【スペック】全長×全幅×全高=4340×1735×1305mm/ホイールベース=2600mm/車両重量=1110kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC16バルブ(145ps/6400rpm、17.4kgm/4200rpm)/車両本体価格=173.0万円(テスト車=233.8万円)

トヨタ・セリカSS-I(5MT)【ブリーフテスト】

トヨタ・セリカSS-I(5MT) 2002.11.12 試乗記 金子 浩久 ……233.8万円 総合評価……★★★

パンチ不足だが……

“クーペ冬の時代”にもかかわらず、あえてマイナーチェンジを施すトヨタの諦めない姿勢に、まず感心した。といっておいてなんだが、新意匠のバンパー、横長になったラジエターグリルなど、エグさを増したフロントフェイスは、むしろ、セリカのクーペとして完成度の高いデザインをスポイルしている。真横から見ると、実に美しいフォルムである。リアスタイルは、アクの強いフロントマスクとは対照的に、常識的でつまらない。前後の造形が改められれば、もっと魅力的なクルマに変身するのではないかと、残念だ。
さらにいえば、クーペはドライバーが主役のパーソナルカーなのに、インテリアがツマラなさすぎる。もっとトンガッていないと、エクステリアと釣り合わない。
走らせれば、低回転域ではいいが、うるさくてまわりたがらないエンジン以外はよくできている。車両本体価格173.0万円という値段を考えればなおさらだ。乗った印象は、250.0万円くらいかと思った。ミニバンやSUVを選ぶ人を改心させるにはパンチ不足だが、最初からセリカを選ぶ人を止めるほど、ヒドい仕上がりでもない。

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
初代のデビューは1970年12月と古い。日本のスペシャルティ分野を背負い続けてきたクルマだ。現行モデルは1999年9月にフルモデルチェンジした7代目。2+2レイアウトのスポーティクーペである。
グレードは、ベーシックな「SS-I」とスポーティな「SS-II」に加え、フロントにスーパーストラットサスペンション(キャンバーコントロールアーム付)を装着、リアパフォーマンスロッドやヘリカルLSD(MT車のみ)が備わる高性能版、「SS-II“スーパーストラットパッケージ”」も設定される。
エンジンは直列4気筒DOHC16バルブVVT-iの1.8リッター。SS-IIグレードは強力な2ZZ-GE型(190ps)を、SS-Iは1ZZ-FE型(145ps)を搭載する。トランスミッションは6段(SS-II)/5段(SS-I)マニュアル、または4段オートマチックの「スーパーECT」から選べる。駆動方式はFFのみだ。
2002年8月のマイナーチェンジで、フロントマスクを変更。インテリアは、コンビネーションメーターの判読性向上などが図られた。前後サスペンションには、新設計の「リニアコントロールバルブ付ショックアブソーバー」を装着した。追従性を高め、より優れたハンドリング、走行安定性、乗り心地の向上が謳われる。
(グレード概要)
テスト車の「SS-I」(5MT)は、セリカのベーシックグレード。ホイールはスチールホイール+キャップ、上位グレードに装着されるマフラーカッターが非装着など、細かい装備品が省かれた。上位グレードのステアリングホイールとシフトノブは本革巻だが、SS-Iは両方ともウレタン製だ。マニュアルエアコン、電動ドアミラー(格納は手動)などが備わる。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★
黒一色で暗いインテリア。ただでさえ光が室内に届きにくい、ガラス面積の小さい車内なのだ。ミニバン全盛のご時世、明るい室内が一般化した今となっては、ますます分が悪い。テスト車はオプション設定のサンルーフを装着し、太陽の光を多少得ることができたが。
メーターナセルからエアコン吹き出し口、カーナビにつながるダッシュボードを横から眺めると、その断面がフロントフェイスと同じぐらい奇妙な形をしている。それはそれで凝っているのだが、別段使いやすいわけでもなし、カッコイイわけでもなし……。
もちろんトヨタ車の常として、必要最小限のものは標準装備される。テスト車はサンルーフに加え、8スピーカー付きオーディオやDVDナビゲーションシステムを装着。利便性については、特にいうことはない。だからよけいに、暗くて事務的な雰囲気が惜しまれる。
(前席)……★★★
サイズはやや大振りで、コシのあるかけ心地。ホールド性は悪くなく、“スポーティカー”としては十分だ。また、外観から想像するほど窮屈な空間でもない。細かいことを指摘するようだが、このシート、前後や傾斜角を調整するノッチが粗く、ちょうどいいところに落ち着かなかった。
(後席)……★★
同じ4座クーペでも、メルセデスベンツ「CLK」のように、後席に人を乗せることを考慮したフル4シーターと、ポルシェ「911」のように後席を割り切った2+2の間には、大きな違いがある。セリカは後者に属する。だから贅沢はいわないが、後席シートの座面だけは、もう少し何とかしてもらいたい。中心部分が大きく窪んでいてお尻がスポッとハマってしまい、窮屈この上ない。そうでもしないと、ますますもって頭上がキツくなるのだろうが……。
(荷室)……★★
クーペのトランクに多くは望まないが、せめてフラットな床だけは実現して欲しい。ホイールハウスの張り出しは致し方ないとしても、さらにその奥でサスペンションがハミ出しているので、大きな荷物はここでストップしてしまう。でも、「デッキフック」と称して、カーゴネットをとめるフックが床に設けてあるのはとても親切だ。荷室の最大横幅は132cm、奥行き67cm、高さは40cm。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★
145psと17.4kgmを発生する、1.8リッター直列4気筒DOHC「1ZZ-FE」は、極低回転域から太いトルクを発生し、ストップ&ゴーの多いシティユースでとても使いやすい。しかし、4000rpmを超えると途端に息苦しくなり、音も騒々しくなる。スポーティな気分を盛り上げることはないし、高速道路の追い越しなどでは疲れる。
5段マニュアルトランスミッションは、可もなく不可もなくという感じ。ストロークも長過ぎず、シフトフィールが特別に滑らかなわけでもない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
意外といっては失礼かもしれないが、乗り心地は中庸を心得た快適さを備える。不快なところはない。マイナーチェンジで前後サスペンションに装着された、「リニアコントロールバルブ付ショックアブソーバー」のおかげだろうか。ハンドリングは、ステアリングに忠実で率直なもの。急に破綻するような兆候もなく、バランスよくまとまっている。しかし、ブレーキに難点あり。フィールは普通なのに、パットの性格か、踏み始めの反応が鈍くてちょっと怖かった。

(写真=郡大二郎)

【テストデータ】

報告者:金子浩久
テスト日:2002年9月24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:541km
タイヤ:(前)195/60R15 88H(後)同じ
オプション装備:15インチアルミホイール(6.0万円)/フロントフォグランプ(2.0万円)/リアスポイラー(3.5万円)/アウタースライド電動式ムーンルーフ(8.8万円)/スーパーライブサウンドシステム(12.0万円)/インダッシュCDチェンジャー6枚 MD一体AM/FM電子チューナー付きラジオ&8スピーカー+DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション(ディスプレイ別体タイプ)+TVアンテナ(25.0万円)/前席SRSサイドエアバッグ(3.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:334.8km
使用燃料:30.1リッター
参考燃費:11.1km/リッター


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