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スピードの出しすぎによる交通事故で家族を亡くした遺族らが、自動車運転死傷行為処罰法違反の危険運転を積極的に適用するよう求める被害者の会(事務局・東京)を設立した。危険運転は適用のハードルが高く、法定刑の軽い過失運転となるケースが相次ぐ。遺族らは連携して「無謀な運転を適切に処罰してほしい」と司法に訴えていく。
線引きなし
「法定速度を100キロもオーバーしていたのに、どうして過失なのか」。宇都宮市内の国道で2月、乗用車に追突されて亡くなった同市の会社員佐々木一匡さん(当時63歳)の妻・多恵子さん(58)は、そう不満を漏らす。
起訴状では、乗用車を運転していた被告の男(20)は2月14日夜、国道を約161~162キロで走行して一匡さんのオートバイに追突し、死亡させたとしている。現場の法定速度は60キロ。被告は事故直前、友人2人のオートバイを追いかけて加速していた。
宇都宮地検は3月、被告を過失運転致死で宇都宮地裁に起訴。多恵子さんは地検から「直線道路をまっすぐ走り、車を制御できていたため危険運転にはあたらない」と説明されたという。
危険運転致死傷は「制御が困難な高速度」で走行した場合などに適用され、法定刑の上限は懲役20年だ。一方、運転ミスに適用される過失運転致死傷は同7年にとどまる。「何キロ以上なら危険運転にあたる」といった線引きはなく、特に直線道路の場合、大幅に速度超過をしていても、適用が回避される傾向がある。
多恵子さんは過失運転での起訴に納得できず、6月からオンライン上で署名活動を開始。同26日、「ハンドル操作をわずかに誤るだけで大事故を引き起こす高速度だった」として、5万5000筆超の署名とともに、危険運転致死への訴因変更を求める要望書を地検などに提出した。
7月21日に設立された「高速暴走・危険運転被害者の会」の共同代表に就いた多恵子さんは「声を上げられない遺族の声を拾い上げ、司法の場に届けたい」と話す。
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