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愛知県小牧市にある県警機動隊の庁舎で、昨春から1羽の黄色い雄のカナリアが飼われている。きっかけは、村上鉄郎隊長(60)の「若い隊員が増える中、未曽有の被害を出したオウム事件の記憶をとどめるきっかけになれば」との思いだった。
1995年3月20日、6000人を超える死傷者を出したオウム真理教による地下鉄サリン事件が発生。その2日後、警視庁は山梨県上九一色村(当時)にあった教団施設に強制捜査に入った。その際、毒ガスの検知役を担ったのが、捜査員が手にする鳥かごに入ったカナリアだった。
当時、愛知県警警備部の捜査員だった村上隊長も、名古屋市内にあった教団の関係先で捜索に携わった。検知器の普及により、今ではカナリアが使われることもなくなったが、定年退職まで1年となった昨年3月に機動隊長の内示を受けた際、カナリアの飼育を思い立った。「あれほどの凶悪事件を過去の出来事で終わらせたくない」
5月にペットショップで購入したカナリアは「ピーちゃん」と名付けられ、化学テロ対策を担う第2中隊の隊員が面倒を見ている。地下鉄サリン事件が起きた95年3月に生まれたという今井拓哉隊員(25)は「毎日世話をする中で事件について考えるようになり、二度と起こしてはならないという気持ちが強くなった」と話す。
餌代は隊員らのカンパで賄い、庁舎の敷地内で栽培している小松菜も与えている。「ピイ、ピイ」と甲高い声で鳴く姿は、すっかり隊の人気者となり、隊員の発案で、ピーちゃんのイラストを描いた訓練用のTシャツも作った。
村上隊長は「ピーちゃんを通じて隊の結束も強まった。新たな隊員が入っても『治安最後の