完了しました
アニメ「ドラえもん」のジャイアン役の声優・木村昴さん(33)は今年、NHK大河ドラマ「どうする家康」で徳川家康の家臣・渡辺守綱を演じている。お調子者だが頼りになる「劇場版ジャイアン」のような守綱。木村さんはゆかりの地を訪ね、その深い人間性に心を打たれたという。「戦国10大ニュース」選びもまた、自らのルーツであるドイツと日本の違いを見つめ直すひとときとなった。
14歳で国民的ガキ大将に
「めちゃくちゃうまいプリンを食べさせてもらって、余計に腹が減っちゃいました」
毎週木曜に出演している日本テレビの昼の情報番組「ヒルナンデス!」で、2時間の生放送を終えたばかりの木村さんは、疲れた様子もなく快活に笑った。
木村さんは児童劇団に所属した後、2005年に国民的ガキ大将・ジャイアン(剛田武)役を引き継ぐ形で、14歳で声優デビュー。その後、ラップ音楽にも取り組むなど、活動の幅を広げてきた。低く力強い声が持ち味で、アニメ「呪術
大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合、日曜午後8時~ほか)で抜てきされた役どころも、そんな「剛の者」だった。守綱は「
主君だと気づかず殴りつける
「あまり歴史は詳しくない」という木村さんは、役に選ばれるまで守綱について知らなかった。「どうする家康」の守綱は、お調子者で女好きな性格として描かれ、変装して三河の寺内町を訪れた主君・家康に気づかずに殴りつけるというシーンもあった。木村さんは「ジャイアンに女好きを足したような、考えるより先に動いてしまう人物をイメージして演じた」と振り返る。
ただ、一向一揆を鎮めて三河を平定した家康は、織田信長や武田信玄という強大な存在と向き合い、物語は次第に緊張感を高めていく。「徳川家臣団の一員として、いつまでも『ただのお調子者』ではいられない」。そう考えた木村さんは今年2月、もっと守綱について知ろうと、
菩提寺の前住職に「僕が『守綱』です」
木村さんは守綱の墓に「あいさつ」を済ませ、前住職の渡辺晃純さん(83)に守綱のことを尋ねた。この時、「どうする家康」で木村さん演じる守綱が初登場する回はまだ放送前だった。晃純さんが「今年の大河ドラマにも登場するんだよ」と話したので、「実は僕が『守綱』です」と明かすと、晃純さんは「なんだ、そういうことかい!」と笑い、一緒に本堂の階段に腰かけて守綱について語り始めた。
守綱寺の本堂は、内部の装飾の彩りが豊かで、本尊の奥の天井近くには天女の絵が描かれている。天女の背中には仏画としては珍しい羽があり、晃純さんは「守綱はハイカラで、唯一無二を好む人だったのだろう」と説明した。「我が道を行く、まさにジャイアンのような存在だ」と木村さんは感じたが、守綱の魅力はそれだけではなかった。
「手おけ」に込められた人間の証明
豊田市が所蔵する1対の「長篠・長久手合戦図
地元では、この旗は家康が命じて使わせたもので、守綱の功績をたたえて周囲の者は「手を置け(一目置け)」、といった意味が込められていると伝わる。
さらに晃純さんは、命の象徴である水の器であることから、「戦においても人間性を失わないという証しだったのではないか」と木村さんに語った。相手を打ち負かすのではなく、戦場にあっても最期まで人として戦うという誇り。「思っていたのとは真逆で、めちゃくちゃ人間くさい」と木村さんは感銘を受けた。
この日、寺には竹やぶの手入れなどを手伝うために小学生らが集まっており、木村さんがジャイアンの演技を披露すると大喜びしてくれた。たんなるガキ大将から、周囲の信頼を背負って戦う兄貴分へ。この訪問が、木村さん演じる守綱が、「劇場版ジャイアン」に脱皮するきっかけとなった。
1
2