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気難しいは誤解?「こんなに優しかったんだ」
岩崎 あはは。でも、気難しいと思っていた五郎さんが、番組での曲選びでは「宏美ちゃん、洋楽ではどんな歌を聴いたり、歌ったりしたことあるの?」って優しいの。「まず、カーペンターズかなあ」「カーペンターズの何?」「『スーパースター』とか」「いいねえ、それにしよう!」「えっ、もういいんですか?」。こんな感じでバンバン決まっちゃって。誤解してたなあ。本番では、2番でいきなり、五郎さんが1オクターブ上げて歌ったから、「え!? 私と同じキー?」ってビックリした。
野口 周りのミュージシャンもざわついてたね。僕も面白かった。
岩崎 楽しんでいるんですよね。昔から音楽に詳しくて、オタクだから。
野口 宏美ちゃんも、前からシンガーとして魅力的だったから、腰を据えてやったらどうなるんだろうと考えた。お互いに得るものがあるのかなあって。それで、「一緒にコンサートやってみない?」と誘った。僕も彼女も絶対的なソロシンガーだから、そんな2人がデュエットを組むだけでも刺激的かなって。
岩崎 若い頃は難しかったと思う。今だってレコード会社は違うけど、簡単にクリアできた。
野口 年齢もあるだろうし、時代の流れもある。あと、やれそうなことがいっぱいあったしね。「レ・ミゼラブル」の曲もそうだし、京平先生に作っていただいた持ち歌だけでも、お互いにいっぱいあるので。
岩崎 私は80曲弱。五郎さんは108曲でナンバー1だから。
野口 それだけでもコンサートをやるには、何回かに分けなきゃいけない。それから、2人の曲を作ろう、となって、(作詞家の)松井五郎さんに話を聞いていただいた。「振り切っちゃってください」と言った結果、「好きだなんて言えなかった」が出来上がってきた。
歌詞にドキドキ 「照れちゃって歌えるかな」
岩崎 ドキドキしました。照れちゃって歌えるかなあって。レコーディングの時は、「ブリッコして歌って」とも言われたし。ブリッコって、自分の中にない言葉。「今、ブリッコって言いました?」って。
野口 ブリッ、ブリッてオナラ? オナラしながら歌ったの?
岩崎 やめてよ。小学生みたい。
野口 え? 小惑星? でもまあ、これは妄想ソングだからね。誰かのことを当てはめてもいいし、現実にはこれだけ生きてきたけど一緒にはなれなかった、という歌。だから、デュエットというと互いに見合って歌うイメージだけど、この曲ではそうはしない。ソロシンガーとして生きてきた僕らのプライドとしても、目や口元を見て合わせることはせずに、感覚で合わせようということにしたんだよね。
奇跡のデュエット「京平先生の置き土産」
岩崎 ここに来て、五郎さんにアドバイスを色々いただけて、歌手としての寿命を延ばしてもらっている。少しずつ年を重ねてきて、今までと同じように歌っていくのは大変だなあと感じていた。「ロマンス」は、昔のキーのままの譜面を使っているけど、すごく大変。私が、いつまでできるかなと思い悩んでることを、感じてくれてたんでしょ?
野口 まあね、みんな同じだから。
岩崎
ちょこちょこ言ってくださることが、「え!?」って
野口 必要ないものは捨てて、新しく得るものだけと向き合っていくのが人生。そういうふうに考えを変えたら?って言ったんだよね。過去にレコーディングしたものを、未来のものとして歌っていったら全然ありじゃない? 過去の呪縛から逃れたら?って。そしたら、「毎日毎日、コンサートやるたびに新しい自分に会えるから楽しい」って言ってくれたね。僕、50年の歌手人生の中で、35年は(歌うことの)イップス(心理的な理由で思うように身体が動かず、動作に支障が出る障害)だったから。
岩崎 最近、それを伝えられて、ビックリした。「レ・ミゼラブル」の時、だからあんなに汗をかきながら歌っていたんだって。
野口 誰にも言わずに、耐えていたから。試行錯誤し、自分をごまかしながら歌ってきた。還暦になって、ある不思議な現象を体験してから、5年ぐらいかけて少しずつ抜け出した。スパッと抜けたなという感じがしたのが、今年4月の京平先生のトリビュート。アンコールで、「オレンジの雨」を歌ったその日に「あっ、なんか飛んでった」と感じた。
岩崎
長い歌手人生は
野口 45年たたないと分からないことも、50年たってみないと分からないこともある。それでも僕らは前に進むしかない。
岩崎 だから、奇跡のデュエットだよね。
野口 いせき? ISEKIのトラクター?
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