「学校でクラブに入らないといけなくて、手品クラブと間違えて手芸クラブに入ったんですよ。ところが、その1回目からまあ、楽しかった。初めて針と糸を持って、フェルトを切って、ブランケットステッチを教えてもらって。刺してひっかけての繰り返しにもう夢中」
瞬く間にフェルト手芸の楽しさにハマり、その日のうちに町の手芸店へ。そこで出会ったのが当時大ブームだったフェルトマスコットの第一人者、大高輝美さんの本。 「お母さんに本を買ってもらって、最初は小人のような『雨だれ人形』を家で一人、夜中まで夢中になって作っては小学校の友達にあげたりして。当時の私の最大の好意の示し方だったんですよ」
そこから手芸熱は途切れることなく、大人になるにつれてビーズ、編みぐるみ、刺繍、巾着袋と、代表的な手芸をひと通りマスター。そんな中、9年前に出会ったのが、もはや、趣味の域を超えたニードルフェルト。羊毛フェルトを専用針で刺しながら形にする手法だ。
「ある日手芸店に行ったらキットが売っていて『こんなの見たことない』と、買って試したら自分でも驚くほど上手にできたんですよ。思いのほか形も自在になるし、もう、うれしくて。小学生のとき『ビーズの目ん玉はひっこめたほうが可愛い!』って興奮してマスコットを作ったウキウキと一緒」
でも、大人になった今だからこそ変わったのは、なんといっても経済力がついたこと。「子どものときは限られたお小遣いで円のビーズが欲しくて欲しくて、でも買えなかったのが今は20色ぐらいポーンと買えちゃう。まるで夢のよう。タイムスリップして子どものときの私に買ってあげたい。と言っても、手芸店では1万円も持っていたら大金持ちで、何でも買えるんですよ」
手芸があればいつでも自分に戻れるからこそ、表舞台に立つ本業のTVの仕事ともよりいい形で「均衡が保てている」とも。「TVはさまざまな人のグルーヴにいかに入れるかという仕事で不特定多数が対象。手芸は全部自分のペースで、例えば少数のワークショップをやると同じグルーヴの20人ぐらいがすぐ集まる。その両極がいいんです。この歳になって夜中一人でワクワクするものがある。楽しい人生だって思いますよ」
この写真は、手芸と出会った 8 歳のころ。おばあさんになったら手芸屋を開いて子どもたちに手芸を教えたいという夢があった。「あれ? このままいけば叶うかもって、最近思うんです」
Photos: Kohey Kanno, Stylist: Ayaka Morishita (Upward), Hair & Makeup: Kanako Shimanuki, Interview & Text: Hiromi Yoshioka, Editors: Gen Arai, Mayu Kato