LIFESTYLE / CULTURE & LIFE

「フラメンコと歌舞伎は似ている」──ポップスター、ロザリアが語る半生と日本カルチャーへの愛

13歳でのフラメンコとの出合いから、音楽とパフォーマーとしての才能を開花させ、今やスペインが誇るグローバル・ポップスターへ上り詰めたロザリア──幼少期から、日本のアニメに魅了され、歌舞伎とフラメンコに親和性を見出す彼女へのスペシャル・インタビュー。

音楽スタイルの基盤となったフラメンコとの出合い

Photo: Erika Kamano

Q 幼少期の夢は?
A 9歳の頃から、すでにパフォーマーになりたかったのを覚えています。

Q 何かきっかけが?
A というよりは無意識に、ステージに立つということは、きっと、エキサイティングなんだろうなと思っていたんです。ステージの上でも、家族や友人のためにたった8人を前に歌うときでも、すごく惹かれるものがありました。ただパフォーマンスしたかった、歌いたかったんです。

Q フラメンコの経験を通じてその思いが強まったのでしょうか?
A フラメンコとの出合いは13歳のときです。9歳までは、いつも家で踊っているだけで……。ほとんど本能的なものだったように思います。必要だったというか、浄化というか。13歳のとき、放課後に友達とよく公園で遊んでいました。私より年上の人もいて、彼らはすでに車を運転していました。車には大きなスピーカーが積んであって、公園に車を一列に停めて、ドアやトランクを全開にして、大音量でフラメンコを流していました。すぐに、恋に落ちました。これこそまさに学びたいものだと思い、そこから10年以上かけてフラメンコを学んだのです。16歳でフラメンコの師匠に出会えたことも幸運でした。彼とたくさんの時間をともに過ごしました。大学進学も彼との縁があったからこそです。その大学では、彼のもとでフラメンコを学ぶ学生を1年に一人しか受け入れていませんでしたが、ラッキーにも私がその枠を享受することができたのです。

Q フラメンコについて知っておくべきことは何でしょうか? あなたを知るためにとても重要なファクターですよね?
A 確かにフラメンコは私を特徴づけるものです。フラメンコがなければ、私の今の音楽はなかったと思います。フラメンコはとてもレンジが広くて、さまざまな要素があるんです。何かを称えたり、悲劇やスピリチュアリティ、慣習、ありふれたことを歌ったり、ユーモアのセンスがあったりなど、すべてが備わっている。フラメンコの公演を観に行くだけでもそれを実感できるはずです。たとえ歌詞がわからなくても、エネルギーを感じることができるんです。

Q フラメンコはある意味、演劇的でもありますよね? オペラのように。
A そうかもしれないですね。ある人が、フラメンコは「ベルカント(イタリアの伝統的な歌唱法)」だと言っていたのですが、すごく面白い表現ですよね。周囲にいたフラメンコのミュージシャンやダンサーに大きな影響を受けて、私の今のスタイルがありますが、具体的な要素をあげるとしたら、それは炎だと思います。フラメンコはとても情熱的です。私は若い頃、自分の中に燃える火のようなものがあるとわかっていても、それに対して恐怖心を抱いていたように思います。でも、フラメンコを通して、自分の内面に触れることができたのかもしれません。

Q あなたのパフォーマンスには、とても原始的なものも感じます。
A 原始的な感じというのは、実はフラメンコの最大の特質のひとつなんです。体の中から出てくるものというか。日本の伝統にも同じものを感じています。歌舞伎などは好例だと思います。役者の表現や、声の使い方、体の動かし方も似ていますし。

歌舞伎に行っても、私には台詞の意味はわからないので、話の筋を正確に理解することはできません。でも、感覚やエネルギーは伝わってくるんです。

Q 確かに。あなたは自分の音楽にフラメンコの要素を多く取り入れていますが、そのほかにはどんなものに影響を受けているのでしょうか。
A 旅にもインスパイアされます。ここ3〜4年で世界各国を回るようになって、私の人生は大きく変わりましたから。

Q アルバム『MOTOMAMI』には、知っているものから離れて初めて経験する、憧れや距離、深い内省を織り込んだとか。
A その通りです。

Q 日本は、今あなたが送っているノマドのような生活の新しいチャプターの一端を担っているのかもしれないですね。
A そうだといいですね。こうしてまた東京に戻ってこられたことにとても感謝しています。どうしても日本を再訪したくて理由を探していた感じです。そうして「よし、この曲のためなら再び日本に行くのも納得できる」と思って、「TUYA」という新曲を制作したんです。

Q TUYAとは何ですか?
A スペイン語で、「あなたのもの」という意味です。日本で見聞きしたことにインスパイアされた形でこの曲を作ろう。日本でミュージックビデオを撮影すればいい。それならまた日本に行けるって思って。そうして今、私はここにいるんです。

Q 『MOTOMAMI』では、物理的にも気持ちのうえでも、あなたがいらした場所についての歌詞を書かれていましたよね。日本には12月に来て、その後またこうして来日されたわけですが、「TUYA」は日本で作り始めたのですか?
A 「TUYA」は、初来日の直後に書きました。『MOTOMAMI』には、一番行きたいと思い、懐かしいと思っていた場所と私を結びつけるような曲が収録されています。プエルトリコ、マイアミ、ロサンゼルス、ニューヨークなどについて書きました。そしてある時期には、行ってみたい場所、例えば日本についても書いていましたね。日本に行ったことはありませんでしたから。でも常に日本に憧れを抱いていたんです。「この曲は『SAKURA』という名前にしよう」「この曲は『CHICKEN TERIYAKI』にしよう」「これは『HENTAI』にしよう」というように。結局のところ、すべては自分が魅力を感じているものに近づくための潜在意識の動きです。本気で日本に行きたいと思っていたから、その場所にちなんだ名前を曲につけようと思っていたんです。

幼少期から、日本文化に恋い焦がれていた理由

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Q 去年の12月が初の来日でしたか?
A はい。友達には、「本当に日本のものが好きだよね」といつも言われていました。それなのになんで日本に行ったことがないの? 絶対行くべきだよって。何年も何年もそう言われ続けていたんです。昨年末の来日は、とても個人的な旅行でした。

Q 日本の何が、あなたにとってそんなに魅力的だったのでしょうか?
A 子どもの頃は、スペインで『クレヨンしんちゃん』を観て育ちました。カタルーニャ語では「チンチャン」って呼ばれているんですが、本当は「しんちゃん」ですよね? あとは『カードキャプターさくら』というアニメもいつも観ていましたね。夏になると姉と一緒に。これを観て夢中になって、「いったいこれは何?」ってなりました。あんなに心を奪われたのは初めてでした。色使いや、形、表情がどれもとても斬新で、まさにぶっとぶような経験でした。その後、成長するにつれて、デザイン建築への関心が高まっていったのですが、それはもう少しあと、19〜20歳の頃でしょうか。その頃からそうしたものに興味が湧いてきて、感銘を受けるようになったんです。日本のインテリアデザインとか、建築とか。それから食べ物にも。バルセロナではずっと寿司や、焼きそばといった日本食を食べています。焼きそばを作れるようになってみたいですね。でもバルセロナには、食材を置いているお店が少なくて。とにかく、日本のことは昔からずっと好きなんです。

Q 建築家では誰が好きですか?
A そこまで詳しくはないのですが、安藤忠雄や、手塚貴晴+手塚由比が好きです。

Q 先ほども話されていた、作曲のインスピレーションとなった音やイメージとはどんなものだったのでしょう?
A ただ街を歩くだけでいいんです。昨日、地下鉄に乗っていたら、メロディーが聞こえてきました。そう、ドアが閉まる前に鳴るあのメロディーです。ジャズのソロというか、シンフォニーというか。どう説明したらいいかわからないけれど、バルセロナの地下鉄は「ティー・ティー・ティー・ティー」という音が鳴るだけですが、日本ではメロディーが聞こえる。本当に、こうしたことはぜんぶ私には(いい意味で)ぶっとんでいると感じられ、すごく影響を受けます。随分メロディーは長いけれど、ドアが閉まるタイミングをみんなはどうやって知るんだろう? メロディーが鳴り終わったときなのかな? というように、メロディーを聞きながら、私はただただ感動していました。ただ街を歩いているだけでも、すべてがそんな感じなんですよ。

私は街を歩き回るのが大好きです。歩きながら耳をすませて、いろいろなものを見る。ただ日本にいるってだけで、少なくとも日本語を見たり、何かの音を聞いたり、お店やコーヒーショップから聞こえる曲を聞いたりして、インスピレーションを受けています。驚かされることばかりですよ。

スペイン語で歌う世界的ポップスターという立ち位置

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Q 幼少期に聴いていたラジオからはイギリスやアメリカのアーティスト、そしてもちろんスペイン語で歌うアーティストの曲が流れていたと思いますが、なぜ今、スペインや韓国のアーティストたちが母語で歌うようになったのだと思いますか? なぜ、今、それが効果的なのでしょう?
A 正しい答えを見つけるのが難しい質問ですね。グローバルなポップミュージックは、この20〜30年の間に非常に高い評価を得ていますが、それは、この業界がいかに商業主義的になったかを示していると思います。特に英語の曲はそうです。ある時点で、人々は英語の曲を聴くのに慣れきってしまったのではないでしょうか。ほかの言語の曲も聴きたくなったリスナーのために、自然と市場も拡大する必要が出てきたというか。私たちはみな、生まれつき好奇心を持っていますし。それにインターネットが、すべてを変えたと思いますね。違う文化に触れてこなかった人たちにとっては特に。嫌でも触れられるようになった感じです。

Q TikTokなどの影響もありますよね。
A でも今はもっとクレイジーになっていて、時間が経つにつれて、さらにワイルドになっています。それにともなって、私たちは世界中からより刺激を受けるようになっています。つまり、人は自分たちとは違う表現、文化、そして間違いなく音楽、言語をより受け入れるようになっているんです。私がこうして今、自分が育った言語で音楽が作れるのは、とても幸運です。バルセロナ出身ですから母語はカタルーニャ語ですが、スペイン語もそう。父はスペイン語を、母はカタルーニャ語をよく話していましたから。だから、譲歩することなく自分が決めた言語で、自分を表現し、音楽を作れるというのは幸運だと思いますね。それは、人々がよりそういったことを受け入れるようになり、よりオープンになって、より価値を認めてくれるようになったから。ほかの言語で作られた音楽は音が違うし、言語自体も、独特の音楽性を持っています。私たちは進化していますし、これまでも進化してきた。そして、これからもさらに進化していくことでしょう。

Q 歌詞を書いていらっしゃいますが、好きな作家や詩人はいますか? 夢中になっている本や、何度も読み返す本は?
A そうですね。ベトナム系作家のオーシャン・ヴォンが好きです。彼の書くものはとても美しい。今は、カポーティの『冷血』を読んでいます。この作品を読むのは初めてなんです。映画も大好きですよ。

Q 例えば?
A ウォン・カーウァイは本当に素晴らしい。ギャスパー・ノエ、タランティーノ、ソフィア・コッポラも好きですね。最近、一番気に入った映画では、赤ん坊のように泣いてしまいました。ルーカス・ドンというベルギー出身の監督が作った『CLOSE/クロース』という映画です。12歳くらいの子どもたちが登場するのですが、ほんとうに美しくて。彼らの演技はとても純粋で、その演出も自然体でした。あなたも、気に入ってくれるといいな。その美しさに、泣くのを忘れずにね。美しさがあふれ出していて、自分でもコントロールできないくらい、込み上げてくるものがありました。

Q 歌詞を書き始めるときは、どんな環境にいることが多いですか? それとも、ただ湧き上がってくるものなのでしょうか?
A アルバムを作るとなったら、早起きに切り替えます。そして運動してから、遅くまでスタジオにこもります。スタジオに何時間も、例えば一日12時間から15時間くらいいることもあるんですよ。そして家に帰ると、まるで修行僧のように眠るんです。ある意味儀式的とも言えますね。すごく打ち込むタイプなので、アルバムを作るときはそんな感じです。シングルはまた違います。もっと遊び心があるというか、これをやってみようとか、こうやって遊んでみようという感じがありますね。でもアルバムを作るときは、スタジオに行って、ほかにやるべきことがなくなるまで、没頭するんです。眠気が限界を迎えるまで。まさに、倒れそうになりますから。歌詞を書くときに役に立つのは、シャワーを浴びているときに音楽をかけることだと思います。新譜、聴いたことのないアルバムをかけるのが好きです。料理も好きで、曲をかけながら料理をします。自分の朝食を作るのも好きだし、自分の好きなことをするのも好きです。

Q 朝はどんなものを食べますか?
A だいたい毎朝同じものを食べています。バルセロナに住んでいる96歳の女性が、これを食べるといいよって教えてくれたんです。すごく薄いパンにアボカド、キュウリ、パセリ、ターキーを挟んだものです。最高の朝食ですね。エネルギーが湧いてくるんです。何年も続けているから、簡単に作れるし。好きなものは飽きないんですよ。シンプルなことが好きです。仕事をするのも好きだし、行き詰まるとたくさん音楽を聴きますね。

Q 何を聴くのですか?
A とにかく自分にとって新しいものばかりです。まだ聴いたことのないニーナ・シモンでもいいし、今まで知らなかったピンク・フロイドの曲でもいい。違うものの見方を与えてくれるようなものを聴きます。

Q 今週日本にいる間は、何を聴いていましたか?
A Spotifyに何が入ってるか見てみましょうか。Perfumeを聴いていました。ほかには何があるかな? あと、(ジャズ・ピアニストの)ロバート・グラスパーが好きなんですよ。昔、彼の音楽を勉強していました。ラッパーのペソ・プルーマも好きです。おおはた雄一の「DAWN」という曲も聴いていました。とても美しい曲ですよね。ラナ・デル・レイの新譜も大好きです。セレーナも好きで、カラオケで「Como LaFlor」なんかもよく歌います。

Q あなたの音楽では、視覚的な表現もとても重要ですよね。ファッションでも音を視覚化するのでしょうか? 作曲と同時にそれも考えているのでしょうか?
A 運がいいと一緒に思いつきますが、普通はそうなりません。普段は何かをじっくり観たり考えたりしているうちにひらめきます。書いているときにそれを参考にしたりもします。歌詞を書いているときに、歌詞の雰囲気からある色を思いついて、その色がステージデザインにつながったりする。制作しているときの音が、動画のアイデアを生むきっかけになることもあります。すごくオープンでいると、物ごとは自然につながっていくので、ただ点と点をつなげればいいのだと思いますね。「集めること」がクリエイティブなプロセスの基盤

Q もっと具体的には、観た映画やテレビシリーズの影響もありますか?
A 書き留めるようにしているんです。携帯電話のメモ機能に、調べたいこと、確認したいことがあるたびに、メモしています。映画を観ている間、ある台詞がきっかけでパンチラインが思い浮かぶことがある。それをメモしておき、歌詞に行き詰まると、それを見るようにしています。そうすると、たまに関連しているものが見つかることがありますから。 私のクリエイティブなプロセスは、「集めること」かもしれません。スタジオで、ミスのように見えても実際はそうでないことが起きたりしますよね。外出したときにもそうしたことは起きます。何の意味もないように見えるけれど、何かの兆候だったり。それを集めて、どこかで使うんです。

Q ファッションやショッピングについてもお聞きしてもいいですか?
A ショッピングは大好きです。服は本当に大好き。音楽は別として、今一番夢中になっているものです。何年も前からそうですね。母に似たのだと思います。母は靴持ちで、あるときから買いたくてもスペースがない、という状態になっていました。

Q あなたは何足の靴を持っていますか?
A 数えてもいないですね。ちなみにスーツケースは13個も持っています! 自分が変化して成長する中で、服との関わり方も変わってきたと思います。今は、ヴィヴィアン・ウエストウッドのコルセットのようなアイテムに、より興奮しますね。

Q ヴィンテージのアイテムをオンラインで買ったりもされますか?
A オンラインではあまり買いません。お店に行って見るのが好きなんです。だから、旅行するときは、例えばベルリンに行くとなると、姉も私も服が好きだから、二人で「あれもこれもいいね!」なんて言いながら、いろいろと事前に調べるんです。そしてベルリンに着くと、品揃えのいい古着屋を探そうってなって、Googleで調べて、写真を見て、ここはよさそうだなと思えた店に行く。たまに、いいものが見つかったりもするんですよね。

変化し続けるスタイルの根幹にあるものとは

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Q 自分のスタイルを表すハッシュタグを3つほど挙げるとしたら?
A すごく難しい質問ですね。というのも、自分のことを説明してくださいと言われるのですら、困ってしまうんです。デザイナーのミシェル・ラミーは、「本当のスタイルとは、富やセンスの表現ではなく、魂の現れなのだ」と言っています。とても好きな言葉です。私もそう思うし、魂を3つの言葉で表現することはできないでしょう?彼女の定義は、私がこれまで読んだ中で最も優れたものだと思います。

Q それは旅のようなものだからでしょうか? 常に変化しているというか。
A 旅を通して、その時々の自分も反映されるし、服の着こなしも、その延長線上にあると思います。だから、私の人生のあらゆる瞬間には、さまざまな変容するスタイルがあります。

Q それでもプラットフォームシューズやコルセットは必須なのでしょうか?
A いいえ、私はプラットフォームやコルセットが大好きですが、なくてはいけないというわけではありません。ときと場合によります。服は、その時々に必要なことを伝えるためにあるものだと思うんです。あるいは、私がそれを伝えるのを助けてくれるようなもの。それだけ服はパワフルだと思っています。とても価値があるものだと思いますしね。中には、服の持つ力を過小評価する人もいますよね。

Q ただ表面的なものだと考えている人はいますね。
A そういう人たちは服が私たちに与える力を理解していないんだと思います。私にとっては、特に色が重要です。私はその日の自分のニーズによって、ステージに上がるときの服の色を決めています。毎日自分のエネルギーは違いますから。

Q 赤はあなたにとってどんな意味がありますか?
A 赤は強さ。原始的なものを感じます。

Q 黒はどうでしょう?
A 言葉にするのが難しいのですが、黒はキャンバスのようなものでしょうか。私にとっては白みたいな色です。黒と白には平和があるような気がします。どこかニュートラルなものを感じるし、それを使って何でもできそうな気がする。グリーンを着るときは、間違いなくエネルギーを感じます。日本で撮影した新曲МVで伝えたかったメッセージ

Q 今回のミュージックビデオでは、何を伝えたかったのでしょう?
A 具体的に何かを伝えようとは思っていません。聴いたり観たりした人に必要なものを受け取ってもらえたらいいと思っています。でもあえて言えば、東京にいる外国人が、自分は「あなたのもの」だと歌っている気持ちを表現しています。実際には誰もそばにいないのに。これまで『ロスト・イン・トランスレーション』のような美しい映画をたくさん観てきました。私はいつもこの映画が大好きで、インスピレーションも受けています。ウォン・カーウァイの映画の色使いにも影響されています。

この曲の歌詞は、官能的なところがあるんですよね。東京は私にとってとても興味深い場所です。この歌詞のような官能的な世界をミュージックビデオにするのに、東京ほど完璧な場所はないと思います。繊細さが感じられて、とてもエキサイティングですよね。同時に、私の頭にはアラーキーの作品がありました。彼の作品には強さがあり、いつも感銘を受けています。実は若い頃、彼の写真を見たことがあるんです。だから、東京で、この曲の歌詞を表現することには意味があると思っています。

Q SNSを通じての積極的な発信だけでなく、プライベートな映像をMVに使用するなど、オープンであることが、あなたという人を表しているようにも思えます。ときにはそうしたノイズを消すこともあるんですか?
A 今はノイズに慣れてしまっていますが、いつかは耐えられなくなるときが来るかもしれない。そのときは消すでしょうね。今はがっつりソーシャルメディアを利用して、すべての投稿は私自身が行っています。Instagramにも、Twitterにも、TikTokにも、私以外の人は関わっていません。例えば、『MOTOMAMI』のコンセプトについて私が世界に発信すると、アルバムが発売する前から「MOTOMAMI」とは何なのか、その言葉から何が感じられるのかが人々の間で語られるようになったんです。つまり、彼らはそのコンセプトを作ることに参加していたんですね。それを目の当たりにして、とてもうれしくなりました。そんなことが起きていることに、興奮しました。

Interview: Tiffany Godoy Translation: Miwako Ozawa