[2022 進学特集]準備にベスト尽くしてこそ 後悔ない結果に…日本テレビアナウンサー 滝菜月さん 28 早稲田大学商学部卒
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逆算して長期計画
農業と酪農が盛んな北海道
2人の兄に続き、小学校の剣道クラブに入ったところ兄と違って全く勝てない。負けず嫌いな性格のため「お兄ちゃんに勝てるものが欲しい」と、学習塾で算数の勉強を頑張った。難解な問題でも、一つの答えにたどり着くのが面白く、小学生のうちに高校数学まで到達した。
アナウンサーになる夢を抱いたのは、中学2年生の時。隣の帯広市出身で「テレビで見ない日はない」ほど活躍する安住紳一郎アナウンサーに憧れた。各界の著名人と上手にコミュニケーションを取り、番組を進行する姿が輝いて見えた。
「人見知りで、田舎育ちの自分も、努力次第で活躍できるかも」と思い描くように。「東京の大学へ行くには、中学から勉強を頑張り、高校は進学校に入る」と逆算して長期計画を立てた。
夢追っていいんだ
進学校で知られる地元の道立高校に入ったが、両親に東京への大学進学を反対された。3人きょうだいの末っ子。「東京なら国公立。浪人もやめてほしい」と言われた。東京の国公立は超難関大ばかり。「指定校推薦がある早稲田大なら、何校もの受験料がかからず、許してもらえる」。高1の1学期から成績、生活態度に気をつけながら、国公立受験の準備も進めた。
サッカー部のマネジャーとして、冬は雪が積もった氷点下のグラウンドでボール拾いなど、帰宅時にはくたくただった。でも、文武両道で頑張る友達に負けたくない。休み時間やバス通学時の15分など、隙間時間も効率的に使って、勉強する努力を重ねた。
強い憧れの一方、「アナウンサーになれるのは一握り」の厳しさも分かっていた。周りに夢を明かせずにいたが、高2のある日、サッカー部顧問の先生に話の流れで伝えられた。「推薦もきっと取れるし、アナウンサーにもなれる」。自分をよく知る先生の一言が「夢を追っていいんだ」と自信につながった。
つらい受験勉強は仲間と挑んだ。夏休みは、開放されていた高校に朝から行き、苦手な暗記科目や国語の記述は得意な友達にコツを聞き、自分は数学を教えた。帰宅後も、懸命な友達の姿を思い出すと「自分も頑張ろう」と思えた。
どんな時も「個人戦はきつい。周りはライバルでなく仲間と思い、支え合ってこそ、互いに本来以上の力で頑張れる」と信じている。
できっこないを…
無事に推薦を得て入学した早稲田大では、アナウンサーになれない場合を考え、大好きな数学を扱うマーケティングを学べる商学部を選んだ。
入学後は勉強、アルバイト、アナウンサー試験の準備に明け暮れた。生活費を補うため、多い時でパン屋、ティッシュ配りなど三つのバイトを掛け持ち。バスガイドも経験し、「同じ説明でも、相手の年齢、興味などで反応が全然違う」と気付いた。以降、覚えたことを暗唱せず、相手に合わせた表現や雰囲気で語りかけることを心掛けている。
先輩に紹介してもらい、通い始めた「アナウンススクール」では「話す内容だけでなく、人に届けたいという話しぶりが大事」と、今に通じる大切なことを多く教わった。
夢をつかもうとがむしゃらに頑張った就職活動。くじけそうな時は、ロックバンド「サンボマスター」の曲「できっこないを やらなくちゃ」の歌詞に勇気づけられ、背中を押された。
力不足ごまかせない
「人見知り」がアナウンサーになり、最初は緊張の連続だった。でも、緊張するのは「自分をよく見せたいから」と気付いた。「力不足はごまかせない。出来る準備を全てして挑むだけ」。最近、やっと思えて緊張しないようになったという。
今月始まるバラエティー番組では、人気グループ「KAT―TUN」の亀梨和也さんと司会を務める。多くの雑学知識を求められるため、収録前日に完成するVTRを何度も見て、出演者から出そうな質問を推測。海洋生物の生態、光の屈折など、多種多様な知識を詰め込む。
「大量の準備をしても本番で1割も生かされないのは、大学受験と同じ」と笑うが、「準備にベストを尽くしてこそ、後悔のない結果が出るはず」。そう信じている。
文・新美舞
写真・青木瞭
たき・なつき 1993年生まれ。2016年日本テレビ入社、17年から昼の情報番組「ヒルナンデス!」に出演。今月19日に放送開始予定の、1枚の写真などから疑問を解明する「一撃解明バラエティ ひと目でわかる!!」では司会を務める。趣味はバイクツーリング。数年前に買った愛車で、最近はコロナ禍のため主に都内を走っている。