日光白根山は栃木と群馬の県境に位置する関東以北の最高峰で、日本百名山のひとつとしても数えられる標高2,578mの山だ。日光連山(火山群)の主峰でもあるが、現在は休火山である。正式名称は白根山だが、他の白根山と区別するために日光白根山と呼ばれるのが一般的で、隣にそびえる前白根山に対して奥白根山とも呼ばれることもある。
日光白根山が登山者の心を捉えてやまないのは、その景観の美しさによる。日光国立公園の特別保護地区に指定されるように様々な山岳美がある。座禅山や五色山、前白根山などの2300mを超す山々に囲まれた峰々の迫力の中に、五色沼や弥陀ヶ池、菅沼などの美しい湖沼が点在する景観は、どの時期に訪れても魅力に包まれている。
また高山植物の宝庫としても知られ、例えば「シラネアオイ」などは、この日光白根山に多いことから名付けられた花だ。
そして何といっても、森林限界を超える独立峰としての岩峰の山頂からの展望が最大の魅力と言える。間近に日光連山の男体山や中禅寺湖を望み、さらに尾瀬、新潟の山々、谷川岳、浅間山、遠くに富士山や北アルプスと、さえぎるもののない360度の大パノラマが広がり、様々な山登りの醍醐味を存分に味わえる。
麓に点在する温泉も魅力で、奥日光にある湯元温泉や群馬側にある座禅温泉、白根温泉、丸沼温泉など、各コースごとに違った湯を堪能するのもいいだろう。
群馬側からも栃木側からも登れ、丸沼高原にある日光白根山ロープウェイを使った入門コースもあれば、奥日光の湯元温泉から前白根山や五色山を周回する中級コース、さらに険しい峠を通るコースなど多彩だ。時間や登山レベル、そして季節に合わせて、以下に紹介するコースを参考に登山を楽しんでほしい。
初心者や小さな子ども連れで日光白根山を登るなら、ロープウェイを利用した入門コースをおすすめする。冬にはスキー場となる群馬・丸沼高原にある日光白根山ロープウェイを使って一気に標高差600mを登れば、標高2000mの山頂駅へ。
ここをスタート地点として山頂を往復すれば5時間程度。初心者には往復がおすすめだが、少し足を伸ばして七色平分岐~南峰・白根山神社~日光白根山山頂~北峰~弥陀ヶ池~座禅山~七色平北分岐を経て、再び山頂駅へ周回すると、さらにバラエティに飛んだコースを楽しめる。
入門コースながら樹林やガレ場歩き、山頂や池を望む絶景など、日光白根山の魅力が凝縮。さらに、麓の丸沼高原には座禅温泉やオートキャンプ場などのアクティビティも充実しているので、ファミリーには天気のよい日に旅行と併せて楽しみたい。
高低図
日光側(栃木県側)から登るなら、湯ノ湖の畔・日光湯元温泉から周回して登るコースが一般的だ。バスや車でアクセスしやすい奥日光の湯元温泉をスタートし、前白根山や弥陀ヶ池、五色沼、五色山などを巡る約8時間の時間を要するコースで登山中級向けだ。
日光湯元温泉から湯元スキー場入口~天狗平~前白根山山頂~五色沼避難小屋を経て、日光白根山山頂へ。下山は弥陀ヶ池~五色山~国境平~湯場見平~中曽根登山口に下り、湯元温泉に戻る周回コースだ。
途中の天狗平の広場から眺める日光白根山や、前白根山山頂から望むコバルトブルーの五色沼を隔てた日光白根山の雄姿は人気の絶景ポイントだ。
なお、山登りの前後には、湯元温泉にある日光湯元ビジターセンターで高山植物などの自然情報の知識を得るのもよいだろう。またせっかく湯元に行くなら、日光湯元に宿泊し、秘湯とされる温泉寺に立ち寄るのも楽しい。
高低図
群馬県側からロープウェイを使わずに登るなら、標高1736mの群馬・菅沼登山口からアクセスできる。北斜面側を登るため6月でも積雪が残るので装備には注意が必要だが、雪が消えれば約7時間の工程で往復できる。
車の場合は菅沼茶屋東にある林道に停車し、菅沼登山口から入る。弥陀ヶ池西側のシラネアオイの群生地をはじめ、座禅山鞍部や五色沼避難小屋周辺は、初夏には可憐な高山植物の花畑が一面に広がるので、休憩を兼ねて植物観察も楽しいだろう。
なお、前泊するなら登山口近くの菅沼湖畔にある菅沼キャンプ村が便利だ。
高低図
栃木県側からのアクセスでは、金精峠から入山して栃木百名山のひとつ標高2244mの金精山と五色山、前白根山の3つの山を縦走するコースも魅力的だ。金精トンネル脇の駐車場から金精峠~金精山山頂と、日光白根山へ徐々に近づいていくコースは縦走気分を満喫できる。
金精山周辺は所々足場が悪く、はしごやロープを使って登る箇所もあるので注意が必要。下山後は、湯ノ湖の湖畔にある湯元温泉に立ち寄って汗を流して帰りたい。
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日光白根山の登山を楽しむなら、その周辺の山もぜひ一緒に歩いてみたい。男体山や女峰山などの日光の山々を登るのもよいし、戦場ヶ原や中禅寺湖周辺をハイキングするのも気持ちがいい。また、金精峠からさらに北へと向かい、温泉ヶ岳、根名草山へと足を伸ばすのもおもしろい。
紹介するコースは、時間がある人用の奥鬼怒温泉まで縦走するコース。縦走となると山中(念仏平避難小屋)を利用するのが一般的となるが、日光澤温泉や加仁湯などの温泉まで縦走するのもいいだろう。
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