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前向く力 届けたい…大会組織委スポーツディレクター 小谷実可子氏

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撮影・池谷美帆
撮影・池谷美帆

 シンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング)の五輪メダリストで、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の小谷実可子スポーツディレクター(SD)(54)に、東京パラリンピックへの思いを聞いた。(聞き手 清水暢和、矢萩雅人)

パラが成功して 東京大会の成功

 ――東京五輪が終わり、東京パラが開幕。今、競技運営の責任者であるSDとして、どう考えているか。

 「当初、始まってみないとどうなるか分からないという状況だったが、五輪が閉幕できたという気持ちと、まだ半分、という思いがある。東京2020大会としては、『パラリンピックの成功なくして東京大会の成功なし』と、みんなで考えているので、これから気を引き締めたい」

価値は無観客でも変わらない

 ――五輪は大半が無観客となり、パラも原則無観客開催となった。

 「五輪は、生で一人でも多くのお客様に観戦していただきたかった思いは残るが、観客がいなくても、満足のいく、素晴らしい思い出となる東京五輪ができたという自負はある。(パラでも)選手のパフォーマンスの価値や美しさは、観客がいてもいなくても変わらない。無観客でもパラリンピックの価値が下がるとは思わない」

 ――アスリートの先輩として、観客がいない中でいいプレーをするには、どういう意識が必要と考えるか。

 「五輪の試合会場では、ボランティアの方が手を振って選手を見送ってくださるなどの応援があったと聞いた。私が演技するなら、ボランティアや審判など実際に会場にいる方たちに向けて、心を込めて演技をすると思う。選手には客席ではないところからの応援というのを感じてもらえたら」

 ――五輪で印象に残った場面は。

 「なかなか生で競技を見られなかったが、スケートボード女子で、メダルを逃した選手をみんなでたたえていたシーンを覚えている」

 ――パーク決勝で、世界ランキング1位で予選でも1位だった岡本 碧優みすぐ 選手(MKグループ)が4位に終わると、周りの選手が駆け寄って抱え上げた。

 「彼女が最後まで挑戦して自分の技に挑んだが、かなわなかった。勝ち負けではなくて、ともに頑張る仲間をたたえ合う姿や、また、『楽しんで、スポーツの良さを広めたい』という言葉には本当に感動した。新たなスポーツの魅力が期待できる」

 ――パラリンピックに対する期待も大きい。

 「多様性を感じていただくには、五輪以上にパワーがある大会だと思う。(パラリンピックの創始者、ルートビッヒ・グットマン医師による)『失ったものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ』という言葉は、新型コロナ禍でいろいろな制限を受けている人たちに向けた非常に強いメッセージだと思う。大きな困難を抱え、乗り越えた選手たちが晴れの舞台で生き生きとプレーする姿を見ることで、コロナや他の何かで苦しんでいる人たちに、勇気や前向きになるきっかけを届けることができると思う。そのためにSDとして支えたい」

車いすで 片方の脚で すごい世界

 ――パラの魅力とは。

 「五輪とは違う条件や特徴を持った世界最高峰のアスリートのトップパフォーマンスには、本当に期待できる。たとえば、車いすバスケットボールなどはスピードや技術が魅力。車いすに乗って、片手で車いすをコントロールしながら片手でシュートを打つ。競泳でも片方の脚だけでぐらつきもせずに飛び込むなど、すごい世界」

 ――組織委で、ジェンダー平等推進チームのトップを務めている。五輪・パラ選手団の主将や旗手らが男女となったことについて。

 「五輪開会式で男女の旗手を見たときは、すてきだなと感じた。男女均等に機会を与えられることは非常に素晴らしいし、こういった意識が2020大会を経て、スポーツ界のみならず広がるといい」

  こたに・みかこ  1966年8月生まれ。東京都出身。88年ソウル五輪で日本選手団の旗手を務め、シンクロナイズドスイミングのソロ、デュエットでともに銅メダルを獲得した。東京五輪・パラリンピックの大会招致など国際的な活動に取り組み、組織委SDや日本オリンピック委員会(JOC)常務理事を務めている。

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2311993 0 東京パラリンピック 2021/08/25 05:00:00 2021/08/31 22:35:42 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210824-OYT1I50146-T.jpg?type=thumbnail
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