BEAUTY / EXPERT

赤西仁が放つ、ジェンダーレスな美しさの秘密とは。

男性が美を体現する時代を先取りした『VOGUE JAPAN』8月号のビューティーストーリー。アートとしてのメイクアップを赤西仁が華麗にまとい、その個性をさらにシャープに尖らせている。活動のインスピレーション源について語ったインタビューの後半とともに、美しきヴィジュアルをお届け。※インタビュー前半はこちらから。
美しさを極める男。

「光の具合でさまざまな色に変化したり、美しく反射したりといったピグメントを使い、奥行きや別の一面を引き出すメイクが好き」と、メイクアップを担当したナターシャ・セヴェリーノ。「このルックでは、ブラシのストロークを生かして肌に3D効果を与えてみました」。ジャケット 参考商品/LEVI’S®(リーバイ・ストラウス ジャパン 0120-099-501) ピアス/BOND HARDWARE(bond-hardware.com

日頃から美容にそこまで関心がないと語るが、その肌はスムースで美しい。ただボディメイキングには気を使っているそうだ。「ワークアウトをたまに。腕立てふせを30回3セットくらい」

数時間に及ぶフォトセッションで5回のメイクチェンジをこなし、数百枚の写真におさまったのち、赤西は、スタジオを訪れた際の服装に戻った。以前、自身が「トラッシーでカジュアル」と表現していたルックだ。頭上の天窓から差し込む一筋の光に照らされながら、赤西は、自分の夢を追いかける、新たなアプローチについて語ってくれた。

撮影中はずっと、スタッフと英語で話していた赤西だが、インタビューの席では、日本語で答えたいとの申し出があった。「日本で発売する雑誌なんだから日本語で答えたい」というのがその理由だ。さらに当初は、こちらに対して少し身構えている様子だった。これはおそらく、日本のメディアに対する警戒感から来るものだろう。だが会話が進むにつれて、その話は熱を帯びてくる。

インスピレーション源について尋ねると、彼は口もとにニヤリとした笑いを浮かべた。そして「女、酒、タバコ」と答えて、大笑いしてみせた。もちろん、これは彼流のジョークだ。実際は、仕事そのものが、彼のモチベーションになっている。自身の創造力が発揮できる新たなプロジェクトに飛び込んでいくことを、彼は心から楽しんでいる。「仕事以外からのインスピレーションってあんまりなくて」と彼は言う。「何か動いているときにパッと思い浮かんだりする感じ」だというのだ。

赤西は今、完全にフリーだ。2014年には以前の所属先からの独立が大きな話題を呼んだが、その後は自主レーベル「Go Good Records」を立ち上げ、活動している。壮大な夢を抱き、リスクをとれるのも、独立して活動を始めたことが大きいという。「もっと動きやすくなりたかった。いろんなものをアチーブするために」と彼は言う。「自分で動くことによって、新しい発見を得ている」と、今の活動に手応えを感じている様子だ。

こうしたさまざまな構想のひとつが形になったのが、中国での活動だ。この数年、彼は中国を何度も訪れ、各地でライブを行った。その結果としてWeiboのフォロワーは318万人を超えている。

赤西にとっては、より広い世界への視野が開けたことが、中国で過ごした日々の一番の収穫だった。今では、グローバルに考えるようになったという。「いろんな人と出会って……あらゆる国から来た、いろんな人としゃべって」と、彼は当時の自分を振り返る。「実際に自分の意志で、自分で飛び込んでいける、物事を動かせるっていう……。それを知れたことはすごく大きいです」

人と人との絆が新しい創造を生む。

もともとの美しさを引き立てるごくナチュラルなメイクアップ。肌のスムースな質感を全面に押し出して。頬にかかる少し長めのヘアの動きが、ジェンダーレスな色気を醸し出している。ベスト 参考商品 タンクトップ ¥33,000 ハット ¥81,400/すべてANN DEMEULEMEESTER(anndemeulemeester.com) ピアス/MARIA TASH(www.mariatash.com

だが、コロナ禍によるロックダウンが、新たな壁となって立ちはだかった。世界が動きを止めてしまった中では、仕事からインスピレーションを得るのは難しい。「コンサート、ライブとかやるはずだったんですけど、それが全部ストップ。キャンセルしなきゃいけなくなって」と、彼は無念さをにじませる。

それでも、真のアーティストは、創意工夫と適応力を備えているものだ。外出もままならない状況を逆手に取り、赤西は自宅で創作活動を始め、自分を表現する新しい方法について考えをめぐらせる時間も増えた。ニューヨークに住む友人たちとFaceTimeでつながり、今後の仕事のことや、コロナ危機のあとの未来について語り合った。「自分のアイデアやクリエイションをシェアできる仲間がいる。それを一緒に形にしようとしてくれる人たちが周りにいることが、自分の自信に大きくつながっていると思います」と、友人たちの力の大きさを語ってくれた。

インタビューの中では、「たくさんの新しいアイデア」が、何回か話題にのぼった。赤西の創作活動の原動力となっているエンジンを再起動させているのも、このアイデアの数々だ。

2020年4月に立ち上げたYouTubeチャンネル「NO GOOD TV」。友人やコラボレーション相手との会話をアップするこのチャンネルは成功を収め、これまでに72万4000人の登録者を獲得している。「今始動している大きいプロジェクトも、そこ(=友人との会話)から生まれたアイデア」なのだと赤西は語る。

そんな赤西の何でもオープンに受け入れる心は、カリフォルニアでの新たな冒険でも、プラスに働くだろう。彼はこの西海岸の、広く開放的な風土や自由をとても気に入っている。「日本ではタブーと思われていることがここではOKだったりするのを聞くと、『ああ、全然違うなあ』とは思いますよ」と、カルチャーの違いは実感している様子だ。

インタビューが終わると、赤西は短いスピーチで撮影チームに感謝を述べた。現場スタッフ全員から拍手と称賛を贈られ、その後、彼は、駐車場に停めていた愛車に乗り込み、撮影現場をあとにした。別の車に乗り込んだカメラクルーが、ぴたりとその後を追う。車を操り、ロサンゼルスの街をゆく赤西が、胸中に抱く夢──それは彼自身しか知らない、彼だけの思いだ。

クリエイションについて語る生の声は、ムービーでご確認あれ。

Model: Jin Akanishi Photos: Thomas Whiteside Hair: Rob Talty at Forward Artists using R+Co Makeup: Natasha Severino at Forward Artists using Pat McGrath Labs Manicure: Yoko Sakakura at A-Frame Agency using Chanel Stylist: Sandra Amador and Tom Eerebout Stylist Assistant: Chloe Takayanagi and Jaiin Kang Production: Emmanuel Tanner at Eiger Agency Creative Consultant: Studio Handsome Text: Kai Flanders (Interview), Misaki Yamashita(Makeup Tips) Editor: Kyoko Muramatsu