「大腿四頭筋」〜下りで本領発揮するブレーキ|やさしい筋トレ for登山(3)/登山力レベルアップ講座

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『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。『やさしい筋トレfor登山』では、登山で重要な役目を果たしている筋肉の仕組みを解説し、おうちで簡単にできる筋トレやストレッチを紹介します。今回は太もも前部の筋肉群・大腿四頭筋です。

文=芳須 勲、写真=中村英史
イラスト=平のゆきこ

 

膝に負担がかかる下山に、苦手意識のある方は多いのでは。そんなお悩みを、この筋肉がサポートしてくれます。

 

大腿四頭筋の構造とはたらき

太ももの前面にある、4つの力強い筋肉

外側広筋、中間広筋、内側広筋はともに大腿骨から始まり膝蓋腱を介して脛骨につく。大腿直筋は腸骨から始まり、中間広筋の表層を覆うようなかたちで膝蓋腱を介し脛骨につく。大腿四頭筋は、筋繊維が鳥の羽のように斜めに並ぶ「羽状筋」というタイプの筋肉で、強い力を発揮することができる。4つの筋肉はすべて膝関節をまたいでついており、膝を伸展させることが主な役割だが、大腿直筋は唯一、股関節もまたぐため、股関節の屈曲にも貢献している。

 

大腿四頭筋の山でのはたらき

転がり落ちないようにブレーキをかける

登りでは体を押し上げたり、太ももを上げたりする役目(大腿直筋のみ)をもつ。下山では、後ろ側の膝関節がガクッと曲がらないようブレーキをかけながら、ゆっくりと体を下ろす役目をもつ。このとき、上体を反らせてしまうと股関節が伸展し、両関節をまたぐ大腿直筋に大きな負担がかかる。大腿四頭筋の疲労による転倒、滑落を避けるため、登りでは筋力を温存し、下りでは上体を反らせないようにしたい。

膝関節を安定させ、関節痛を予防

膝関節には膝蓋骨(膝の皿)が存在し、スライドすることで負荷を分散させて、スムーズな膝の曲げ伸ばしを可能にしている。しかし、疲労などで大腿四頭筋がこわばってしまうと、膝蓋骨が上に引っ張られてうまく稼働しなくなり、関節痛や変形の原因となる。

 

大腿四頭筋を鍛える
レッグエクステンション

このエクササイズは膝関節を曲げることなく行なえるので、膝関節に不安を抱えている人でも効果的に大腿直筋を鍛えることができる。

背筋を伸ばして床に座り、片方の足は膝を90度くらいに曲げて、両手で抱える。反対側の脚は、まっすぐ前に伸ばし、つま先は上に向ける。

膝を伸ばしたまま、かかとをできるだけ高く持ち上げる。上で一度止めてから、ゆっくりと下ろす。このとき、太ももの前側の中央部分が使われていることを意識する。

 

大腿四頭筋をほぐす、
太もも前部のストレッチ

大腿直筋は2つの関節をまたぎ、両側から引っ張られるため、下山中、大腿四頭筋のなかで最もこわばりやすく、膝関節のトラブルをひき起こしやすい。日頃からストレッチを続けて柔軟性を保つとともに、疲労をためないことが大切だ。このストレッチは大腿四頭筋すべてを伸ばすが、アレンジすることで大腿直筋をメインターゲットにすることもできる。

膝を後方に引くイメージで股関節を大きく伸展させると、大腿直筋をピンポイントで伸ばすことができる。呼吸を楽にしながら20秒間この姿勢をキープ。左右2~3セットずつ、毎日入浴後などに行なうとよい。

パワーアップコラム

筋収縮と登山

登りで体を押し上げるとき、大腿四頭筋は縮まりながら力を発揮(短縮性筋収縮)するが、下山で重力に逆らいブレーキをかけながら歩く場合、伸ばされながら力を発揮(伸張性筋収縮)している。伸張性収縮は筋肉に微細な損傷を生じさせる。これが下りのとき急に力が入らなくなって膝がガクガクしたり、後日筋肉痛になったりする原因。下りに強くなるにはトレーニングを行ない、筋力をつけることも大切だ。

山と溪谷2022年6月号より転載)

 

 

プロフィール

芳須 勲さん(登山ガイド、健康運動指導士)

よしず・いさお/いきいき登山ガイド・ヤッホー!!さん。として活動。管理栄養士の資格も持つ。「登山で健康づくり」をモットーに運動・食事指導・山の安全管理を柱とした登山プログラムを提案している。

登山力レベルアップ講座

『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。 興味がある講座を選んでも、まとめて全部受講してもOK。さあ、楽しく学んでいきましょう!

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