ベトナム戦争期の高僧焼身自殺60年、各地で続く法要「歴史の流れを変えた」

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ベトナム各地で法要 今も

サイゴン(現ホーチミン市)の路上でガソリンを浴びるティック・クアン・ドック師。この後、衣服に火をつけて焼身自殺した(1963年6月11日)=AP
サイゴン(現ホーチミン市)の路上でガソリンを浴びるティック・クアン・ドック師。この後、衣服に火をつけて焼身自殺した(1963年6月11日)=AP

 ベトナム戦争期に南ベトナム政権が行った仏教徒弾圧に抗議し、高僧ティック・クアン・ドック(1897~1963)が焼身自殺してから11日で60年となる。AP通信が配信した写真は世界に衝撃を与え、政権崩壊の序曲となった。各地では法要が開かれ、自己犠牲の精神を語り継いでいる。(ベトナム南部ホーチミン 安田信介)

ホーチミン市の寺院で開かれた法要(7日)=安田信介撮影
ホーチミン市の寺院で開かれた法要(7日)=安田信介撮影

 「自分の体をたいまつとして(南ベトナム)政権の闇を打ち破った。非暴力の精神で、宗教の平等と自由への闘いに身をささげた」

 7日朝、ホーチミンの寺院で僧侶ら数百人が参加した法要で、ドック師の行為がこう紹介された。

 焼身の現場にいた僧侶ティック・チー・クアンさんは「人々はドック師を包む炎が消えるまで静かに見守った」と振り返った。法要は首都ハノイや中部フエでも行われた。

 1955年、米国を後ろ盾に成立した南ベトナムのゴ・ジン・ジェム政権は、カトリックの優遇政策を強行。仏教徒への弾圧が激しさを増す中、63年にドック師はサイゴン(現ホーチミン市)の路上で抗議の焼身自殺を遂げた。その直前、「祖国の力を保つため、国民を慈しみ、宗教の平等を実現するようお願いする」とゴ・ジン・ジェム大統領に訴えた手紙を残していた。

 AP通信のマルコム・ブラウン記者が撮影した写真は世界を揺るがし、反政権の声が高まった。63年11月にジェム政権はクーデターで崩壊した。

 ドック師の焼身自殺は、仏教徒の抵抗の象徴として、現在も約8割を占める仏教徒の精神的な支えとなった。ベトナム仏教学院のレー・マン・タット副院長は「ドック師は歴史の流れを変えた。自己犠牲の精神は広くベトナム人に受け入れられ、敬愛されている」と語る。

 ただ、ベトナムでは現在も宗教団体が政府への登録を義務付けられている。憲法がうたう「宗教と信仰の自由」が完全に認められているわけではないとして、人権団体から改善を求める声も出ている。

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4242008 0 国際 2023/06/11 05:00:00 2023/06/11 21:46:03 2023/06/11 21:46:03 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/06/20230611-OYT1I50007-T.jpg?type=thumbnail

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