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学びはもっと開かれるべき! STEM分野を学んだ女性たちの話。【アンコンシャスバイアスを探せ!】

科学技術開発に欠かせないSTEM分野だが、学生や研究者にはジェンダー比率に大きな差があると言われている。その背景には何があるのか。実際に理系分野の大学や大学院を卒業し、社会に出た女性3人に、マイクロアグレッションを受けた体験談を聞いた。

Illustration: Sheina Szlamka

23歳、工学部航空宇宙学専攻、大学卒業後IT関連会社勤務

私は中高一貫校のときに理系クラスに在籍したが、クラスメイトのほとんどが男子だった。その後、大学では志望していた航空宇宙専攻に進み、空気力学などを研究した。大学に入学した当初、学科全体の新入生100名のうち女子学生は20名だったが、それでも例年よりは女子が多いと聞いた。中学生時代から男子に囲まれた生活が自分にとっては普通だったため、私自身はあまりジェンダーギャップを気にしてはこなかった。だが、大学院へ進学するか就職するかで悩んだとき、初めて自分が女性であることを意識せざるを得ないできごとがあった。

大学の就活指導で、将来的には一般企業への就職を希望していることを伝えたら、「大学院には進まず、大卒で就職したほうがよい」と勧められた。「女性は大学院に進むと就職が難しく、就活してからも『知識のある女性』『経済的に恵まれた家庭の女性』といった色眼鏡をかけられ煙たがられる」という理由だった。ほかの女子学生も同じようなことを言われたと聞いていたので、理系だから仕方ないのかと特に気に留めることはなかった。けれど今思うと、学びの機会はもっと開かれているべきだ。そしてこの経験を糧に、自分が同じようなジェンダーステレオタイプを持っていないか、気をつけるようになった。

31歳、感染症学専攻、大学院卒業後コンサルティング会社勤務

2021年11月、ドイツ未来賞を受賞したBioNTech社上席副社長で生化学者のカタリン・カリコ(左)と同社共同創業者のクリストフ・フーバー(右)。カリコは新型コロナウイルスワクチンである「mRNAワクチン」を、驚異的な速さで開発した。Photo: Christophe Gateau / picture alliance via Getty Images

学部時代は獣医学を専攻し、基本的に男女の比率が半々くらいだったのでジェンダーにまつわる偏見や差別を私は感じたことはなかった。だが、大学院で女性研究者を支援する賞を受賞したとき、男子学生から「女性だから賞をもらえていいな」と言われ、なんとも言えない気持ちになった。他にも、研究職に女性の人材が少ないこともあり、「女性・他国籍の方を積極的に採用」と公表している大学・団体・企業が多いことから、別の男子学生から「女性だから就活で受かりやすいでしょ」と嫉視されたこともある。ジェンダーではなく実力や人としての魅力が先に来るべきだろうという考えに相違はないが、STEM分野全体におけるジェンダーギャップを埋めるために設けられたアファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)への理解がより深まることを願っている。

26歳、理工学部通信・電気専攻、大学院卒業後電気系会社勤務

宇宙飛行士のエレン・オチョア(左)とニコール・マン(右)。2017年撮影。Photo: Carmen Jaspersen / picture alliance via Getty Images

私が大学時代に通った理工学部は全体で200人いるうち、女子は10人程度。そうした中、「女子学生には甘い」ことで知られる60代の男性教授がいた。一人ひとりの課題を講評し指導する授業で、男子学生のものは細かい部分までチェックし何度もやり直しをさせ、ちゃんとできるまで帰さないといった勢いで、その「厳しさ」が評判でもあった。一方、女子学生の課題にはすぐにOKを出す。確かに、適当でもいい点をつけてくれるし、早く帰れるのは嬉しかったが、同じ学費を払い時間をかけて学びに来ているのに、ちゃんと指導されないのは不満だった。もちろん、フェアに接してくれる教授もいるが、先の教授の対応には、どこかに理系の学問は男のやる勉強だという偏見があるのではないかと感じた。

また、理系に進んだ女性は「賢い」「理屈っぽくて怖い」と揶揄され一括りにされることがしばしあり、こうしたスティグマにも違和感を覚える。なぜ女性は「賢い」といけないのか。なぜ女性が「理屈っぽい」と「怖い」のか。いつになったら、STEM教育におけるジェンダーギャップは埋まるのだろう。

Text: Yoshiko Yamamoto Editor: Mina Oba