株式会社翻訳センター代表取締役社長二宮俊一郎氏

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会社名 :株式会社翻訳センター
証券コード:2483
代表者 :代表取締役社長 二宮 俊一郎(にのみや しゅんいちろう)
略歴  :1995年広島大学教育学研究科博士課程(前期)修了後、97年に株式会社翻訳センター入社。同社取締役を経て、2012年に株式会社アイ・エス・エスならびに株式会社アイ・エス・エス・インスティテュート代表取締役社長就任(現任)。17年に株式会社メディア総合研究所代表取締役社長就任(現任)。18年より株式会社翻訳センター代表取締役社長(現任)。
所在地 :大阪市中央区久太郎町四丁目一番三号 大阪御堂筋ビル13階
設立  :1986年4月
事業  :企業向け産業翻訳を軸とした翻訳サービス業。翻訳をコア事業に、通訳、人材サービス、コンベンション(国際会議企画・運営)、通訳者・翻訳者養成事業など、外国語ビジネスの総合サプライヤー。
資本金 :5憶8,844万3,000円
URL :https://www.honyakuctr.com/corporate/

翻訳センターは、国内翻訳業界最大手、JASDAQに上場する業界のリーディングカンパニーです。医薬翻訳から出発し、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務と取扱分野を拡大。約4,000名の登録翻訳者を有し、高い品質と専門性、対応言語約80言語という幅広さが特徴です。近年ではAIによる機械翻訳の戦略的活用を通じた新たなビジネスモデルの構築に取り組み、さらなるシェア拡大を目指しています。

二宮新体制が発足

インタビュアー(株式会社ウィルズ山本:以下、山本):今年(2018年)6月に代表取締役社長になられましたが、新体制になって何か変化がありましたか。

二宮俊一郎氏(株式会社翻訳センター代表取締役社長:以下、二宮):社員からは社風が少し変わってきたと言われましたね。私自身、社員と話すときはカジュアルにしていますし、スケジュールの許すかぎり一緒に現場に入るようにしていますので、それを社員が肌で感じ取っているのかもしれません。戦略面での大きな変化はありません。むしろよりダイレクトに戦略を加速できる環境になったというのはあります。営業部門との距離も近くなったと感じています。

山本:具体的にはどのような点ですか。

二宮:機械翻訳への取り組みは、私自身が中心になって進めてきた戦略です。その意味で現場の視点を活かしたマネジメントが可能になりました。

 

翻訳市場のリスクと機会

山本:機械翻訳が進展するなど、市場環境が大きな変革する中で、経営におけるリスクと機会をどのようにお考えですか。

二宮:人工知能(AI)などIT技術の進化により、ニューラルネットワークを活用した機械翻訳(NMT)が実用レベルになってきたことで、翻訳業界のパラダイムシフトが始まりました。今後は、機械翻訳への取り組み方が各社ともに市場競争力の源泉になっていくと考えます。機械翻訳の精度向上が翻訳工程を効率化する一方で、人による翻訳(人手翻訳)の市場規模縮小につながるという見方もありますが、当社は、むしろそこに成長機会を見出しています。機械翻訳はあくまで顧客専用の「入口」と位置づけ、そこから当社ならではの言語ソリューションを提供していきたいと考えています。

第四次中期経営計画

山本:第四次中期経営計画は新体制でのスタートとなりました。さらなる成長に向けた重点的な取り組みについてお聞かせください。

二宮:中計に掲げた3つの重点施策のポイントは、機械翻訳による「翻訳工程の生産性向上」と「機械翻訳導入顧客における顧客内シェア拡大」であり、目標に向け全社で取り組む体制が整いました。
具体的には、2017年7月に株式会社みらい翻訳に資本参加しました。同社が開発するAI搭載の機械翻訳エンジン「Mirai Translator」を販売し、導入企業における翻訳需要を取り込むことでシェア拡大を目指します。当社は従来人手翻訳に強みがありますが、今後は優れた機械翻訳エンジンと、人手翻訳による豊富な翻訳データという「言語資産」を両輪としたビジネスモデルへ転換し、日本を代表する言語サービスのコンサルティング企業を目指します。

山本:機械翻訳の戦略的な位置づけについてお聞かせください。

二宮:AIを取り入れたことで機械翻訳が実用レベルとなり、翻訳工程におけるツールとして活用できる時代になりました。こうした環境変化に対し、株式会社みらい翻訳が開発する高度な機械翻訳エンジン「Mirai Translator」の販売と、顧客専用モデルへのカスタマイズによる機能向上で顧客内利用を促進し、シェア拡大を図っていきます。

 

機械翻訳と人手翻訳がビジネスモデルの両輪に

山本:株式会社みらい翻訳への資本参加を決めた経緯について、もう少しお聞かせいただけますか。

二宮:当社は言語サービスの総合サプライヤーですから、機械翻訳エンジンの開発はしていません。一方で、株式会社みらい翻訳は、ニューラルネットワークを活用した精度の高い機械翻訳技術の開発およびサービスの提供を行う最先端企業です。当社は産業翻訳サービスの向上には翻訳データを効果的に学習できる機械翻訳が必要不可欠だと考え、2017年10月に資本参加を決定しました。
なお、人手翻訳で成長してきた当社にとって、機械翻訳と人手翻訳のカニバリゼーション(競合)についてはゼロとは言えませんが、当社への影響は限定的と考えます。たとえば膨大な数の、さほど重要性の高くない社内文書やメールの翻訳であれば機械翻訳の導入で外国語処理が効率的に行えます。一方で、訳抜けや誤訳が許されない正式文書や大型ドキュメントの場合、必ず人のチェックを必要とします。文書の種類・内容によって機械翻訳で下訳して人手翻訳が仕上げるといった棲み分けが可能です。

山本:機械翻訳の「課題」はどんなところにあるのでしょうか。

二宮:機械翻訳は最初から導入企業に特化した翻訳ができるわけではなく、人が教えていかなければ賢くなりません。そこが最新のアルファ碁(自己学習型AI)とちがうところで、人手翻訳による対訳データを「教師データ」として再学習させる工程が必要なのです。機械翻訳を顧客専用にカスタマイズする手段として「言語資産」を活用できるところが当社の強みといえると思います。

山本:「言語資産」をどう活用していかれるのですか。

二宮:お客様が当社に人手翻訳を発注いただけばいただくほど、それが「言語資産」として蓄積され、機械翻訳の精度が向上していきます。当社は顧客企業内に散在する人手翻訳のニーズを取り込み、蓄積した「言語資産」を効率的に運用する環境を整備し、翻訳文の品質安定と生産性向上を目指しています。

業績目標の達成に向けて

山本:業績目標とその達成に向けた課題についてお聞かせください。

二宮:2021年3月期の目標として売上高136億円、営業利益13億円、ROE15%以上を掲げています。この達成には機械翻訳の導入促進が鍵となります。機械翻訳を拡販することで顧客内シェアの拡大を図ります。また翻訳工程に機械翻訳を組み込むことを含め、業務プロセスの自動化と標準化で生産性を向上させていきます。
さらにお客様に機械翻訳を使ったドキュメント管理の効率化を提案できる人材も必要です。ITやAIの専門知識までは必要ありませんが、機械翻訳や翻訳支援ツールなどのシステム機能を理解し、お客様の業務効率化に貢献するサービスを提案できる人材の育成に注力していく予定です。

(インタビュー日 2018/09/28)

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