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特別養護老人ホームと介護老人保健施設の施設系介護サービスの利益率(収入に占める利益の割合)がそれぞれ、2022年度の決算でマイナスになった。介護保険制度が始まった2000年度以来、初めて。厚生労働省が10日発表した介護事業の経営実態調査で分かった。介護保険サービスを提供する22業種全体でも全産業平均の利益率を下回り、経営が悪化する介護業界の実情が示された。
多くの介護事業者が物価高に伴うコスト増に苦しむなか、政府は来年度に改定する介護報酬を引き上げる方針を固めている。今回の結果は改定率を巡る今後の議論に影響を与えそうだ。
結果によると、特養の利益率はマイナス1・0%。19年度決算を対象とする前回調査に比べ、2・6ポイント減少した。老健はマイナス1・1%(前回調査比3・5ポイント減)だった。
22業種全体の利益率は2・4%で前回と同率。厚労省によると、全産業平均の利益率(6・2%)は3年前(4・3%)より改善しており、介護事業者の窮状が浮き彫りになった。
調査は、厚労省が介護事業者の経営状況を報酬改定に反映させる目的で、02年度から3年に1度、実施している。今回は22業種について、全国の3万3177事業所を抽出し、1万6008事業所(48%)から回答を得た。
介護保険制度でサービスを展開する介護事業者は原則、公定価格で決まる報酬の範囲内に運営費を収める必要がある。急激な経済の変動で電気代や食料費などが上昇しても、サービス価格に転嫁できない。