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競泳で銀メダルに輝いた14歳の山田美幸さんの笑顔から始まった東京パラリンピック。若い世代がはつらつとした姿を見せる一方、(30歳代後半から50歳代の)ベテランと呼ばれる選手たちの頑張りに毎日、驚かされています。陸上では和田伸也さんと
パラリンピックが1年延期になって、「年長者は不利だろうなぁ」と私自身、少し思っていましたが、予想を大きく超える活躍は、日本全国に「やれば出来るんだ!」という勇気を与えたのではないでしょうか。
彼らや彼女らに共通するのは長い競技人生で培った経験、そして大一番で動じない胆力だと思います。考え方に柔軟性や思い切りの良さもあります。山本さんは大会直前に国内メーカーの義足に変える決断を下して大ジャンプを跳びました。
この1年ほど、五輪・パラリンピックとも大きな競技会がなく、選手は自分のパフォーマンスを見せる機会がありませんでした。「枯渇感」もあったと思います。今、スタンドは(原則)無観客ですが、選手たちは伸び伸びとプレーしています。テレビやインターネットを通じても皆さん、感じることが出来ると思います。
陸上では試合がなかった間、選手たちは自分にしっかり向き合って力を伸ばしたと思います。自粛期間中は、それこそ河川敷や自宅で工夫をこらして練習を重ねました。日本パラ陸連なども合宿をこれまでより長期間にし、回数も増やしました。レースに出て試合感覚を重視する考えが主流ですが、鍛錬でここまで出来るんですね。これも新鮮な驚きです。
ほかに現場で感動していることは、暑い中でも笑顔を絶やさず献身的に働いているボランティアの皆さんの姿です。来年、神戸でパラ陸上の世界選手権が開かれますが、同じようにみんなが感謝の気持ちで支え合える大会になればいいなと思います。
ますだ・あけみ 千葉県生まれ。1984年ロサンゼルス五輪に女子マラソン日本代表として出場。92年の引退後はスポーツジャーナリストや解説者、ナレーターとしても活躍。日本パラ陸上競技連盟会長のほか、日本知的障がい者陸上競技連盟会長、日本障がい者スポーツ協会の理事も務める。