PICK UP 研究

山形大学の特筆すべき研究を紹介! 世界を牽引する研究の世界を覗いてみよう!

人文社会科学部

ナスカの地上絵の研究と保護を
託された世界で唯一の大学。

坂井正人 教授

文化人類学・アンデス考古学

ナスカの地上絵

 南米ペルーの「ナスカの地上絵」は誰もが知る世界遺産ですが、それらが誰によって何のために描かれたかなど、長年、謎に包まれた遺跡として有名です。ナスカ台地があまりにも広大過ぎて地上絵の分布状況すら、十分に把握されていなかったのです。事態が大きく動いたのは2004年、文化人類学・アンデス考古学が専門の坂井正人教授は、地理学、心理学、情報科学の先生方とともに「ナスカ地上絵プロジェクトチーム」を結成し、学際的調査に乗り出しました。人工衛星画像の解析、現地における地道な踏査、データの収集や分析を重ね、2006年には新しい動物の地上絵を発見したことが大きな話題になりました。その後もナスカ台地とその周辺部で学術研究と保護活動を展開し、その実績が評価され、山形大学はナスカ台地での学術調査を、ペルー文化省から正式に許可された世界で唯一の研究チームとなっています。2012年にはナスカ市に「山形大学ナスカ研究所」を開所し、さらに2015年はペルー文化省とナスカの地上絵に関する学術協力と保護等を目的とする「特別協定書」を締結。学内他学部との連携はもとより、他大学やペルー、米国、イタリア、ドイツの研究者との共同研究もより活発なものになっています。

ナスカ台地の北端に描かれた「ハチドリの地上絵」。地上絵に描かれたタイプのハチドリは、アマゾン地帯などの森林地帯に生息する。

 山形大学の学生たちには、こうした学際的かつグローバルな活動を体験する機会が提供されています。ペルーに1週間〜6か月間滞在し、ナスカの地上絵及び付近の遺跡での調査や保護活動に参加する授業や研修があり、卒業論文や修士論文のテーマとする学生も少なくありません。また、南米の異文化と直接触れた経験は、学生の進路決定や就職活動においても大変役に立っています。

直線状に盛り上がっているのは、台形の地上絵の縁部である。台形の地上絵は当時の儀礼場であり、儀礼で破壊された土器が地上絵の縁部に集中的に分布している。

人工知能によって発見された最初の地上絵。人型の地上絵で、全長約5メートル。ナスカ早期(前3世紀〜後1世紀)に制作されたと考えられる。

AIで加速する研究と保護活動、
先進技術で古人の創造力に触れる。

 2019年現在、山形大学の研究チームが発見した動物の地上絵は合計180点以上にのぼっています。これまでも人工衛星画像や3Dスキャナなどの先進技術を活用してきましたが、IBMコーポレーションとの共同研究により2018年より人工知能(AI)を導入。ナスカの地上絵の全体像を把握し、現地調査に基づいた分布図の作成を予定しており、これによって研究の加速化と市街化の拡大に伴って進む破壊に歯止めをかける保護活動への貢献が期待されています。ナスカ研究の最前線「山形大学ナスカ研究所」では、先進技術を駆使し、ナスカ期からインカ期まで、つまり前3世紀~後16世紀の約1500年以上にわたる人々の暮らしと創造力に触れる、そんなロマンと醍醐味に満ちた研究に取り組んでいます。

PROFILE

坂井正人 教授

文化人類学・アンデス考古学

山形大学ナスカ研究所副所長。千葉県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。山形大学人文学部助教授、准教授を経て、現在に至る。