「好きだなんて言えなかった…」野口五郎、岩崎宏美のホントの関係

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

気難しいは誤解?「こんなに優しかったんだ」

往年のスターのようなポーズも実にさまになる=米田泰久撮影
往年のスターのようなポーズも実にさまになる=米田泰久撮影

岩崎  あはは。でも、気難しいと思っていた五郎さんが、番組での曲選びでは「宏美ちゃん、洋楽ではどんな歌を聴いたり、歌ったりしたことあるの?」って優しいの。「まず、カーペンターズかなあ」「カーペンターズの何?」「『スーパースター』とか」「いいねえ、それにしよう!」「えっ、もういいんですか?」。こんな感じでバンバン決まっちゃって。誤解してたなあ。本番では、2番でいきなり、五郎さんが1オクターブ上げて歌ったから、「え!? 私と同じキー?」ってビックリした。

野口  周りのミュージシャンもざわついてたね。僕も面白かった。

岩崎  楽しんでいるんですよね。昔から音楽に詳しくて、オタクだから。

野口  宏美ちゃんも、前からシンガーとして魅力的だったから、腰を据えてやったらどうなるんだろうと考えた。お互いに得るものがあるのかなあって。それで、「一緒にコンサートやってみない?」と誘った。僕も彼女も絶対的なソロシンガーだから、そんな2人がデュエットを組むだけでも刺激的かなって。

岩崎  若い頃は難しかったと思う。今だってレコード会社は違うけど、簡単にクリアできた。

野口  年齢もあるだろうし、時代の流れもある。あと、やれそうなことがいっぱいあったしね。「レ・ミゼラブル」の曲もそうだし、京平先生に作っていただいた持ち歌だけでも、お互いにいっぱいあるので。

岩崎  私は80曲弱。五郎さんは108曲でナンバー1だから。

野口  それだけでもコンサートをやるには、何回かに分けなきゃいけない。それから、2人の曲を作ろう、となって、(作詞家の)松井五郎さんに話を聞いていただいた。「振り切っちゃってください」と言った結果、「好きだなんて言えなかった」が出来上がってきた。

歌詞にドキドキ 「照れちゃって歌えるかな」

岩崎  ドキドキしました。照れちゃって歌えるかなあって。レコーディングの時は、「ブリッコして歌って」とも言われたし。ブリッコって、自分の中にない言葉。「今、ブリッコって言いました?」って。

野口  ブリッ、ブリッてオナラ? オナラしながら歌ったの?

岩崎  やめてよ。小学生みたい。

野口  え? 小惑星? でもまあ、これは妄想ソングだからね。誰かのことを当てはめてもいいし、現実にはこれだけ生きてきたけど一緒にはなれなかった、という歌。だから、デュエットというと互いに見合って歌うイメージだけど、この曲ではそうはしない。ソロシンガーとして生きてきた僕らのプライドとしても、目や口元を見て合わせることはせずに、感覚で合わせようということにしたんだよね。

奇跡のデュエット「京平先生の置き土産」

「長い歌手人生は平坦じゃない」と語る岩崎に、野口は「それでも僕らは前に進むしかない」ときっぱり
「長い歌手人生は平坦じゃない」と語る岩崎に、野口は「それでも僕らは前に進むしかない」ときっぱり

岩崎  ここに来て、五郎さんにアドバイスを色々いただけて、歌手としての寿命を延ばしてもらっている。少しずつ年を重ねてきて、今までと同じように歌っていくのは大変だなあと感じていた。「ロマンス」は、昔のキーのままの譜面を使っているけど、すごく大変。私が、いつまでできるかなと思い悩んでることを、感じてくれてたんでしょ?

野口  まあね、みんな同じだから。

岩崎  ちょこちょこ言ってくださることが、「え!?」って () に落ちることがたくさんあった。歌うことに諦めや迷いを感じていたのに、今はすごく面白い。以前、キーを下げて歌っていた歌を、逆に一音上げて歌えるようにもなった。

野口  必要ないものは捨てて、新しく得るものだけと向き合っていくのが人生。そういうふうに考えを変えたら?って言ったんだよね。過去にレコーディングしたものを、未来のものとして歌っていったら全然ありじゃない? 過去の呪縛から逃れたら?って。そしたら、「毎日毎日、コンサートやるたびに新しい自分に会えるから楽しい」って言ってくれたね。僕、50年の歌手人生の中で、35年は(歌うことの)イップス(心理的な理由で思うように身体が動かず、動作に支障が出る障害)だったから。

岩崎  最近、それを伝えられて、ビックリした。「レ・ミゼラブル」の時、だからあんなに汗をかきながら歌っていたんだって。

野口  誰にも言わずに、耐えていたから。試行錯誤し、自分をごまかしながら歌ってきた。還暦になって、ある不思議な現象を体験してから、5年ぐらいかけて少しずつ抜け出した。スパッと抜けたなという感じがしたのが、今年4月の京平先生のトリビュート。アンコールで、「オレンジの雨」を歌ったその日に「あっ、なんか飛んでった」と感じた。

岩崎  長い歌手人生は 平坦(へいたん) じゃないよねえ。

野口  45年たたないと分からないことも、50年たってみないと分からないこともある。それでも僕らは前に進むしかない。

岩崎  だから、奇跡のデュエットだよね。

野口  いせき? ISEKIのトラクター?

1

2

スクラップは会員限定です

使い方
「エンタメ・文化」の最新記事一覧
記事に関する報告
2550688 0 音楽 2021/11/27 07:03:00 2022/11/27 19:16:15 2022/11/27 19:16:15 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/11/20211125-OYT1I50077-T-e1638006531134.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

セレクション

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)