大分県ひじ町で別府湾の絶景と歴史をめぐる山旅へ
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大分県日出(ひじ)町で、戦国時代の歴史ロマンあふれる鹿鳴越連山(かなごえれんざん)トレッキング。日出城址散策や、別府の温泉など下山後の楽しみも紹介!
文=山と溪谷オンライン編集部、写真=坂田守史、大江奈保子、協力=一般社団法人 ひじ町ツーリズム協会
別府湾を望む城下町、ひじ町
大分県の北東部に丸く飛び出した国東(くにさき)半島。その南の付け根、別府湾を望む町が日出町だ。お隣には国内有数の温泉郷として名高い別府市がある。
日出町は江戸時代には日出城を中心とした城下町として栄え、現在も城址にその歴史を感じられる。日出藩は豊臣家にもゆかりがあり、初代藩主・木下延俊(きのした・のぶとし)は豊臣秀吉の正室・高台院(おね)の甥にあたる。
さらに遡ると、戦国時代には大友氏の領地だった。大友氏が最も繁栄したのは、21代当主・大友宗麟(おおとも・そうりん)の時代。大友宗麟といえば、キリシタン大名としても知られている。キリシタン大名、つまりキリスト教に帰依した大名のことだ。宣教師フランシスコ・ザビエルがキリスト教を布教していた時代である。町にはザビエルゆかりの場所があり、鹿鳴越連山もその場所の一つ。
鹿鳴越連山は、日出町の北に位置し、主峰・七ツ石山(623m)を中心に連なる。日出町の歴史にも生活にも関わる大切な山だ。
戦国時代には、大友氏の北の守りとして、鹿鳴越連山に山城や狼煙台が築かれた。また、鹿鳴越連山に降った雨は地層へ染み、湧水として人びとの生活を潤してきた。日出町は湧水が豊富で、現在も主要な水源となっているという。海底から湧き出た淡水と海水が混ざり合い、そこで育ったマコガレイは「城下(しろした)かれい」と呼ばれる。城下かれいは、江戸時代には庶民が食すと罰せられたことから、別名「殿様魚」とも呼ばれた高級魚である。
歴史と絶景の鹿鳴越連山へ
今回は、山田湧水登山口から、西鹿鳴越道、通称「ザビエルが通った道」を登り、七ツ石山から尾根を歩き、東鹿鳴越道、通称「殿様道」を下る計画を立てた。史跡を訪ねながら絶景を楽しめ、歩きごたえも充分な道だ。
案内は「ひじの里山を愛するガイドの会」の越智さん、森さん、谷さんの3人。そして、地元在住ながらまだ鹿鳴越連山には登ったことがないというシモンさんも同行してくれることになった。
スタート地点は山田湧水登山口。山田湧水では、朝から地元の人が、たくさんのポリタンクに水を汲んでいた。飲んでみると、まろやかな口当たりがする。少し登った場所には源泉があった。
西鹿鳴越道は、「ザビエルの歩いた道」と呼ばれ、ザビエルが大友宗麟の招きで豊後府内(現・大分市)に向かう際に通った道とされる。また、同時に人びとが往来する生活の道であり、石切り場から石を運び出すための作業道でもあった。
一目城(ひとめじょう)・旧石切場では、石切り場の跡が間近に観察できる。よく見ると、ノミの跡もわかる。江戸時代から昭和初期まで採石されていたそうだ。
登り始めて約1時間で七ツ石山に到着した。七ツ石山からは、日出町の中心部と別府湾、右手には別府の湯煙と鶴見岳、由布岳が見える。北には、国東半島の山々も見える。絶景が見渡せる立地ゆえに、戦国時代には、大友氏の狼煙台があったという。別府湾を挟んだ対岸にぽこんと見える高崎山へ七ツ石山から狼煙が上がったそうだ。
「このあたりは、3年前まではヤブだったんですよ」と越智さん。七ツ石山周辺や、この先の尾根道は、ヤブを刈るなどの整備をしたという。鹿鳴越連山は歴史ある山域ながら、昭和になると採石もされなくなり、さらに自動車が一般化するなど生活の変化により、一部はあまり人が入らない時期があった。周辺の登山道は平成から現在にかけて再整備されてきた道なのだ。この整備活動と歴史によって、2022年に鹿鳴越連山は日本山岳遺産に認定されている。
七ツ石山から出発し、板川山、アセビの群生地を過ぎ、古城山へと向かう。古城山は、その名の通り、かつては「鹿鳴越城」があった場所だ。周辺では、竪堀など山城の遺構が見られる。山頂直下は、このコースいちばんの急登だった。
下山は東鹿鳴越道、通称・殿様道を歩く。殿様が乗る輿が通れるように幅が広く、一部は石垣で整備されている。明治時代には人力車が通っていたという。
下山後、経塚山の山頂直下まで車で移動した。西の峠から経塚山へ往復する道も整備されているので、時間がある人にはそちらがおすすめ。経塚山は、かつてここに経典が埋められていたことが名前の由来だという。経塚山も展望がいい山だ。おすすめは花の季節。くじゅう連山など他の山域よりも早く、ミヤマキリシマが5月中旬に咲く。また、秋にも開花するそうで、年に2回咲く珍しい場所だ。
鹿鳴越連山は、日帰りで歩けるコースながら、歴史ロマンのある道だった。戦国時代から江戸時代の遠い過去の営み、それと同時に、この山域を親しみ歩けるようにと整備を続けてきた現代の人びとの思いが感じられる。そして、整備活動をする人たちは、「いい遊び場だよ」と森さんが言うように、この山が好きで、とても楽しそうなのだ。
整備の成果もあり近年は歩く人が増えたのだと、ガイドの3人がうれしそうに話してくれた。次は、紅葉の季節や、花の季節にまた訪ねてみたい。
MAP&DATA
コースタイム:山田湧水登山口~西の峠~経塚山~七ツ石山~殿様道登山口~山田湧水登山口:約3時間55分
アドバイス:城山までも縦走可能。ショートコースとしては、横津神社から城山往復がおすすめ。城山は標高が低いながら、町の展望がよい。また、ひじ町ツーリズム協会への事前予約で、ガイド依頼(有料)が可能。
アクセス:マイカーまたはタクシー利用がおすすめ。山田湧水登山口に駐車場あり。JR日豊本線豊後豊岡駅からは徒歩約40分。
関連リンク:ひじの里山を愛するガイドの会
立ち寄り・宿泊案内
登山前後に立ち寄りたいお店や宿泊施設を紹介。
【観光案内】二の丸館
ひじ町の観光案内所。レンタル自転車貸出、お土産販売ほか、日替わりでお店が変わるカフェも。日出城の裏門櫓をリノベーションしたワーケーションスペース「yagura」を併設。
所在地 | 大分県速見郡日出町2612-1 |
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【食事】真清水カフェ
【宿泊】Sakura Beach Garden
ひじのお土産紹介
二の丸館で購入可能なお土産を紹介。
竹のディフューザー、アクセサリー
大分県は全国有数の竹の産地。近年は、フレグランスやディフューザー、アクセサリーなど新感覚のアイテムも増えている。竹ディフューザーセット5500円。イヤリング2200円~。
トラピストクッキー
日出町はフランシスコ・ザビエルにゆかりがあり、日本のキリスト教の歴史上重要な地。日出町にある大分トラピスト修道院で修道士が作ったクッキー。ミニパック150円~。
ひと足延ばして、温泉&高原リゾートへ
ちょっと足を延ばして、温泉や登山をさらに満喫してみては?
別府
温泉をとことん楽しむなら日出町のお隣・別府へ。源泉数・湧出量日本一という日本屈指の温泉街だけあり、温泉宿多数、日帰り温泉も多数。暘谷駅から別府駅までは約15分。
【登山情報】鶴見岳
別府の山といえば、鶴見岳。コースタイム約3時間半で登れる。ロープウェイを使えば、片道10分。山頂は公園になっていて展望も抜群。5月下旬にはミヤマキリシマ、冬には霧氷が見られる。
塚原高原
塚原高原は由布岳の北に位置する、のどかな丘陵地帯。ペンションや別荘地があり、カフェやギャラリーなどが点在する。車移動がおすすめ。温泉リゾートの由布院も近い。
【登山情報】由布岳
「豊後富士」とも呼ばれる美しい山容。東西に峰をもつ双耳峰で、山頂周辺の岩場は鎖もあり、要注意。5月下旬にはミヤマキリシマが開花する。正面ルートはコースタイム約4時間30分。
アクセス
車
- 小倉から東九州自動車道を約1時間30分で日出IC
- 鳥栖JCTから大分自動車道を約1時間20分で日出IC
電車
- 【福岡方面から】小倉駅から暘谷駅までJR日豊本線で約2時間15分
- 【大分市方面から】大分駅から暘谷駅までJR日豊本線で約30分
飛行機
- 大分空港から空港特急バス「エアライナー」で日出町中心部まで約27分
お問い合わせ
一般社団法人 ひじ町ツーリズム協会
https://hijinavi.com/(ひじまち観光情報公式サイトひじナビ)