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シンガー・ソングライターの南こうせつが、2年半ぶりの新作「夜明けの風」(クラウン)をリリースした。1970年デビューのベテランにとってもコロナ禍の衝撃は大きく、「人生とは何か、自然と心の整理をしていって……。そしたら、やっぱり歌はいいものだと、ギターはいいものなんだなと気付いて。そうやって出来たアルバムです」と話す。(文化部 池内亜希)
思うようにライブが出来なくなり、一時期ギターも弾かなかったという。「あれだけ休んだのは初めてで、気持ちはめいる。やっぱり、ミュージシャンはみんな、オーディエンスとともにあるんですよね」
在住の大分で、淡々と送る生活。朝日を浴び、草花の香りをかぎ、枝の
生活にも目を向けた。子供が巣立ち、夫婦だけでは広すぎる住まいから、少し小さな家に移ろうと片付けを進めた。すると、過去のライブで着たTシャツ、サイモン&ガーファンクルのコンサートを見に行った記録、一緒に仕事をした人の名刺……。たどってきた道のりが見えるようだった。「50年以上活動し、素になった時、あぁ、音楽が好きだったと、歌が好きなんだと思えたんですよ」
そして再び音楽に。出来たのが今作の表題曲だ。「どんなに世界が暗くても 夜明けの風は吹く いつか晴れる日を信じて 今をひたすら生きるだけ」と、グッと力を込めて歌う。ストリングスやコーラスが加わる後半は壮大な響きに。「自分自身、明日に向かって生きていくぞ、と励まされるよう」という通り、前向きな曲だ。「(聴き手が)一人二人と同じように感じ、共鳴すれば、そこには、力が湧いてくると思っている」
計5曲を収録。「歌うたいのブルース」は、妻の南育代が作詞した。田舎から上京し、フォークグループ「かぐや姫」で人気者となった思い出を描くよう。「『神田川』がびっくりするほど売れてね。でも何年かすると、次のすごい人たちが現れた。思えば、僕らも先人に憧れて、のし上がっていった。時代が変わる度にヒーローは出てくるけど、今も、歌で勝負していますよ」と笑う。
70歳を過ぎ、改めて「ギター一本持って歌う」という原点のスタイルを「極めていこう」としている。「なんかね、生きているさまを、そのままに表現していきたいんです」