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防衛省は19日、防衛力の抜本的強化に関する有識者会議の初会合を開催した。2022年12月に決定した国家安全保障戦略など3文書の実現状況を点検して課題を整理し、政策に反映させる狙いがある。会合では、円安と物価高を踏まえ、23~27年度の防衛費総額約43兆円を増やす可能性が提起された。
有識者会議は、「戦略的・機動的な防衛政策の企画立案」のため、「有識者から政策的な助言を得る」と明記した国家防衛戦略に基づいて設置された。
委員は座長に就任した榊原定征・元経団連会長のほか、北岡伸一・東大名誉教授や澤田純・NTT会長、杉山晋輔・元駐米大使、森本敏・元防衛相、山口寿一・読売新聞グループ本社社長ら17人が務める。
会議では今後、個別の論点を取り上げる部会を設けて議論を進める。
適正な予算の規模や執行、所得、法人、たばこ3税の増税を含めた財源確保策のあり方などがテーマになるとみられる。
軍事と民生双方に活用できる軍民両用(デュアルユース)技術の開発推進や、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入など、具体的な防衛政策の進展具合も検証する見通しだ。
会合で、木原防衛相は「『ポスト43兆円』の話をいかに進めていくかも並行して検討していく機会にしたい」と述べ、28年度以降の防衛費のあり方を議論することも求めた。
また、防衛力強化を通じて防衛産業を育成する重要性を指摘し、「安全保障と経済成長の好循環を分かりやすく示し、国民に理解をいただくことが不可欠だ」と強調した。
榊原氏は「昨今の物価高や為替変動を考えると、43兆円の枠で防衛力、装備の強化ができるのか。見直しをタブーとせず、議論すべきではないか」と述べた。
円安などに伴う防衛装備品の調達価格上昇を巡っては、政府は現段階では43兆円の「範囲内で防衛力を強化する方針は変わらない」(岸田首相)との立場だ。林官房長官は19日の記者会見で、「一層の効率化、合理化を徹底する。防衛力整備計画を見直すことは考えていない」と語った。