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[元気だべ!北三陸「あまちゃん」前夜]<上>
待ち合わせ場所に現れた3人組は、見るからに「よそ者」のいでたちをしていた。
2011年10月、岩手県久慈市の巽山公園。市商工観光課の職員だった大下勝盛(52)は、NHK職員や制作会社のスタッフを名乗る目の前の男性らを、まじまじと見つめた。ニット帽や「もんぺ」のようなズボン、奇抜な色合いのファッション。最初は「この人たちに任せて大丈夫だろうか」と不安がよぎった。
東日本大震災から7か月余り。同僚から「NHKが久慈で何かを撮りたいらしい。案内役をやってくれないか」と頼まれたときは、「復興のドキュメンタリー番組かな」と推測した。
そこで、震災を乗り越え開催にこぎ着けた「久慈秋まつり」の山車組の組頭を紹介すると、3人組は日が暮れるまで熱心に取材した。関心を持ってくれたことがうれしく、「夜の街も案内しますよ」と申し出た。
初対面にもかかわらず、宴会は3次会まで続いた。「朝ドラとかになったら面白いですよね」。そんな冗談を飛ばすと、3人組は意味ありげに笑った。
男性らの正体は、後に連続テレビ小説「あまちゃん」を制作するディレクターやプロデューサー陣だった。朝ドラの舞台を探しに、岩手・宮城両県を縦断する旅をしていた。取材先に真の目的を明かさなかったのは、「ネタバレ」を防ぐためだ。
その一人で、助監督の渡辺直樹(43)は、久慈に対して特別な思いがあった。05年頃、この地に生息するイヌワシのドキュメンタリーを撮りに訪れたのが、業界に入って初めての仕事だった。第一印象は「なんて寂れた街なんだ」。だが、「北限の海女」や
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