大分県国東半島の付け根に位置し、大分市・別府市のベッドタウンとしても人気の高い「日出町」。「日出」と書いて「ひじ」と読む、九州有数の難読地名で話題になることが多いのですが、実は城下町ならではの歴史スポットや全国的に有名なブランド食材も味わえるエリア。そこで大分の旅でぜひ訪れて欲しい日出町の魅力をご紹介します。
日出藩の初代藩主・木下延俊は、豊臣秀吉の正室ねねの兄である木下家定の子、秀吉からみると義理の甥にあたる人物で、関ケ原の戦いでの功績により、慶長6年(1601年)、日出3万石に封じられました。翌慶長7年(1602年)には日出城が完成し、日出は城下町として発展。明治時代にいたるまで木下家16代により治められてきました。
日出城は別名「暘谷城(ようこくじょう)」とも呼ばれますが、これは3代藩主・俊長公が中国の古書「淮南子(えなんじ)」から引用し名付けたと言われています。
日出城址周辺で訪れたいのが、日出城三の丸跡に建てられた日出のシンボル的建物の一つ「的山荘(てきざんそう)」。現在の杵築市山香町にあった「馬上金山」の採掘で巨万の富を築いた成清博愛(なりきよひろえ/1864~1916年)の旧邸宅で、近代和風建築の粋を尽くした家屋と別府湾を借景とした庭園が広がります。「的山」とは馬上金山で「山を的(あ)てたい」という思いから名付けた成清博愛の雅号に由来しています。
現在では日本料理店として使われていますが、庭園は無料で見学が可能です。
日出町はまた、「荒城の月」などで知られる日本を代表する音楽家・瀧廉太郎を輩出した瀧家ゆかりの地で、瀧家は代々日出藩の要職を務めてきました。日出城址にある瀧廉太郎像のほか、城下町には瀧家の住居跡や菩提寺である龍泉寺なども残っており、“楽聖"を偲ぶ街歩きも楽しめます。
日出町の特産品で最も有名なのが「城下かれい」。別府湾に面した日出城の南側に広がる城下海岸付近の海底では数か所から清水が湧き出しており、そこで生息するマコガレイは他の場所のものと比べ、泥臭さが無く、淡白で上品な味わいだったことから「城下かれい」として古くから珍重されていました。日出城址の海側石垣の下にある公園には「海中に真清水湧きて魚育つ」という高浜虚子の句碑もあります。
江戸時代には日出藩から将軍への献上品とされ、武士を除く一般の人はなかなか口にすることができなかったそうです。将軍への献上は、参勤交代の際は干物を献上し、4年に1度の閏年には、端午の節句に間に合うよう、生きた城下かれいを江戸まで運んだそうです。
カレイと言えば、煮付けやから揚げなどが定番ですが、淡白で上品な城下かれい特有の甘みを味わうには刺身がおすすめです。城下かれいは4月から9月くらいにシーズンを迎え、中でも5月~7月頃が最も美味しいと時期とか。旬の時期には、かつて将軍も食した天下の美味を求め多くの料理店が賑わいます。本格的な会席料理から手頃なランチセットまで、予算に応じて楽しめるのもうれしいポイントです。
日出町をはじめ、別府湾沿岸の杵築市、別府市で水揚げされたシラスだけを使用して、無添加・無漂白・天日干しで作られる高級ブランド「豊後別府湾ちりめん」。別府湾はカタクチイワシの稚魚「シラス」の好漁場で、古くからシラス漁が盛んな地域でした。シラスは傷みやすいため、水揚げ後すぐに茹でるために別府湾岸には加工工場が建ち並び、シーズンには、白い絨毯のようにちりめんが敷き詰められ、その光景は風物詩となっています。
ちなみに、シラスを天日干しする前が「しらす」で、茹でたものは「釜揚げしらす」、そして乾燥させたものを「ちりめん(縮緬)」または「ちりめんじゃこ(縮緬雑魚)」と呼ぶそうです。
獲れたてのうまみを天日干しでぎゅっと凝縮させた「ちりめん」はおみやげにもピッタリですが、日出町に来たら、ふっくらとした食感の「釜揚げしらす丼」や活きた美味しさを味わう「生しらす丼」もおすすめです。旬は例年9~10月で、地元では「秋ちりめん」という言葉もあるとか。
歴史感じる城下町と別府湾の海の幸を味わう日出町の旅へぜひお出掛けください。
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