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時の首相を退陣に追い込むきっかけを作ったリポート「田中角栄研究――その金脈と人脈」で知られるジャーナリストで評論家の立花隆(たちばな・たかし、本名・橘隆志)さんが4月30日、急性冠症候群のため亡くなった。80歳だった。告別式は家族葬で済ませた。
1940年、長崎市生まれ。64年に東大文学部仏文科を卒業後、文芸春秋に入社して週刊文春の記者になったが、66年に退社。再び東大文学部の哲学科に籍を置きながらフリーのジャーナリストとなった。74年に発表した「田中角栄研究」では膨大な資料を駆使して田中首相の金権政治の実態を暴き、首相退陣の引き金になった。
旺盛な探求心で徹底した取材を行い、取材対象に巨大権力を持つ人・組織を選び、登記簿などの証拠を一つひとつ積み上げて全体像を描きあげる、調査報道の手法を日本で成功させた。平易で力強い文章でニュージャーナリズムの旗手となり、「文芸春秋」「中央公論」などにノンフィクション、評論などを次々に発表した。
興味関心は哲学、宗教、宇宙、脳科学、サル学など多方面に及び、「知の巨人」とも称された。東大特任教授も務めた。「中核VS革マル」「脳死」「臨死体験」「天皇と東大」など著書多数。79年に「日本共産党の研究」で講談社ノンフィクション賞、83年に菊池寛賞、98年には第1回の司馬遼太郎賞を受賞するなどした。