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アフリカ連合(AU)議長として19日から広島市で開かれる先進7か国首脳会議(G7サミット)に参加するコモロのアザリ・アスマニ大統領が読売新聞の単独インタビューに応じた。ロシアのウクライナ侵略を「国際法違反だ」と断じ、法の支配に基づく国際秩序の重要性を強調した。(モロニ 深沢亮爾)
インタビューは12日に首都モロニの大統領府で行われた。インド洋に浮かぶ島国のコモロは、2月から任期1年のAU議長国を務めている。
アザリ氏は「コモロのような小国は国際法が守られることで保護されている」と訴え、ロシアのウクライナ侵略で揺らいでいる国際秩序を維持していくことの重要性を訴えた。コモロは安全保障を旧宗主国のフランスに依存しており、総兵力は約1100人にすぎない。
ロシアのウクライナ侵略で、アフリカでは食糧危機や物価上昇(インフレ)が深刻化している。こうした現状を踏まえ、「アフリカは可能な限り早く戦争が終わることを願っている」と述べた。ロシアが7月に4年ぶりに開く「ロシア・アフリカ首脳会議」への出席も明言した。
アフリカは冷戦期に旧ソ連の支援を受けた勢力が政権を握る国を中心に、米欧とロシアの対立に中立の立場を取る国が多い。アザリ氏の発言は、G7とロシア非難の歩調を合わせながらも、対立の激化は望まない姿勢を示したものだ。
経済援助や資源輸入で結び付きを強める中国に関しては、「アフリカの大きなパートナーだ」と述べ、各国への投資などの役割を評価した。米中対立の激化に懸念を示した上で、「G7サミットでは、アフリカ代表として米中の緊張緩和に役割を果たしたい」とも語った。
中国政府を評価する理由として、「アフリカ各国に対し、内政不干渉の原則を堅持している。アフリカにしばしば干渉する米欧と異なり、アフリカで中国と関係が悪くなった国はない」と指摘した。
欧州各国による植民地支配の歴史が長かったアフリカでは、潜在的に米欧への不信感が根強い。米欧が掲げる人権や民主主義の理念はアフリカで広く受け入れられているが、順守を求める姿勢が「干渉」と捉えられれば、「植民地主義の延長」(コモロ政府高官)として反発を招くリスクが高いことを示す。
コモロは伝統的にフランスを中心とした親米欧の外交路線をとっている。日米が重視している「自由で開かれたインド太平洋」の構想を評価しつつも、「関係する国すべてに開かれたものでなければならない」と述べ、自国への包囲網ととらえている中国への配慮も示した。
一方、アザリ氏は日本との関係強化策として、地熱発電などの再生可能エネルギーの分野での協力拡大に意欲を示した。日本政府に対し、コモロでの大使館開設を要請していることも明らかにした。
◆コモロ= アフリカ大陸とマダガスカル島に挟まれたモザンビーク海峡に浮かぶ島国。人口約90万人。住民はアフリカ系やアラブ系など多様で、イスラム教を国教とする。1975年にフランスから独立した。近海に「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスが生息することで知られる。