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オンラインで診察を受けられる診療所として、へき地の郵便局を使う全国初の取り組みが15日、七尾市で始まった。総務省や日本郵便は今後、高齢化と医師不足が進む山間部などにも展開する方針だ。約2万4000店の店舗網とデジタル技術を掛け合わせ、医療を利用しやすい環境を作る。
富山県との県境、日本海に面する同市
同市を含む能登中部は人口10万人あたりの診療所数が50・85と県内最少。特にこの地域は病院がない「無医地区」でもある。郵便局の池岡直樹局長(60)は「典型的な過疎地。年金暮らしで通院を負担に感じる高齢者が多い」と話す。同院が「最寄り」になるが、「実際に『遠くて通えない』と訴える患者がいた」(根上昌子院長)という。
15日から週2回、最大10人にオンライン診療が可能となった。利用者は事前予約し、当日郵便局の窓口で健康保険証を提示。ブースで医師の診察や薬剤師の服薬指導をオンラインで受けた後、窓口で代金を支払う。薬は後日、自宅に届く。
コロナ禍の外出自粛を受け、電話やオンラインの診療が可能な国内の医療機関は全体の16%にあたる約1万8000か所まで広がった。ただ受診場所は自宅などに限られ、日本医師会の佐原博之常任理事は「高齢でIT機器に不慣れな場合もあり、本当に必要な人に実施できていなかった」と打ち明ける。
今年5月、へき地で医師が常駐しない診療所の開設を認める規制緩和を厚生労働省が行い、郵便局でのオンライン診療が実現した。総務省の担当者は「郵便局員が機器の操作をやってくれる安心感がある。デジタルに疎い人を取り残さない施策だ」と強調した。
同省と日本郵便は七尾市での実証を踏まえ、他の医療過疎地でも積極的に展開する方針。オンライン診療の対象は高血圧や糖尿病などの慢性疾患で、症状が安定している場合のみ。それ以外は、医師が触診などをできる直接の来院を促す。
地域の医療連携などに詳しいNTTデータ経営研究所(東京)の朝長大・医療情報技師は、「南大呑のような場所はまだまだある。各地のコミュニティーに根付く形で実施できるかが今後重要だ」と指摘した。