を「民主主義への攻撃」と批判するバイデン氏に対し、トランプ氏は起訴がバイデン政権による政略だと主張する。

 「勤勉に働いても家も買えない。アメリカンドリームは死んだ」。集会ではポピュリストの本性をあらわにし、国民の不満を巧みにすくいあげる。

 トランプ氏は、大統領選と並行して争われる自身の公判をテレビ中継するよう求めている。検察と争う姿を公開し、支持につなげるためだ。弁護団は裁判所への提出書類でこう訴えた。

 「検察は茶番を暗闇の中で続けたいのだ」

 米大統領選の共和党指名候補争い初戦となる1月15日のアイオワ州党員集会を前に、候補たちの動きを追った。

トランプ派「全て冤罪」…閉塞感打破へ「強さ」信奉

 米共和党の指名候補争いでトップに立つトランプ前大統領の熱狂的な支持者にとって、トランプ氏が議会占拠事件などで起訴されたことがバイデン政権への怒りをたぎらせるエネルギーとなっている。

 アイオワ州シダーラピッズで12月2日に開かれた集会。トランプ氏の捜査批判に約1000人の聴衆が「USA」コールで応え、「バイデンが民主主義を攻撃している」と書かれたプラカードを揺らした。

 最近の選挙集会では、トランプ氏が正面を凝視する表情をプリントした服を着た参加者が目立つ。顔写真は、トランプ氏が8月に出頭したジョージア州の拘置所で撮影された「マグショット」だ。

 「4件全部、 冤罪えんざい に決まっている。その証拠に起訴されるたびに支持率が上がった。それは国民が茶番だと認識しているからだ」

 アイオワ州コーラルビルで12月13日に開かれた集会で、マグショットの下に大きく「無罪」と書かれたTシャツを着たジム・フェンダーさん(68)はまくし立てた。

 トランプ氏は最近、出頭義務のない民事訴訟にも出廷し、カメラをにらみつけている。法廷で「徹底的に戦う姿」を支持者にアピールするためだ。

 支持者は、トランプ氏が「強い米国」を取り戻し、米国に漂う 閉塞へいそく 感を打ち破ると期待しているようだ。

集会で支持者を前に演説するトランプ前大統領(12月2日、米アイオワ州シダーラピッズで)=田島大志撮影
集会で支持者を前に演説するトランプ前大統領(12月2日、米アイオワ州シダーラピッズで)=田島大志撮影

 「トランプ氏が大統領の間に世界で戦争が起きたか。それがすべてを物語っている」

 12月13日の集会に参加したファーン・フォン・トリガーさん(62)は、ロシアのウクライナ侵略やイスラム主義組織ハマスのイスラエル攻撃が起きたのは、バイデン政権の「弱さ」が原因だと信じている。

 「我々が勝てば国民は再び尊敬される。米国は再び偉大な国となる。私は第3次世界大戦を阻止する」。トランプ氏はこう主張し、当選した2016年と同じ「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」というスローガンを掲げる。頭文字から「MAGA(マガ)」と呼ばれる強固な支持層は、「米国第一」の主張に共鳴し、再起を支える政治基盤だ。

 MAGAにとどまらず、トランプ氏への支持は根強い。16年大統領選の主張には、現在では党派を超えて受け入れられているものもある。

 不法移民対策は、その代表例だ。当時はメキシコ国境沿いに「壁」を建設すると公約し、民主党だけでなく共和党内からも批判が噴出した。

 だが、不法移民の流入が深刻化すると、寛容な移民政策を掲げていたバイデン政権は昨年10月、壁の建設再開を認めた。トランプ氏は勝ち誇ったように「バイデンの国境開放は、米国民にとって病であり狂気だった」と繰り返している。

 自信を深めるトランプ氏が返り咲いた場合、独裁化の懸念がつきまとう。

 トランプ氏は2020年大統領選で、既存支配層による「ディープステート(闇の政府)」が政権を操っているという陰謀論を唱えた。1期目に成果を上げられなかった政策やロシア疑惑など自らに降りかかった問題は「ディープステートの邪魔や仕業」だと訴える。

 トランプ陣営内には、再選後にトランプ氏に忠誠を誓う人材で政権高官を固める計画がある。トランプ氏に近い保守系政策研究機関のヘリテージ財団は、「プロジェクト2025」と称して人材を募り始めた。米メディアには、次期トランプ政権での政治任用に向けた「求人案内」と目されている。

 民主党は、トランプ氏が復権すれば「権力を乱用する」と世論の懸念をあおっている。実際、トランプ氏は政敵を「害虫」と呼び、再選後の報復にたびたび言及している。

 保守系のFOXニュースの人気司会者でトランプ氏に近いショーン・ハニティ氏は12月5日、トランプ氏との対談番組で「メディアはあなたを『独裁者』と呼びたがっている。誰かに対する報復として権力を乱用することはないと約束するか」と問いかけた。

 トランプ氏はこの助け舟に乗らず、こう答えた。

 「初日を除いてだ。国境を封鎖する。掘削する。その後、私は独裁者ではなくなる」

 政権復帰の初日に不法移民が流入するメキシコとの国境を封鎖し、温暖化対策で中断した化石燃料掘削の許可を出すと宣言した。

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4836587 0 アメリカ大統領選挙 2023/12/15 05:00:00 2024/01/15 16:49:45 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/12/20231215-OYT1I50013-T.jpg?type=thumbnail

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