福島千里さん「インターハイは頑張ったプロセスが財産」…陸上女子100・200m日本記録保持者
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全国高校総体(インターハイ)が7月22日から8月21日まで、北海道(一部競技は山形、栃木、和歌山県)で開催される。全国から約3万6000人の選手や監督・コーチが参加し、30競技で熱戦を繰り広げる。7月21日には旭川市で少林寺拳法の予選が始まり、22日に札幌市の北海きたえーる(北海道立総合体育センター)で総合開会式が行われる。北の大地での決戦を前に、北海道出身の元陸上選手・福島千里さん(35)が高校生にエールを送った。
帯広南商高で3年連続出場、埼玉に強力なライバル
陸上女子100メートル、200メートル日本記録保持者の福島さんは北海道幕別町出身。帯広南商高時代に3年連続で全国高校総体に出場したが、頂点には届かなかった。3年生だった2006年は100メートルで2位、200メートルでは3位だった。
「勝てなかったけれども、成長するきっかけになった。やっぱり悔しかったし、また頑張ろうと思えた」と振り返る。
タイトルには無縁だったからこそ、敗れた選手へのまなざしは温かい。
「そこを目指して頑張ったプロセスは競技を続けても続けなくても、人生にとって大きな財産になる。最後は1人しか勝てないので、負けた選手には、この結果が全てではない、ここからどれだけ積み重ねていけるかが大事ということを伝えたい」と強調する。
強力なライバルがいた。同学年だった埼玉栄(埼玉)の高橋
「ライバルの存在は大きかった。高橋さんはもちろん、たくさんの選手が
高校卒業後も高橋さんと競り合いながら成長し、100メートルと200メートルで次々に日本記録を更新した。五輪は08年北京、12年ロンドン、16年リオデジャネイロの3大会に出場した。日本の女子短距離陣を引っ張り、新たな歴史を作ったスプリンターだった。
北海道開催、寒暖差に注意
22年に現役を引退。現在は順大陸上部コーチも務める福島さんは、高校総体の地区予選を視察に訪れたという。
「都道府県大会や地区大会を経て、ようやくインターハイにたどり着くわけで、ここまで来るだけでも、『おつかれさま』という気持ちになる。最後の力を振り絞って、思いきり走ってもらいたい」と期待する。
真夏の決戦とはいえ、冷涼な気候の北海道が舞台となる。特に屋外競技では、選手にとって良好な条件となることも予想されるが、油断はできない。
「前回の北海道インターハイを経験した方々に聞くと、オーバーが必要なほど寒かったそうです。一方、東京五輪では涼しいと思ってマラソン・競歩の会場を札幌に移転したのに、当日は猛暑だった。予想がつかないところが、もしかしたら北海道の特徴かもしれない。寒暖差は大きい可能性があるし、体調管理には万全の準備をしてもらいたい」と気遣う。
大自然に囲まれ、海の幸、山の幸にも恵まれた北の大地での戦いが幕を開ける。福島さんも故郷で高校スポーツの祭典が開かれるのを心待ちにしている。
「おいしいものもたくさんあるので、試合前は難しいかもしれないけれど、試合が終わったら、食べて帰ってもらえたらいい。自然が豊かな北海道のおいしい空気を吸って、とにかくインターハイという舞台を楽しんでほしい」と語った。
ふくしま・ちさと 1988年生まれ。100メートルで11秒21、200メートルで22秒88の日本記録を持つ。2010年のアジア大会(中国・広州)で100メートルと200メートルの2冠を獲得。五輪は3大会、世界選手権は4大会に出場した。今年4月から順大特任助教。