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北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故では、死亡した14人のうち9人は発見時、救命胴衣を着けていた。海面に浮いていても助からなかった一因として、専門家は水温の低さを挙げる。冷たい水の中にいると、短時間で意識を失うという。寒冷地では特に、水につからずにすむ救命具が必要だと訴えている。
カズワンの消息が途絶えた4月23日、周辺海域の水温は3度前後だった。水難学会の斎藤秀俊会長によると、7度を下回る水につかると、体を動かすことがすぐに難しくなり、10~15分間で意識を失う。救命胴衣を着けていても、顔を水面より上に出した姿勢を維持して長時間、助けを待つのは難しいという。
水につからずにすむ救命具はある。体ごと乗ることができる「救命いかだ」だ。救命用品メーカーの「アール・エフ・ディー・ジャパン」(横浜市)によると、天幕がついていることが多く、風雨をしのげる。専用のボンベで膨らませるタイプが一般的で、床となる部分に空気が入るため、海水に体温を奪われるのを防ぐ効果もあるという。
ただ、第1管区海上保安本部は4日の記者会見で、カズワンは救命いかだを積んでいなかったとの認識を示している。知床の事故では、死亡した14人は海面を漂流するなどしているところを発見された。
船舶安全法に基づく安全規則は、カズワンのような総トン数20トン未満の小型船舶を対象に、救命いかだか救命
救命浮器は板状で水に浮き、利用者は腕でつかまるようにして使う。体が水につかる点では、救命胴衣と変わらない。日本水難救済会の遠山純司常務理事は「季節や水温に応じた救命具を備えることが重要だ」と指摘する。
遠山常務理事によると、小型船舶の場合、運航会社は救命浮器を選ぶことが多く、救命いかだはほとんど普及していない。ネックはコストだ。救命いかだの価格は救命浮器の5倍程度に上る。かさばるため、船内に置くスペースを確保しづらいとして、敬遠される面もあるという。