山田孝之、実は気配りの人…きっぱりと提案を断れなかった初の監督業「きつかった」

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 俳優の山田孝之が監督に初挑戦した映画「ゾッキ」が公開中だ。漫画家・大橋裕之の初期作品集を、竹中直人、齊藤工と共同で実写化した。竹中から監督を打診され、最初は「やだ!と思いました」と振り返る。(田中誠)

影響を受けた監督や作品は?「僕、周りの俳優さんに比べて圧倒的に見ている映画が少ないんですよ。バラエティーばっかり見ちゃうんで」=大石健登撮影
影響を受けた監督や作品は?「僕、周りの俳優さんに比べて圧倒的に見ている映画が少ないんですよ。バラエティーばっかり見ちゃうんで」=大石健登撮影

 いわく「勝手な使命感」からプロデューサーを始め、製作と同時に、スタッフ、キャストの労働環境の改善などに取り組んできた。監督を支える立場の方が向いていると思っていた。

 「監督は、どこに向かっているか先が見えない中で先頭に立って、みんなを引っ張っていかなければいけない。その自信がなかった」。しかし、「挑戦もしてないのに、『向いてない』って決めるのも、僕の生き方として違うと思った」と、決断の理由を語る。

 原作の「ゾッキA」「ゾッキB」の中から、3人がそれぞれ1編を選び、あえてオムニバス形式にせず、三つのエピソードをつなぐ短編を挟み、1本の長編にした。山田監督は、孤独な青年・藤村が自転車で旅に出る「Winter Love」を選んだ。

 「旅に出て、何かしらを感じて、ちょっと変化が起きた、これから起きるかもというストーリー。たぶん藤村は、勘違いから生まれたすれ違いで、孤独が続いた人なんだと思う」

自由と不安を抱えながら、藤村(松田龍平)は自転車で旅に出る(C)2020「ゾッキ」製作委員会
自由と不安を抱えながら、藤村(松田龍平)は自転車で旅に出る(C)2020「ゾッキ」製作委員会

 ロケ地は、大橋の故郷の愛知県蒲郡市。藤村を演じる松田龍平を迎えに行った帰り、藤村の心情や旅に出る動機について丁寧に説明した。「俳優が、その役として行動し、しゃべるためには、どうしても理由がいる。俳優が考える領域でもあるのですが、投げっぱなしだと困るので、用意しておこうと思って」

 本職が俳優ならではの気配りがうかがえる。そしてオーディションで選んだ若手は別として、オファーして出演してもらった俳優には、指示をすることはほとんどなかった。「段取りやってテストやって、本番いきます、はいOKですみたいな。回数を重ねて、新鮮さがなくなるのを避けたかったんです」

 完成した映画は、不思議なもので、知らずに見ても、どの監督がどのエピソードを担当したのか分かる。「そうなんですよ、皆さんそうおっしゃるんです。結局今の僕は、これまでに吸収したものでできているので、影響を受けている部分が出ているのかも」

 初めての映画監督は、「めちゃくちゃ楽しかった。でも、きつかった」。新人監督を助けようと、スタッフがいろいろな提案をしてくれる。それが自分のイメージと異なっていても、性格からして、きっぱりと断れない。「気を使っちゃうんですよね」

 また監督をしたいかと問うと、「機会があれば……、ですかね」と笑った。

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1978092 0 エンタメ・文化 2021/04/11 17:42:00 2021/04/11 17:42:00 2021/04/11 17:42:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210405-OYT1I50031-T.jpg?type=thumbnail

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