希少な猛禽類クマタカ、風車近くに死骸 鶴岡、バードストライクか

2023/8/3 12:04
空を舞うクマタカ=2021年、大江町(日本野鳥の会県支部・清野信行事務局長提供)

 鶴岡市の八森山にある民間事業者の風力発電施設付近で、希少な猛禽類クマタカ1羽の死骸が見つかったと2日、市が発表した。風車にぶつかった「バードストライク」の可能性があり、近く環境省が死因を調べる。現地ではクマタカを含め希少猛禽類などと風車の衝突が懸念されている。クマタカが死んだ経緯などが判明次第、必要があれば事業者側は対策を講じることになる。

 風車を整備した民間事業者はジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京都)で、高さ約140メートルの風車5基が2021年11月から稼働している。今年6月24日、環境影響評価法に基づく事後調査の際、調査の委託業者が最も南側にある5号機付近で発見した。JREは鳥類の専門家を交え、状況を確認後、先月中旬に国へ報告。市は同28日に連絡を受けた。死骸はJREが収容しており、環境省が近く引き取る。死骸の損傷状況に応じてCTスキャンによる画像診断や解剖により風車と衝突したかどうかなどについて来月までに分析する。

 環境省東北地方環境事務所(仙台市)によると、クマタカが風車に衝突したバードストライクの報告は北海道で過去に1件あったが、東北では確認されておらず、全国的にも珍しいという。県環境影響評価審査会長で、山形大理学部の横山潤教授は「バードストライクであれば、原因は風車のブレードが高速で回っているために視認できなかったか、獲物の捕獲などでブレードに気付かなかったことが考えられる。突風などで体勢が崩れて衝突した可能性もある」と指摘する。

 JREは現場付近でクマタカの営巣が確認されたため、ブレードの一部を赤に塗装するなどの対策を講じた。国はバードストライクが確認された場合、稼働制限などの追加措置を講じるよう勧告している。JREは「バードストライクだった場合は真摯(しんし)に受け止め、事故原因の分析と適切な対応を検討する」としている。JREの風力発電事業は八森山北側の同市矢引や加茂地区でも計画されている。2日の定例記者会見で皆川治市長は「一定の地域で風力発電が集中すると累積的な影響が懸念される。こうした点を含め重大な事案と受け止めている」とし、JREに詳細な報告を求めると述べた。

◆クマタカ 県内各地を含む森林や山間地に生息し、全長75~80センチに成長する大型のタカの一種。近い将来に野生における絶滅の危険性が高い「絶滅危惧IB類」に指定されている。1997年に環境省などが実施した調査によると、国内生息数は推定1800羽。

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