コボちゃん40周年、微笑これからも…植田さん実感は「10年くらい」

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(C)植田まさし
(C)植田まさし

 朝刊社会面で連載中の4コマ漫画「コボちゃん」がきょう1日で40周年を迎えた。作者の植田まさしさん(74)は、昭和、平成、令和と移りゆく世を見つめ、ささいな日常の暮らしから、クスッと笑えてじんわり心が温かくなる作品を毎日変わらずに描き続けてきた。1982年4月1日から1万4185作を届けてきた日々と半世紀を超す漫画家人生への思いを聞いた。(文化部 田上拓明)

「27歳のコボちゃん描く」…連載40年 ファンミーティングで植田さん

悩みながら

 「私は絵からじゃなくて、アイデアから入った漫画家。だから絵に自信がなくて、図鑑とか色々な手本を見て、悩みながら描いていました」。「コボちゃん」を始めた頃の旧作を懐かしげに眺めながら、植田さんは40年前をそう振り返る。

 読売新聞で連載が始まったのは82年4月。依頼を受けてすぐ「子供を題材にして、タイトルは『コボちゃん』がいい」とひらめいた。幼い頃、自身が四国の出身の父親ら家族から末っ子を意味する「こぼちゃん」と呼ばれていたことが由来となった。

 意識したのは毎朝届く朝刊に掲載されること。「朝起きて新聞を読んで、気持ちよく一日を始められるような漫画にしたい」と考えた。「広く、良く、分かりやすく、そして誰も傷つけないことをずっと心がけています」

報道写真家志望

 大学時代、哲学科に学びながら、報道写真家を目指した。学生運動に足を運び、1968年に東京で起きた新宿騒乱事件では、機動隊から警棒で殴られる学生を撮った。「これは良い写真だな」。できあがった写真を見て、そう思った自分が嫌になった。「被写体を冷静に見ている自分は、すごく冷たい人間なのでは」と感じ始め、次第に学生運動自体にも疑問を感じるように。そして、写真家になる夢も諦めた。

 大学はロックアウトで授業もなくなった。卒業前のある日、ぼーっと家族でテレビを見ていたとき、折り込みチラシの裏に、4コマ漫画をなにげなく描いてみた。それを見ていた母と兄が面白がって、「ちゃんと描いてみたら」と助言。出版社に持ち込むと、反応がよく、71年から漫画家人生がスタートした。「正直、漫画家をまじめに目指している人に怒られそうですが……」とためらいがちに言う。

考え抜いて

 漫画の仕事も、最初は順風満帆ではなかった。出版社からは「4コマだけでは生活していけない」と、普通のストーリー漫画を描くよう勧められたが、「煮ても焼いても一向に面白くならない」。そんな日々が1年ほど続いた。

 その苦悩の時期に、人を笑顔にする作品を毎日生み出す素地が形作られたという。「何を描くか、どんな人を描くか、じっくり考えた」。フランスの哲学者・ベルクソンの著書「笑い」なども読み、「共感する笑い」「 馬鹿ばか にした笑い」「突然の笑い」など「笑い」を基本から学んだ。

 そして悩み抜いた末、出版社から雑誌用に頼まれた全4ページを4コマ漫画で埋め尽くしたという。当時、見開きのページに4コマ漫画がずらっと並ぶスタイルは斬新で、「フリテンくん」「かりあげクン」などがヒット、4コマブームの火付け役にもなった。

仕事が喜び

仕事場でインタビューに答える植田まさしさん(東京都新宿区で)=松田賢一撮影
仕事場でインタビューに答える植田まさしさん(東京都新宿区で)=松田賢一撮影

 デビュー以来、半世紀以上、4コマ漫画を描き続けている。午前10時半頃起きて、午前3時半頃に寝る。コボちゃんが始まってからの40年間の生活リズムは、土日も盆正月もほとんど変わらない。「物書きにとって、良い作品ができたときの喜びは、この上ないもの。お酒や趣味で仕事のうっぷんを晴らす人がいますが、私は仕事が喜びなので、飲み屋で騒ぐ必要もない。『うれしい』『良かった』って、仕事で満足して寝ちゃうんです」。この40年も「10年ぐらいにしか感じない」という。

 雑誌で長期連載も続ける植田さんにとって、コボちゃんは「漫画ごとに、課が分かれたプロジェクトの一員」的な存在。「だから、主人公のコボちゃんは『コボちゃん課』の課長なのかもしれない」と笑う。

 「つまらなくなったらやめるけれど、力の続く限り長く続けたい。これからも、皆様に愛される作品であり続けたい。それに尽きます」

イベント いろいろ…東京・読売新聞ビル

 連載40周年を記念し、東京・大手町の読売新聞ビルでは、様々なイベントが開催される。

◆コボちゃん展

 原画などが見られる「コボちゃん展」(入場無料)が1日から5月31日まで、3階のよみうりギャラリーで開催。

 原画約40点やパネル展示のほか、植田さんの作画道具なども展示。来場すると、記念ロゴ入り「コボちゃん」しおりがプレゼントされ、同階のショップでは、記念グッズや「コボちゃん傑作選」などが販売される。

 平日は午前10時~午後8時、土曜は午後5時まで。ショップは、平日午前10時~午後5時。

◆ファンミーティング

 4月22日午後6時からコボちゃんファンミーティングを開催。植田さんと漫画家・エッセイストの能町みね子さんとの対談や、事前に募集した質問への回答などを行う。記念グッズのお土産付き。読売ID会員限定で60人を抽選で招待する。応募は読売新聞オンラインの よみぽランド から(※参加申し込みは、4月8日に締め切りました)。

「傑作選」発売中

 連載40年を記念し、1万4000回を超す作品から笑いと感動の名作を精選した「コボちゃん傑作選」(中央公論新社)=写真=が発売された。

 40年もの間、ほぼ毎日、作品を生み出し続けてきた作者・植田まさしさんへの巻頭インタビューのほか、名作選、歴代担当記者の座談会など、コボちゃんづくしの一冊となっている。長年のファンに「あの頃」を懐かしんでもらう永久保存版としても、初心者の入門書としてもおすすめだ。1320円。

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2883868 0 エンタメ・文化 2022/04/01 05:02:00 2022/04/09 08:32:20 2022/04/09 08:32:20 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/03/20220331-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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