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中卒だった豊前市議会議員が大学卒業「やればできる」…飲食業と「三足のわらじ」

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大学の学位記と高校の卒業証書を手にする黒江さん
大学の学位記と高校の卒業証書を手にする黒江さん

 福岡県豊前市議の黒江哲文さん(53)(3期目)が今春、日本大法学部政治経済学科(通信教育課程)を卒業した。中卒の学歴で市議になったものの、2期目の市議選でトップ当選したのを機に、周囲に背中を押されて苦手だった勉強に挑戦。46歳で高校、49歳で大学に入学した。本業の飲食業に市議、学生と「三足のわらじ」をはきながら、現役生並みの最短7年で高校、大学の卒業を果たした黒江さんは、「『やればできる』ということを伝えたい」と話している。(杉尾毅)

 黒江さんは地元の八屋中時代、「やんちゃ坊主」で、勉強は苦手だった。卒業後は飲食店勤務などを経て、21歳の頃に興味のあった屋台で起業。焼き鳥の移動販売で事業を広げ、現在は県内と熊本、大分両県で移動販売車20台を稼働させ、市内で飲食店も営む。

 事業の傍ら、豊前商工会議所青年部などに参加。地域おこし活動に携わる中で、「世の中に貢献したい」という思いが募り、2012年の市議選で初当選した。

 勉強を始めたきっかけは、市の活性化を目指す官民グループの会長を務めるなどの活動も評価されてトップ当選した16年の市議選後。親族から、「皆の期待に応えるためにも、自分の苦手なことに挑戦してみてはどうか」と勧められた。

 その人が紹介したのが通信制のつくば開成福岡高(福岡市)。迷いもあったが、妻(50)らの強い勧めもあって同年4月に入学した。商品開発などの仕事や議会活動の合間を縫い、車で片道約1時間半かけて週に1、2回通学し、教師とのマンツーマン授業を受けるようになった。

 暗記しやすいよう自己流の英単語の読み方を考えたり、数学の問題の解き方を解説するインターネット動画を見たりして、自習にも励んだ。そばで教えてくれる当時高校生の長女(22)の存在も支えになったという。

 19年3月の卒業後、今度は議員活動に必要な政治経済を学ぼうと、翌4月に日本大に進学。オンラインで授業を受けながら定期的に東京の大学キャンパスにも通い、試験に合格して卒業に必要な単位を取得した。千登勢さんは「仕事などと両立させるため、徹夜や早起きもして大学から与えられた課題に取り組んでいた」と振り返る。

 現役生並みの通算7年で高校と大学を卒業したことには理由がある。黒江さんは「今回の経験で、若者が学生の頃に勉強で大変な思いをしていることがわかった。その苦労を同じように乗り越えたかった」と明かす。

 黒江さんから大学卒業の報告を受けた中学時代の恩師で、前豊前市教育長の戸田章さん(79)は「大変うれしいことで、豊前市の宝のような存在だと思う。仲間を大切にしながら、これからも市政のために頑張ってほしい」とたたえる。

 黒江さんは「学歴にはこだわらない考え方だったが、支援してくれる方々が喜んでくれたのは一番の満足だった。身につけた知識や経験を地域に還元したい」と話している。

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4092639 0 ニュース 2023/05/11 15:34:00 2023/05/11 18:11:12 2023/05/11 18:11:12 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/05/20230511-OYTNI50023-T.jpg?type=thumbnail

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