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指定暴力団稲川会佐野組幹部らによる覚醒剤密売事件で、山梨県警が通信傍受法に基づいて事件関係者の通話を傍受し、容疑者の逮捕につなげていたことが分かった。組員から薬物を購入したとして麻薬特例法違反で起訴された男らの公判で、検察側が「でかいの」「(薬を)入れといて」といった会話を、起訴内容を裏付けるための証拠として明らかにした。
この事件を巡っては、覚醒剤の密売に関わったとされる佐野組の組員や、その顧客ら男女計19人が覚醒剤取締法違反などの疑いで逮捕されている。
13日に甲府地裁で開かれた顧客の男(76)の公判。検察側は冒頭陳述で「通話内容を通信傍受した」と切り出した。
男が薬物の購入先とされる組関係者との通話で、「でかいの」「二つ入れとく」「2000円は貸し」といった言葉が交わされたことを明らかにした。「でかいの」は注文する覚醒剤の量(約1グラム)で、「二つ」は代金の「1万円札2枚」を表すという。
この会話について検察側は、男が覚醒剤1グラムを購入する際、相手に2万円を渡し、2000円は「相手への貸し」としたことを示しており、覚醒剤の代金は1万8000円だったことを意味すると説明した。
14日に開かれた別の顧客の男(65)の公判では、覚醒剤0・2グラムを7000円で買ったとされる男が購入相手に対し、「(覚醒剤を)入れといてくりょ」「おつり3000円を入れといてくりょ」と甲州弁とみられる言葉で話したとの内容が検察側によって明らかにされた。
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通信傍受法は、裁判所の令状に基づき、捜査機関が特定の犯罪に関係する電話や電子メールなどの通信を傍受できると定めている。捜査機関にとっては「組織犯罪と闘う武器」と言われている。
2019年6月施行の改正通信傍受法では、傍受する際に通信事業者の立ち会いが不要となったほか、新たに警察の施設内でも傍受できるようになるなど、捜査により活用しやすくなった。
通信傍受の実施状況は、毎年、国会に報告することが政府に義務づけられている。警察庁によると、昨年、全国20事件の捜査に使われ、152人の逮捕につながった。中でも覚醒剤関連の事件が多く、12事件で活用され、133人が逮捕されたという。
今回の事件で捜査にあたる県警組織犯罪対策課は読売新聞の取材に対し、「捜査手法に関わることなので答えられない」としている。