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夜は使えない空港、悪天候や海況の考慮なし
台湾有事となれば影響を受ける沖縄県・先島諸島の住民避難を巡り、より避難に時間のかかる小規模離島の自治体から国や県の想定の甘さを懸念する声が上がっている。空港・港湾施設が
初の図上訓練
今年3月、先島諸島5市町村の防災担当者が沖縄県庁に集まった。台湾有事の懸念が高まる中、政府と県が国民保護法に基づき、住民避難を想定して初めて実施した図上訓練。事前に設定した流れに沿って進められたが、多良間村の
宮古、石垣両島の間に位置する多良間島などの村の人口は約1100人。住民は生産量日本一を誇る黒糖生産などに従事する。島からの交通手段は、約60キロ離れた宮古島との間に1日2往復のプロペラ機(定員50人)と1日1往復のフェリー(同150人)だけだ。
訓練で示されたのは、1日で全村民を宮古島に避難させ、その後、九州へと渡る計画。観光客らも含めて、宮古島まで空路で400人、フェリーで900人を運ぶとされた。「あまりに表面的。まず無理でしょう」。4月に取材に応じた伊良皆村長は力なく笑った。
多良間空港(滑走路1500メートル)は滑走路が800メートルしかなかった前空港に代わり、2003年に沖縄振興予算で整備された島民念願の空港だ。それでもプロペラ機しか離着陸できず、400人を運ぶには1日8往復する必要があるが、夜間照明がなく、日の出前と日没後は使用できない。伊良皆村長は「乗降や整備も含めて1往復に1時間半から2時間かかる。とても間に合わない」と指摘する。
フェリーも、車両や貨物スペースを利用すれば員を超えて住民を乗せられるが、波が3メートル以上になると就航できない。冬の欠航率は高く、運航できない可能性もある。「実情が考慮されていない現実離れした訓練としか思えなかった」
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