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ノリ漁師が難曲「ラ・カンパネラ」を弾く物語、映画監督「夢をあきらめない大切さ撮る」

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映画「ら・かんぱねら」監督 鈴木一美さん (68)

 リストの難曲「ラ・カンパネラ」を独学でマスターした佐賀市川副町のノリ漁師徳永義昭さん(63)をモデルに、映画の撮影が始まっている。監督を務めるのは映画制作会社代表の鈴木一美さん(68)。美しくも厳しい有明海の今を織り交ぜながら、徳永さんのひたむきさをどう描くのか。思いを語ってもらった。(鹿子木清照)

鈴木一美監督
鈴木一美監督

 ――出会いは。

 「動画投稿サイトの『ユーチューブ』で知った。漁師とピアノ、それもクラシックという組み合わせの意外性がおもしろく、2020年夏に自宅を訪ねて映画制作の思いを伝え、許可をいただいた。徳永さんは、世界的ピアニストのフジコ・ヘミングさんとテレビで共演した縁で、21年4月に北九州市で開かれたコンサートにもゲスト出演。2000人近い観客の前で弾き終えた瞬間は私も会場にいて、とても感動した」

 ――その歩みを映画に。

 「それだけではないが、『カンパネラを弾けるようになりたい』と 鍵盤けんばん に向かったノリ漁師が、独学で少しずつ上達し、成長していくという背骨の部分は大事にする。夢をあきらめず、希望を持って生きる大切さを撮るのがテーマの一つだから。ただ、ドキュメンタリーではないので、どう描くかは工夫が必要だ」

 「その意味では、生身の徳永さんから少し離れた方が、物語としては自由になるのかなと思う。縦糸と横糸だけで布を織るのではなく、斜めの糸や縮れた糸も挟み込み、全体的に膨らみが感じられる作品にしたい」

 ――ノリ漁師の知識は。

 「養殖の流れをしっかり学んで撮影しなければ映画がうそになるので、今年7月に前作のロケ地だった福岡県八女市から川副町に引っ越してきた。八女市にいる頃から養殖に関する勉強をし、徳永さんや同業の川崎賢朗さん(63)の元に通った。今も船の上や小屋での作業を幅広く見せてもらっている」

 「ノリ網を張る支柱を海底に打ち込む作業では、波に揺れて不安定な船首に立って作業しなければならない困難さを知った。摘み取り後には加工作業が待っており、町工場の経営者的なセンスや技術力が求められると実感した。近年は、温暖化による養殖への悪影響も懸念され、環境問題への取り組みも必要になっている」

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