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緊迫する国際情勢、物価の高騰、長引くコロナ禍――。閉塞(へいそく)感が充満する日常ですが、ふとテレビで見た高田純次さん(75)の「いい加減」なユーモアに肩の力が抜けました。「テキトー男」のキャラクターで人気の高田さんは、幸福についてどう考えているのでしょうか。正面から聞いてみました。新聞紙面でお伝えした「高田純次さんの幸福論」の拡大版です。(生活部 大石由佳子)
幸せだから寝ちゃう
――最近、幸せを感じた瞬間はありますか
こうやって取材なんかで人と話せるとうれしいね。コロナ対策で、普段はしゃべらない。テレビの散歩番組でもソーシャルディスタンス。お店でちょっとしゃべるくらい。
好きな作家の新刊が出る時も、ちょっと幸せを感じますね。1週間に10冊くらい読むけど、最近は本を開くと、すぐ寝ちゃう。それもあれだね、幸せだから眠っちゃうんだろうね。
――これまでの人生では
30代前半で、初めてテレビの生放送に出た時。妻子がいたけど、30歳で脱サラして劇団「東京乾電池」に参加し、稽古とアルバイトの毎日。そんな中で、テレビに出られるようになって、「この世界で生きていけるかなあ」と思えた時は幸せを感じた。
宝石会社でサラリーマンをしていた頃、自分がデザインした宝石が世に出た時も、幸せを感じたなあ。
あとは何かなあ……。改めて考えると、意外と少ないかもしれない。
逆に不幸せだったのは、2年連続で大学受験に落っこちた時。「これで人生終わったな」と。今でも夢に見ます。
――自分は幸せ者ですか。不幸せだと思いますか
幸せと不幸せ。人生全体で見たら、針はちょこっとだけ不幸せな方に揺れるね。「それを何とか幸せな方に戻さないと」と思って生きるよね。
幸せそうに見える? そう言われたことはないなあ。
――「ご機嫌な人」というイメージもあります
時々、そう言われます。黙っていると「高田さん、どうしたんですか」と心配される。だから話すんだけど、どんどん話していると、だんだん悲しくなってくる。人間なんて、そんなもんですよ。
もし幸せを感じる場面があったら、黙っている方がいいだろうね。話したら、幸せが薄まる気がする。
宝くじで3億円が当たったとする。「当たった!」と大騒ぎするより、むしろ「5万円貸してくれない?」と他人に頼みつつ、内心で「3億円当たった」と思っている方が幸せじゃない?