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「タイムボカン」シリーズ、「科学忍者隊ガッチャマン」など数々の名作アニメを制作したタツノコプロが今月、創立６０年を迎える。「ヤッターマン」のドロンジョの知られざる過去に迫る実写版の連続ドラマの配信も始まった。多くの作品で総監督などを務め、草創期から演出面を支えた笹川ひろし（８６）は「どの作品にも共通するのは、創業者・吉田竜夫さんの『世界の子どもたちに夢を』という理念。子どもを喜ばせたいという純粋な思いです」と話す。（文化部 若林圭輔）
「アニメの時代」直感した総監督・笹川ひろし
タツノコプロは１９６２年、漫画家の吉田竜夫ら３兄弟が、漫画制作工房として設立。６４年からアニメ制作を始めた。笹川は手塚治虫のアシスタントを経て、漫画家として独立していたが、手塚のアニメ「鉄腕アトム」の絵コンテを手伝ったことでアニメの世界に触れた。
「もし自分の絵が動き出し、音や声が付けば、どんなに楽しいだろう。これからはアニメの時代だと直感しました」。その思いを知り合いだった同業者の吉田に語るうちに、タツノコがアニメ制作に関わることになり、笹川も参加した。
タツノコのアニメ作品１号は、宇宙から来た少年が活躍する「宇宙エース」（６５～６６年）で、カーレースアニメの金字塔「マッハＧｏＧｏＧｏ」（６７～６８年）は海外でも人気となった。ドタバタギャグコメディー「ハクション大魔王」（６９～７０年）や、自然界の厳しさや家族愛を描いた「昆虫物語みなしごハッチ」（７０～７１年）はタツノコの表現の幅を広げた。
３０分アニメに４０００枚近くの絵、完成まで４～５か月
「当初、アニメ制作はまったくの素人でした。しかも吉田さんの絵は、デフォルメされて描きやすいディズニー作品と異なり、線が多く、リアルでシャープだった。何枚も同じ絵を描くアニメにはすごく不向きで、他社の何倍も苦労しましたが、頑固で情熱的な吉田さんの決意は揺るがなかった」
「マッハ」の場合、１本３０分のアニメに４０００枚近くの絵を描き、４～５か月かけて制作された。手間暇をかけた分、主人公や車のかっこよさが受け、それらが高いドラマ性とハイレベルな格闘シーンで子どもたちを熱狂させた「科学忍者隊ガッチャマン」（７２～７４年）へとつながった。
７５年に始まった「タイムボカン」シリーズは、笹川の得意なギャグとＳＦが融合したタツノコの代表作で、現在まで繰り返しリメイクされている。誕生の背景には、「リアルな絵ばかり描いていたら、制作が追いつかなくなる」との危機感があったという。「元々ギャグと時間旅行が大好きで、吉田さんの作風も残しつつ、制作上、省略が多少できる独自のギャグアニメを模索した結果、うまくはまりました」と振り返る。
正義の男女ペアと「美女のボス・頭脳派・怪力系」という間の抜けたワルのトリオが毎週、世界中に飛んでドタバタ戦うパターンは、「ヤッターマン」（７７～７９年）で人気が決定的となり、タイムトラベルは「ゼンダマン」（７９～８０年）、「オタスケマン」（８０～８１年）といったシリーズ作品でも受け継がれた。安定感のある設定は後のアニメ界に大きな影響を与えた。
「子どもは悪い大人がずっこけたり、爆発で飛んでいったりが大好きなんです。３人はいつも勝利目前で油断してやられちゃう。そこに『最後まで諦めちゃいけないよ、頑張れば必ずいいことがあるよ』というメッセージを込めました。３人も毎週懲りずに相当しぶといですが」と懐かしむ。
「先読みされたら負けだ」手を変え品を変え編み出したアイデア
「偉大なマンネリ」と称されるほど基本的な流れは変えない一方で、各話の内容やメカ同士の戦いなどは、手を変え品を変えアイデアを絞った。「とにかく子どもたちを笑わせたかった。同じ手は使わない。視聴者に先読みされたら負けだとスタッフにはしつこく言いました」
現在はタツノコプロの顧問として後進を見守る。「振り返るとすごい６０年だと思います。タツノコには揺るがない土台がある。コンピューターの発達で表現の自由が増えた分、子どもも大人もみんなが喜べる新しい作品を新たに考えてもらいたいですね」
