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お笑いコンビ「天津」の木村卓寛さん(44)が今春、東京から盛岡市に移住し、第二の芸人生活をスタートさせた。縁のなかった岩手県に暮らすきっかけは、芸能界の先輩からの助言と、覚悟だった。(中根圭一)
今月スタートした岩手朝日テレビの生放送番組「Go! Go! いわて」でMC(司会)に
盛岡に来たのは、雪が残る今年3月中旬。「寒い……」。岩手の第一印象だ。厳しい自然を体で受け止め、思わず吟じた。
「まさか~ 3月に迷うと思ってなかった~ コタツ買うかどうかを~」
SNSで新生活を報告すると、「ようこそ盛岡へ!」「楽しい番組を待ってます」といったコメントが続々と寄せられた。「岩手の方々の優しさに触れ、心が温かくなった」と言う。
2008年、「なんだか今日いけそうな気がする~」など、伝統芸能である詩吟の要素が入ったネタを披露し、ブレイクした。09年、決めぜりふ「あると思います」が新語・流行語大賞候補に選ばれ、テレビ出演が急増した。
しかし、やがて人気は落ち、収入も激減。最近はタレント・ヒロミさん(56)の専属ドライバーとして奔走していたが、思いがけず新番組への出演依頼を受け、移住を決めた。
妻子3人を東京に残すことにためらいもあったが、迷いを断ち切ったのはヒロミさんの一言だった。「こんなチャンス、ない。犠牲を払ってでも岩手に行くべきだ」。吹っ切れた。今は「やるからには全力でやりたい。移住は僕の覚悟です」と言い切る。秋頃に家族を呼び寄せるつもりだ。
出身は阪神大震災があった兵庫県。震災直後の混乱と、悲しみをこらえて前を向く人たちの姿を身近に見てきただけに、東日本大震災の被災地である岩手県の事情もわかる。「微力ながら、被災地が明るくなるきっかけになれば」と語る。
趣味はアウトドアで、山への愛着は人一倍強い。住み始めたアパートから毎朝、岩手山に向かって拝む。「岩手山、姫神山、早池峰山を踏破します」と誓った。
今、夢中なのは盛岡名物のじゃじゃ麺。大好きなおろしニンニクをたっぷり混ぜる自分なりのアレンジを早くも確立した。「皆さんには当たり前かもしれませんが、岩手に住まないとわからないことがたくさんあるはず。岩手のいいところに気付いてもらうのが僕の役目だと思っています」と話す。
ずっと暮らすつもりは? 最後に質問すると、即答した。
「あると思います!」