意中のドラマ「Pachinko パチンコ」に出演の南果歩さん…「1年生のような気持ち」で新しい扉を開く喜びを経験

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 自分のペースで前に進み、新たな扉を開く。女優の南果歩さんはそんな形で仕事を重ねている。その一つが、ストリーミングサービス「Apple TV+」で世界配信中のAppleオリジナルドラマシリーズ「Pachinko パチンコ」への出演だ。原作の小説が大好きで「これが映像化できるのだったらぜひ参加したい」と願った作品。カナダ・バンクーバーでの撮影に参加した後の自分は、それ以前と「明らかに違っている」と語る。どんな出会い、経験があったのか。聞いてみた。(編集委員 恩田泰子)

奥西義和撮影
奥西義和撮影

米国の製作陣が描く「在日」一家の物語

 米国の製作陣によって映像化された「Pachinko パチンコ」は、在日コリアン一家の20世紀史とも言うべき、壮大で心揺さぶる家族の物語だ。韓国系米国人の女性作家、ミン・ジン・リーさんが2017年に発表した原作小説は、全米図書賞の最終候補にもなったベストセラーだ。

 主人公は、日本統治下の朝鮮半島に生まれ、ある事情を抱えて大阪へ渡った女性、ソンジャ。若き日のソンジャ役は韓国人女優、キム・ミナさん、年配になってからのソンジャは映画「ミナリ」で米アカデミー賞助演女優賞に輝いたユン・ヨジョンさんが演じている。南さんは、ソンジャの次男の恋人、悦子という日本人女性を演じた。

 「私自身、この原作がとても好きだったので、これを映像化できるのだったら本当に参加したいと思っていたんです」。南さんもまた韓国にルーツを持つ。オーディションの話が来た時には、「受ける」と即答。リモートでのオーディションを重ね、出演が決まった。

「Pachinko パチンコ」から。南さん演じる悦子と、ソンジャの孫息子ソロモン(ジン・ハ)
「Pachinko パチンコ」から。南さん演じる悦子と、ソンジャの孫息子ソロモン(ジン・ハ)

バンクーバーでの撮影に参加

 「Pachinko」の撮影は、カナダ・バンクーバーのスタジオと韓国・釜山を核に行われた。南さんは昨年1~3月、バンクーバーでの撮影に参加。1984年のデビュー以来、女優として多彩なキャリアを重ねてきたが、今回はまったく新しい環境での撮影。「ほとんど1年生のような気分でいましたね」と楽しげに振り返る。

 現場でのコミュニケーションは英語。スタッフ、キャストは初めて一緒に仕事をする人ばかり。ただ、「お芝居することは、どこの国に行っても変わらない」と感じていた。「特に私の場合は、日本人の役なのでせりふは日本語。そういう点では、落ち着いてお芝居できる状況ではあったかなあ、と」。女優「1年生」としてスタートした時のように、役を演じることで周囲の信頼を少しずつ獲得していく喜びも感じていたという。

 かつて新聞社の工場だった広大なスタジオには、しっかり作り込まれた数々のセットが常にスタンバイしていた。1980年代終わりのパチンコ店のセット一つとっても、往時のパチンコ台を運び込んで再現する念の入れよう。「その美術費のかけ方、ぜいたくさはすごく感じました」。加えて、登場人物も多く、エキストラも多い作品。「この物語を映像化するエネルギーというのは相当なものだったなと、できあがった作品を見て改めて思いました」

3月16日に米ロサンゼルスで行われた「Pachinko パチンコ」ワールドプレミアでユン・ヨジョンさん(左から2人目)らキャストとともに
3月16日に米ロサンゼルスで行われた「Pachinko パチンコ」ワールドプレミアでユン・ヨジョンさん(左から2人目)らキャストとともに

刺激的な女性たち

 さまざまな形で触発される撮影現場だった。すばらしく刺激的な女性たちとの出会いもあった。ひとりは、プロデューサー陣のトップにたって製作を統括する「ショーランナー」という役割を果たした韓国系米国人のスー・ヒューさん。このドラマシリーズの脚本家でもある彼女の「情熱」がこの大作の推進力になっていることを折に触れて感じていたという。また、ユン・ヨジョンさんと共演できたことも、「とても大きかった」と振り返る。「やっぱりとてもチャーミングだし、英語をしゃべっていても、韓国語をしゃべっていても、劇中、日本語をしゃべっていても、何ら変わらない。伝わるものというのは言語を超えるんだなって、見ていてすごく思いました」

 今回、「在日」の物語が、米国の作品としてドラマ化されたことについては、こう語る。「願わくは……日韓合作で成立できれば一番良かったのではないかと、心のどこかでは思っていますけれど、アメリカのプロダクションで製作したからこそ、Appleが作ったからこそ、越えられたことがたくさんあると思うんです」。その理由の一つは、米国は移民国家であるということ。「ルーツは他国にあって、祖父母や父母、あるいは自分自身がアメリカにやってきて、そこで生きていくという物語は、(ルーツが)どこにあってもあてはまるファミリーヒストリーだと思うんです」。自分は何者で、どこに根差して生きていくか。この物語が内包する問いは、実は世界中の誰にとっても普遍的なものだ。

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2900812 0 映画 2022/04/07 11:00:00 2022/04/07 12:09:17 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/04/20220406-OYT1I50136-T.jpg?type=thumbnail

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