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薬師丸ひろ子が歌手活動40周年記念盤「Indian Summer」(ビクター、通常盤は3枚組み)を出した。全シングル曲を収録し、「古今集」「花図鑑」など初期のアルバムから自身が選曲したことも注目される。新曲「Come Back To Me~永遠の横顔」の詞曲は、呉田軽穂が手がけた。(文化部 清川仁)
「呉田」は、松任谷由実が他の歌手に曲を書く際の別名。「子供の頃から歌とピアノでまねていたユーミンは一生のアイドル。受け止めきれないぐらいの愛情で作っていただいた」と感激する。「明るくポップですが、若い人には切ない恋の歌に聞こえ、私たちの世代には別れて何十年たっても忘れない人が心にいることが、人生に彩りを添えてくれるのだと感じさせる。少女から大人になっていく過程が凝縮され、熱い思いがこみ上げてくる」と新曲を評する。
呉田が薬師丸に作品を提供するのは、「Woman“Wの悲劇”より」(1984年)の作曲以来。同曲は今年、池田エライザがカバーするなど時を超えて支持される。また、初アルバム「古今集」収録の「元気を出して」は、詞曲を手がけた竹内まりやが歌い続けている。「私がオリジナルということをご存じの方は、そうそういらっしゃらない」と笑いつつ、「誰もが歌いたいと思う歌を提供してもらっていた」と、2人や筒美京平、松本隆、大瀧詠一、来生たかお、南佳孝らに謝意を示す。
81年、主演映画「セーラー服と機関銃」のエンディングで流れる、同名の主題歌でデビュー。相米慎二監督からの“命令”だったという。「最後まで責任を持て、ということだったのでしょう。監督や助監督が見張るスタジオで一生懸命歌った。そうでないと、“しごき棒”でたたかれますから」。柔らかで品がある声と淡々とした抑制のきいた歌い方を身につけていた。それは、子供の頃、唱歌が好きだったことに由来するようだ。
松本がプロデュースした「花図鑑」(86年)には、「ちいさい秋みつけた」で知られる作曲家、中田喜直も参加。今作収録で中田作曲の「かぐやの里」など、和の雰囲気が漂う歌でもしなやかに美声を響かせる。「難しそうな曲ですが、私にはなじみやすかった。中田先生の事務所で、力強いピアノに導かれた」
そうした「大事な出発点」という初期の名曲とともに、「同年代の方へ伝えたいメッセージが多い」という2018年のアルバム「エトワール」の楽曲も収めた。「皆さんに親しまれた曲は、思い出にそのままかえってもらう使命を持っているから、その時の印象と違わないように」と努力を怠らず、みずみずしい歌声を保つ。役者業は変わらず多忙だが、歌への意欲は強い。「歌の力は絶対にある。映画館より身近だから、そばに置いてもらえたらうれしい」