有森也実、更年期症状あえて治療せず「体の変化は生きている証拠」
完了しました
モデルや俳優たちが自身の更年期の症状について、SNSや雑誌などで発信しています。有森也実さん(54)もその一人。雑誌やテレビなどで更年期の症状について語るときに、「体の変化は生きている証拠だから仕方ない」と話しています。一時は、俳優をやめることも頭をよぎったという更年期の症状について、今、オープンに語るのはなぜなのでしょうか。年齢を重ねることへの向き合い方についてメッセージをもらいました。
顔の右半分が動かない…
自分の体のことを話すのは、私の中ではすごく自然な流れです。「今日、朝ご飯何食べました?」というのと同じレベル。更年期の話は、それぞれ考え方、スタンス、症状も違いますよね。これが正解というものがないから、自分から発信しにくい。
こういう機会をいただいて自分の経験を話すことができて、それを読んだ方が、これは私に近い、こういう考え方なら分かる、気持ちがすっきりした、と前向きになっていただけたらうれしいですね。もちろん、これは違う、ということでもいいと思います。
私は、あえて治療はしませんでした。けっこうきつかったけど、自分の体の変化をちゃんと経験してみたいという、興味があったんです。48歳の時に満員電車に乗った際、顔が熱くなって体温調節ができない感覚になりました。その時点で生理の周期が乱れていて、これはもう更年期に入っているのかも、いよいよかと。ほてり、リンパの腫れ、そして顔面神経痛と立て続けに色んな症状がきて、正直、まいったな、と思いました。
更年期の症状に関する知識はほとんどなかったので、友達に色々聞きました。顔面神経痛になった時は、表情がコントロールできないのが困りました。自分ではわからないのですが、顔の右半分が引きつっていて動いていなかったようです。SNSで「目がおかしい」と書かれたこともありましたね。脳外科に行きましたが異常はないので、「これも更年期の症状の一つなのか」という結論になりました。
更年期と老化は、同じタイミングで意識することになりました。老眼も急にひどくなりました。でもね、自分の体の変化は生きている証拠で、年齢を重ねることは人生そのもの。それを表現するのが俳優という仕事で、美しさだけではない価値があるはず、と思うと同時に、つるつるピカピカ、しわ、染み一つない顔が美しいという基準の中での表現は違うんじゃないかなと思っていました。
ただ、「女優」という肩書がつくことで「美しさ」を当たり前とされる現実もあり、芸能界は私の居場所じゃないのかなと思ったこともありました。だからといって何ができるのかなとか、色々考えたタイミングでした。
症状がきつかったのは3年ぐらいでしょうか。フラメンコを始めて、ずっと続けていたバレエにも助けられました。根底には、やっぱり、どこかで自分の体、自分のことをちゃんと信用していられたのかもしれません。自分の軸、とでもいうのでしょうか。バレエの先輩から「通り過ぎるものよ」と言われたのも支えでした。終わりがくるというのは大きい。自分の体と向き合いの時間、いたわりの時間だと思うようにしました。
次から次に症状が変わるので、「次はこうきたか~」とか「もう勘弁してよ~、はいはい」みたいにつぶやいていました。もちろん、すごくネガティブにもなりましたよ。起きられなかったこともあります。
自分基準を知ると楽になる
20代、30代の時にもっと女性という性について、自分の体について知識を付けておけばよかったと思います。母の言葉とか、おばあちゃんの言葉とか聞きたかったな。これからの時代は、そういう話をもっと自然にできるはず。「大手小町」の読者世代の皆さんには、女性とは何か、女性の体とは何かという話を女同士、ぜひ、どんどんしてほしい。急に生理になってそこから話すというわけではなく、もっと自然に話ができたらいいですね。その中の一つに「更年期」があってもいいと思うんです。
もう一つは、生活、食べ物、習慣、ものの考え方、あらゆることにおいて、自分を知ることが大事だと思います。「自分基準」を知るといえばよいのかな。これを食べて、こんな音楽が好きで、こんな香りでリラックスできます、ということが分かっていると安心できる気がします。何でもいいんです。チョコでもニンジンでも大根でも、ゴマでもね(笑)。情報がたくさんがある中で、自分を元気づけられる何かを知ることは、これから年齢を重ねていく途中できっと役に立ちます。
更年期は、それまでの人生の総括でした。仕事への向き合い方、自分への向き合い方、これまで、これからのこと。体って本当に変化するんだなと思いました。自分の体、自分の気持ちなのに、「こんなにコントロールできないものってあるんだ」とびっくりしました。その感覚が次のステージには必要だったのでしょうね。優しさや誰かを思いやること、そして、優しさを受けるための感受性を育んでくれました。
更年期に関する話は、どれも正解だし、どれも正解じゃない。本当にデリケートな話です。分かってもらおうとすると悲しくなるから、今日はここがつらい、やる気が起きない、と今の自分の事実を伝えるだけでいいかもしれませんね。分かったふりされるのも腹立ちますよね(笑)。それよりも、分かってあげたいと思ってもらうだけでうれしいの。寄り添ってくれるだけでうれしいものです。
(聞き手・読売新聞メディア局 野倉早奈恵)