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今回の統一地方選では、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)を巡る問題が選挙戦にも影を落としている。
「私は、旧統一教会とは一切、関係ありません」
飲食店や商業施設が並ぶ川崎市高津区の東急線・溝の口駅前。神奈川県議選(31日告示、4月9日投開票)に立候補を予定する自民党の女性県議(70)は3日、街頭演説でこう声を張り上げた。
同区は、旧統一教会との接点が相次いで判明し、経済再生相を辞任した山際大志郎衆院議員(神奈川18区)の地元だ。衆院小選挙区の「10増10減」の対象となる15都県では、次期衆院選の自民公認候補予定者となる選挙区支部長の決定が進む。だが、山際氏は現時点で選ばれていない。
県議自身は、関連団体の会合などに出席したことはない。それでも、有権者からは「あなたも関係があるなら公にしたほうがいい」と言われた。「有権者から見れば同じ自民党。誤解されてもおかしくない」と危機感を募らせる。
山際氏も所属する自民神奈川県連は、党本部に先駆けて動いた。昨年10月15日の県連総務会で、統一地方選の公認・推薦候補予定者188人全員に対し、旧統一教会と関係を持たないことを確認する誓約書を提出させる方針を決めたのだ。県連会長の小泉進次郎・元環境相は、「県民に旧統一教会との関係を見られる選挙になる可能性が高い」と判断した。他県の県連会長を務める同僚議員からは、小泉氏に「どんなひな型でやっているの? 参考に資料がほしい」と相談が寄せられた。
匿名発表
世間の関心が高まる中、福井県議会は昨年9月、県議と旧統一教会や関連団体との接点を調べるため、資料が残る2016年度~21年度に在籍した県議の政務活動費の収支報告書を点検した。その結果、県議3人(元議員2人、現職1人)が関連団体のイベント参加費などに計約20万円を政務活動費から支出していたことが明らかになった。ただ、結果発表が匿名だったことから、自民県議の一人は「『接点があったんじゃないか』と邪推され、選挙に悪影響を及ぼす恐れがある。結果は実名で公表してほしかった」と語る。
自民からの出馬を取りやめたケースもある。4年前の統一地方選では、自民公認で当選した徳島市議の男性(73)は、安倍晋三・元首相の事件後に信者であることを公表した。今回は無所属で立候補する意向で、「自民徳島県連から、公認申請しないようにお願いされた」と明かす。
攻撃材料に
野党は、自民と旧統一教会との関係を統一地方選でも争点化し、攻撃材料としたい考えだ。
立憲民主党の泉代表は2日の党会合で、自民と旧統一教会の関係について、「まだまだ切れていないのではないか」と主張した。統一地方選に向けた共通公約にも「旧統一教会問題等、ゆがんだ政治を正し、被害者を救済します」と記した。
とはいえ、立民も都道府県議と市区町村議の計約1250人を対象に旧統一教会との接点を調査した結果、関連団体の会合への出席などで10人に接点があったことが判明している。党内には、「有権者の関心は、旧統一教会問題よりも、物価高や子育て政策の方が高い」との声もある。
地域政党・大阪維新の会は所属する首長・地方議員計19人に関わりがあったと発表し、関係遮断を求めている。国民民主党は、接点を申告してきた地方議員から、「今後接点を持たない」とする誓約書を取った上で公認を決めた。
「政治と宗教」の問題が注目されたことで、支持母体の創価学会の集票力を武器とする公明党内では、「支持を広げにくくなる」との見方も出ている。
近畿大の田近肇教授(憲法学)は、「宗教も社会の中に存在しており、一般論としては、政治と関わりを持つことを一概に否定はできない。しかし、社会的な問題が指摘される宗教団体と政党・政治家が関係を持たないようにするのは当然のことだろう」と指摘している。
(上村健太、横浜支局 田村直広、福井支局 長沢勇貴、徳島支局 山下陽太郎)
◆「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)を巡る問題= 昨年7月、安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件で、容疑者が旧統一教会に母親が多額の寄付をして恨みがあったと供述したことから、政治家との関係に注目が集まった。自民党は所属国会議員を調査し、同9月末時点で379人中計180人に接点があったと公表した。党本部は所属議員に関係を断つよう求め、同10月25日に党のガバナンスコード(統治指針)を改定した。