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キヤノンは、医療機器や半導体露光装置といった分野に力を入れている。カメラ市場は縮小し、複写機やプリンターもペーパーレス化の波を受けており、事業の変革を図る。御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。
まだ世界では中小企業
――社長に就任してから30年近くがたつ。トップとしての活力は。
「米国に長くいて、基幹産業の人たちと交流してきた。社長になって思ったのは、キヤノンをどれだけ彼らに近づけられるかということだ。国際的な企業に育てて、私が見てきた米国の企業に近づけることが自分に誓ったミッションだ。まだ世界では中小企業だと思う。夢を見果てていない」
――昨秋、8年ぶりに開かれたキヤノンの見本市が注目された。
「キヤノンの経営転換の成果を発表した。10年ほどの間に、企業買収を繰り返し、時代に沿って事業を入れ替えてきた。市場に現在のキヤノンの状況を正しく認識してもらうことができたと自負している。
半導体関連では、微細な加工がコストをかけずにできるナノインプリントの技術が注目を浴びた。医療分野の評価も良く、立った姿勢で人間の体を診察する最先端のコンピューター断層撮影法(CT)に関心が集まっていた」
すべてにわたり最先端目指す
――事業転換を進める背景は。
「カメラはIT革命でスマートフォンなどの新しい製品が出てきて、成長力を失った。複写機もペーパーレス化で伸びが鈍化し、ポートフォリオ(事業構成)を入れ替えなければならないと思った。新たな事業を強化するために投資を続けており、医療や監視カメラなどが拡大している。
医療機器には力を入れたい。CT事業はさらに大きくしたい。買収や投資によって強化しており、非常に強力になっている。2024年以降、ますます頼りになる。世界一にしたいと思っている」
――企業の合併・買収(M&A)の戦略は。
「すべてにわたって最先端を目指している。今一番広げたいのはやはり医療だ。トップクラスの技術を補強したい。主な買収は終わったが、今後も必要なものがあれば、投資していきたい」
――国内の事務機器メーカーでは協業に向けた動きがある。協業は選択肢になり得るか。
「将来はわからないが、今のところはない。プリンターの関係で協業する計画はまったくない」
◆御手洗冨士夫氏(みたらい・ふじお) 1961年中大法卒、キヤノンカメラ(現キヤノン)入社。66年から米キヤノンUSAに出向し、79年からキヤノンUSA社長。95年キヤノン社長に就任。2006~10年には11代の経団連会長を務めた。大分県出身。