岩稜、高山植物、大展望…主峰・赤岳ほか八ヶ岳の中級・上級コース

赤岳と奥に富士山(写真/谷の料理長 さんの登山記録より)
文/編集部

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主峰・赤岳の人気コースほか、権現岳、天狗岳など6コース

八ヶ岳は中央の夏沢峠を境に、北八ヶ岳、南八ヶ岳に分けられる。北八ヶ岳は森と湖を巡るハイキングコースをはじめ、初心者向けのコースが多いが、南八ヶ岳は高度感がある岩場や急登、岩稜の縦走路など、登りごたえがある中級・上級コースが多い点が特長だ。

さまざまなレベルや、異なる雰囲気のコースがぎゅっと集まっているという点も、八ヶ岳の魅力だろう。

ここでは、南八ヶ岳をメインに、中級・上級コースを紹介する。クサリやハシゴがある岩場や、ガレ場、あるいは体力・持久力が必要なロングコースを含む。初級コースで経験を積んでから挑戦したい。

いずれも1泊2日以上のコースだが、山小屋は休業中の場所もあるため、事前に予約・確認を。

赤岳より、北八ヶ岳方面の稜線を望む(写真/ naora さん

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八ヶ岳の主峰・赤岳へ 赤岳・阿弥陀岳

標高2899mの赤岳は、八ヶ岳の主峰。堂々とした山容、山頂の展望、多彩なコースなど、主峰にふさわしい魅力ある山だ。阿弥陀岳(2805m)はその西に位置し、赤岳と双璧をなす。

主稜線より赤岳、阿弥陀岳(写真/ 谷の料理長 さん

シンプルに2座を登るなら、美濃戸口から入山し、行者小屋から地蔵尾根の急登を登り、赤岳、阿弥陀岳を繋げ、中岳道から下山するコースがおすすめ。阿弥陀岳へ行かない場合は、文三郎道からも下山できる。いずれも上部は急な岩場だ。

地蔵尾根(写真/ テツロウ さん

阿弥陀岳からは御小屋尾根を下山するコースもある。北沢・南沢コースと比べると登山者が少ない。静かな山が楽しめる一方で、登山道以外の踏み跡に入り込まないように注意が必要な場所もある。

行程・コース

【1日目】美濃戸口から北沢コース、地蔵尾根を登り稜線へ
■総コースタイム 4時間55分、標高差1230m
美濃戸口(08:00)・・・美濃戸(09:00)・・・堰堤広場(09:50)・・・赤岳鉱泉(11:00)・・・行者小屋(11:35)・・・赤岳天望荘(12:55)
【2日目】赤岳、阿弥陀岳に登り中岳道、南沢コースを下山
■総コースタイム 5時間55分、標高差179m
赤岳天望荘(07:00)・・・赤岳(07:40)・・・中岳のコル(08:50)・・・阿弥陀岳(09:20)・・・中岳のコル(09:40)・・・行者小屋(10:25)・・・美濃戸(12:05)・・・美濃戸口(12:55)

高低図

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| 赤岳天望荘

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花と岩の縦走路 硫黄岳~横岳~赤岳

主峰・赤岳をめざすコースのなかでも屈指の人気を誇る縦走コース。高山植物の可憐さと岩の荒々しさ、伸びやかに続く稜線の爽快さと、南八ヶ岳らしい魅力が詰まっている。

赤岳。左奥には富士山(写真/ モンチチ さん

硫黄岳から赤岳の稜線上には高山植物の花畑が点在する。キバナシャクナゲ、コマクサ、ウルップソウ、ハクサンイチゲ、チョウノスケソウなど、種類も豊富で、希少な種も見られる。横岳へと向かう途中の台座ノ頭は、赤褐色の砂礫地にコマクサの群生地だ。

チョウノスケソウ(写真/ yasuhiro さん

ウルップソウ(写真/ yasuhiro さん

一方で、注意が必要な場所も多い。横岳周辺の稜線や、赤岳からの地蔵尾根の下りなど、クサリやハシゴが現れる。

コース上には複数の山小屋が点在するため、スケジュールに合わせて宿泊地を選ぼう。

行程・コース

【1日目】美濃戸口から赤岳鉱泉、赤岩ノ頭を経て硫黄岳へ
■総コースタイム 5時間20分
美濃戸口(08:00)・・・美濃戸(09:00)・・・堰堤広場(09:50)・・・赤岳鉱泉(11:00)・・・赤岩ノ頭(12:40)・・・硫黄岳(13:00)・・・大ダルミ(13:20)
【2日目】横岳、赤岳へと縦走し文三郎道を下山
■総コースタイム 6時間50分
大ダルミ(07:00)・・・横岳(08:00)・・・三叉峰(08:10)・・・赤岳天望荘(09:10)・・・赤岳(09:50)・・・行者小屋(11:20)・・・美濃戸(13:00)・・・美濃戸口(13:50)

高低図

2つの長大な尾根を巡る 赤岳(県界尾根・真教寺尾根)

赤岳の南東にあり、大門沢を挟んで延びる2つの尾根、県界尾根と真教寺尾根を周回するコース。1950年代の登山ブーム時には行列ができたというコースだが、難易度は高い。

県界尾根からの展望(写真/ パーシー さん

どちらの尾根も山麓は樹林帯、中盤は展望の良いなだらかな尾根歩きだが、上部は傾斜が強くなり、クサリやハシゴが現れる険しい岩場となる。また、尾根上には山小屋やエスケープルートがない。充分な経験と装備、計画が必要になるルートだ。

真教寺尾根のクサリ場(写真/ 赤月夜 さん

美し森を起点に周回する場合は、県界尾根と真教寺尾根のどちらを往路にしても、大きな違いはない。

行程・コース

【1日目】美し森から県界尾根を登り赤岳へ
■総コースタイム 5時間55分、標高差1429m
美し森(08:00)・・・大門沢林道入口(09:00)・・・県界尾根取付点(09:50)・・・小天狗(11:00)・・・大天狗(12:20)・・・巻き道分岐(13:10)・・・赤岳(13:55)
【2日目】赤岳から真教寺尾根を美し森へ下山
■総コースタイム 4時間20分、標高差1429m
赤岳(07:00)・・・六合目(08:30)・・・牛首山(09:20)・・・リフト山頂駅(10:20)・・・羽衣池(11:00)・・・美し森(11:20)

高低図

険しいキレットを越えて 権現岳・赤岳

権現岳からキレットを越えて赤岳へと立つ、南八ヶ岳の主稜線のなかでも険しい縦走コース。標高差がある登り返しもさることながら、ザレた岩場やハシゴ、クサリなど、難所が連続する。その分、山頂に立った際の達成感はひとしおだ。

赤岳へと続く縦走路(写真/ unchikutareo さん

61段のハシゴ(写真/ space036 さん

2022年はキレット小屋、権現小屋が休業しているため、1泊2日の行程は難しい。2泊3日の工程で1日目に青年小屋、2日目に赤岳頂上山荘または赤岳展望荘に宿泊する。

行程・コース

【1日目】天女山から大泉口を登り前三ツ頭を経て権現岳へ
■総コースタイム 4時間45分、標高差1186m
天女山(08:00)・・・天女山登山口(08:05)・・・天ノ河原(08:20)・・・海抜1800mの石柱(09:10)・・・前三ツ頭(11:00)・・・三ツ頭(11:50)・・・権現岳(12:50)
【2日目】主稜線を赤岳へ縦走し美濃戸口へ下山
■総コースタイム 7時間40分、標高差459m
権現岳(07:00)・・・キレット小屋(08:30)・・・赤岳(10:40)・・・行者小屋(12:10)・・・美濃戸(13:50)・・・美濃戸口(14:40)

高低図

南八ヶ岳の対照的な2座を周回 編笠山・権現岳

八ヶ岳の南端に位置する2座を周回するコース。編笠山は円錐形のおおらかな山容の山で、危険箇所は少ないが、権現岳は、鋭い岩峰とガレ場、クサリ場がある険しい山だ。

編笠山より権現岳、ギボシ(写真/ サルハシ さん

ギボシのトラバース(写真/ えいちゃん さん

編笠山のみなら、日帰りでも登れる初心者向けのコースだが、岩場へ挑戦するなら、権現岳も合わせてみてはどうだろう。ステップアップしたら、権現岳からさらにキレットを越えて赤岳をめざすのもいい。

行程・コース

【1日目】観音平から編笠山へ登り青年小屋へ
■総コースタイム 3時間40分、標高差964m
観音平(08:00)・・・雲海(09:00)・・・押手川(09:50)・・・編笠山(11:10)・・・青年小屋(11:40)
【2日目】権現岳へ登り三ツ頭から小泉口を下山
■総コースタイム 5時間10分、標高差335m
青年小屋(07:00)・・・権現岳(08:40)・・・三ツ頭(09:20)・・・木戸口(10:10)・・・八ヶ岳横断歩道(11:40)・・・観音平(12:10)

高低図

八ヶ岳の魅力を濃縮した双耳峰 天狗岳

針葉樹林の森が広がり、初心者にも登りやすいコースが多い北八ヶ岳。しかし、天狗岳は、北八ヶ岳に位置しながら上部には岩場があり、登りごたえ充分な山だ。南八ヶ岳の岩場、岩稜コースへ挑戦する前の入門としてもおすすめだ。

擂鉢池と天狗岳(写真/ ブルーベリー さん

天狗岳へは東西南北さまざまなコース取りが可能だ。また、西側に渋の湯、唐沢鉱泉、夏沢鉱泉、東側には稲子湯、本沢温泉があり、登山前後に温泉を組み合わせた計画が立てやすい。

最短で登るなら、唐沢鉱泉から入り、西尾根を登るコース。黒百合平を経由して周回してコースタイムは5時間45分だ。

行程・コース

【日帰り】西尾根から天狗岳へ
■総コースタイム 5時間45分、標高差776m
唐沢鉱泉(08:00)・・・枯尾ノ峰分岐(09:00)・・・第一展望台(09:40)・・・第二展望台(10:05)・・・西天狗(10:45)・・・東天狗(11:05)・・・中山峠(12:05)・・・黒百合平(12:10)・・・唐沢鉱泉分岐(12:55)・・・唐沢鉱泉(13:45)

高低図