神父に「破廉恥なうそつきだ」…韓国元大統領、名誉毀損で有罪判決

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 【ソウル=建石剛】1980年5月に韓国で起きた民主化抗争「光州(クァンジュ)事件」にからみ、証言者(故人)の名誉を傷つけた罪に問われた元大統領の全斗煥(チョンドゥファン)被告(89)に対し、光州地裁は30日、懲役8月、執行猶予2年(求刑・懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。左派の文在寅(ムンジェイン)政権下で、保守の大統領経験者が有罪判決を受けたのは、李明博(イミョンバク)氏、朴槿恵(パククネ)氏に次いで3人目だ。

 全被告は2017年に出版した回顧録で、抵抗する市民に軍のヘリコプターが機銃掃射したという目撃談を語った神父について、「破廉恥なうそつきだ」と記した。検察は18年5月、死者名誉毀損(きそん)罪に当たるとして在宅起訴した。

 公判の争点は、ヘリ射撃の有無と、全被告がそれを認識していたかどうかだった。全被告は公判で、「事件中に光州市内でヘリ射撃はなかった」などと起訴事実を全面的に否定した。だが判決は、別の目撃証言などをもとに、神父の証言は信用できると判断し、軍によるヘリ射撃を事実と認定した。

 さらに、全被告が当時、国軍保安司令官を務めていたことから、「当時の状況を正確に認識していた」と認め、「ヘリ射撃がなかったという主張は虚偽となるかもしれない、と認識しながら回顧録を執筆した」と断じた。

 

 光州事件は、朴正煕(パクチョンヒ)大統領暗殺後の民主化運動に対し、全被告を中心とした新軍部が全国に戒厳令を敷き、運動指導者の金大中(キムデジュン)氏(元大統領、故人)を拘束したことに市民が反発して起きた。金氏の地盤の光州市で、蜂起した市民と軍が衝突し、市によると161人の死者が出た。1987年の民主化の原点とされる。

 全被告は後に光州事件の責任を追及され、97年の最高裁判決で無期懲役が確定したが、直後に特別赦免された。

 軍事政権に立ち向かった民主化運動家を源流とする文政権は全被告を、運動を弾圧した保守政権の象徴と位置づける。光州事件についても、2017年の就任直後から真相究明を始めた。文大統領は今年5月の光州事件40年の式典では、「今からでも勇気を出して真実を告白すれば、許しと和解の道が生まれる」と訴えた。

 全被告が市民への発砲を指示したかどうかなどの核心部分は、まだ明らかになっていない。ただ、今回の判決により、自身も民主化運動に取り組んだ文氏が、軍事政権の流れをくむ保守派への責任追及を強めることにつながりそうだ。

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