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――沖縄県は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対している。移設工事が遅れれば、それだけ普天間の返還が遅れることになる。
「辺野古に新基地を作らせない」という知事選の公約は今も変わらない。辺野古移設は技術的にも財政的にも困難だ。「辺野古が唯一の移設先」だという国の考え方にとらわれず、普天間飛行場の県外、国外移設に向け、政府に対話による解決を訴えていく。
埋め立て予定地に軟弱地盤が見つかり、防衛省沖縄防衛局が県に設計変更の承認を申請した。県はこれまで3回にわたって地盤や護岸の安定性、環境への影響について質問し、回答を受けた。現在、防衛局に4回目の質問をしており、厳正に審査している。
――旧民主党の鳩山政権も県外移設を模索したが断念した。県は、辺野古以外の移設先について、具体案はあるのか。
県内に駐留する米軍部隊の移設先の検討については、日米両政府が議論してしかるべきだ。
――沖縄返還協定の調印から50年となった。米軍基地の現状をどう見る。
米軍統治下で多くの苦労を重ねてきた県民にとって、本土復帰は悲願だった。
ただ、返還協定で、米国に引き続き米軍施設の使用が認められ、今なお日本の面積の約0・6%の沖縄県に全国の米軍専用施設の70・3%が集中している事態は異常だ。復帰前に多くのウチナーンチュ(沖縄人)が描いていた「基地のない平和な島」という理想とはほど遠い状態にある。
米軍関連の事件や事故、騒音、環境被害が後を絶たない。現在、沖縄本島中南部の人口が集中している地域に米軍基地があり、経済の発展の妨げになっていると認識している。
他方、一般的な沖縄の人たちは米国の文化を取り入れ、新しい文化を醸成してきた。多くの県民が「米軍人は嫌いだ」と思っているわけではない。米軍の運用や現状のあり方を巡る課題について、解決の道を探ってほしいというのが県民の希望だ。
――中国が覇権主義的な行動を強め、在沖縄米軍の重要性も高まっている。
日米同盟が日本と東アジアの平和と安定に寄与してきたことは、県も理解している。近年、アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増していることも十分理解している。
ただ、万一、米中の有事となった場合は、米軍基地が集中する沖縄が優先的な攻撃目標とされるのではないかという重大な懸念を持っている。政府は外交努力で米中の緊張緩和を図り、真の安全保障の確立に向けて、日本だからこそできる取り組みをしてほしい。
――玉城氏の支持基盤である「オール沖縄」から保守系が離れ、すでに保革共闘は崩れているのではないか。
一部の企業などがオール沖縄と距離を取っているが、水面下で私を支えてくれている保守の人も多いと感じている。オール沖縄に参加する無党派層の人たちは、そもそも保守・革新のイデオロギーに左右されていない。
――今年度で期限が切れる沖縄振興特別措置法は延長を求めるか。
沖縄振興特措法に基づく公共事業の高率補助や、県が自由に使途を決められる一括交付金などは、沖縄にとって地理的不利性を優位性に変えていく重層的な制度だ。引き続き、継続・拡充していけるよう、政府には要望したい。
来年度からの次期沖縄振興計画では、持続可能な開発目標(SDGs)という理念を取り入れ、基盤産業の観光でも環境に配慮した仕組みを作り、世界に選ばれる持続可能な観光地を目指したい。
沖縄県知事 玉城デニー氏 =うるま市出身。上智社会福祉専門学校卒。本名は玉城康裕。タレント、沖縄市議などを経て2009年衆院選で旧民主党から初当選。衆院議員を4期務め、自由党幹事長などを歴任。死去した翁長雄志・前知事の後継候補として18年の知事選に出馬し、初当選した。61歳。