メーキャップアーティスト(クリエイティブ系):松下 葉月さん

ライトハウス電子版アプリ、始めました

自己満足で終わったらただの趣味
プロとして相手のニーズをつかみ
100%実力を出すことが大事

アメリカで夢を実現させた日本人の中から、今回はメーキャップアーティストの松下葉月さんを紹介。情熱を持ってやり続けることの大切さを、メーキャップの魔法と共に若い人たちに伝えたいと意欲に燃えている。

【プロフィール】まつした・はづき■埼玉県生まれ。2000年に渡米、ハリウッドのエレガンス・インターナショナル・アカデミーなどで学ぶ。卒業後、07年10月に出張メーキャップサービス「Beauty Box」を設立。
www.hazukimakeup.comwww.myspace.com/beautyboxca

そもそもアメリカで働くには?

ハリウッド映画にも興味 ヘアメークを学びに渡米

浅草で警察官500人が集まって行われる
恒例の新年会で、タトゥーのメークを施す

 10代の頃から美容に興味があり、時々メークをしたり、エステに行ったりしていました。お金がなかったので月に1回くらいでしたが。それでエステティシャンに憧れて、ファッション系の専門学校を卒業後、東京のチェーン店でエステティシャンをしていました。
 
 幼少時代にニュージーランドで暮らしていたので、また英語圏の国に住んでみたいと思い、親友の留学しているアメリカに遊びに行った時、留学することを決意。ハリウッド映画にも興味があり、メークや英語も学びたかったんですね。ハリウッドは本場というイメージがあったので、留学先もLAに決めました。
 
 アーバインの語学学校に通った後、ハリウッドのメーク専門学校に通うように。その間に、日本のミュージックビデオを手伝うチャンスに恵まれたり、学校がない週末は、ビバリーヒルズのタレント・モデルエージェンシーでアルバイトをすることにもなりました。
 
 学校を出てから1年半ほどフリーランスで働き、サンタモニカ・カレッジに入って美容師の資格を取ってからは、日系の美容室で働き、メークもやらせてもらいました。また、サンタモニカやウエストウッドのホテルの美容室でも働き、映画撮影の現場や日系企業からも仕事をもらったりしていました。
 
 その後、周りの方々のサポートがあり、ハリウッドの有名なアーティストを紹介していただくことに。1人は最近ハリウッドのトップメーキャップアーティストとして選ばれた方と、80年代に特に活躍されたヘアの大御所。現在、その2人の師匠にアドバイスをいただいています。

好きなことをやり続ける それが成功への唯一の道

 「Beauty Box」を立ち上げたのは、昨年の10月末ぐらい。日本人やアジア人を対象にした出張メーキャップサービスの会社です。ハリウッド以外でもディズニーを始め、有名なメークさんとたくさん知り合えました。このつながりを活かして、日本の若いアーティストたちに何かできたらいいなと考え、日本からの人たちを対象にしたメーキャップ教室も始めました。先日も、日本から生徒さんが30人も来られたので、アメリカ人のトップのメークさんを雇って教室を開きました。
 
 これまでに手がけた仕事の中には、氷室京介さんのヘアメークや、最近乳ガンから復活したカイリー・ミノーグさん、アシスタントとしてですが、キム・ベイシンガーさんなどがあります。
 
 成功への道は1つしかないと思うんです。色々なアプローチの方法はあっても、みんな同じことで、結局は同じ道になるのでは。それは「やり続けるしかない」ということ。私はメークをやり続けたい気持ちだけで、手探りでやってきたら、こうなっていました。好きなことだったらお金がなくても、情熱があればできると思います。例えば、彼や友達にメークしてそれを写真に収めたり。そうしていくといつの間にかメークの対象がセレブになっていったりするんですね。
 
 やり続けたらステップアップしていきます。同じことをしていても腕が上がっていくんですね。後は周りのサポート。何かやりたいとずっと言い続けていたら、絶対誰かが助けてくれます。
 
 メークは素早さがないとダメですね。昔は遅かったので、撮影のクルーの方にも迷惑をかけていました。時間と監督の要求に応じることと、特に大きなプロジェクトでは、チームワークでどれだけ仕事が早くできるかが重要です。
 
 私がメークをすることでキレイになったり、思い描いていたイメージを超える時が楽しいですね。自分の思っていた以上の出来で、お客さんや俳優さんが喜んでくれると、やっていて良かったと思います。いつもいい緊張感がありますし、終わったらすごく充実感があります。大物やセレブに会う前は緊張したり、失敗したらどうしようと思いますが、それがうまくいってみんなが喜んでくれたらすごくうれしいから、それがクセになりますね。
 
 好きなことを通して自分も成長できるし、色んな人に会えて貴重な体験ができるのがやりがい。私のメークで、普段メークしない方が、120%キレイになります。ひと筆ですべてが変えられる、魔法みたいなところが魅力です。

自分の学んだすべてを 目指す人たちに伝えたい

 メーキャップアーティストを目指す人へのアドバイスは、「人の言うことを聞くこと」。自己満足で終わったらただの趣味です。
 
 例えばモデルさんにするべきメークがあるのに、自分なりのメークをしてしまってはダメ。今日はCMだからナチュラルで、と言われたらナチュラルにしなくちゃいけないし、いかにキレイにするか、腕をいかに上げるか、それは仕事をもらう上で大切なことです。そして、自分ができたと思ったことはすぐに人に伝えることです。
 
 それから、この業界では技術はあって当たり前、だからいかに人脈を広げていくかが大切です。ただし、人脈を広げることに忙しくて、最新の技術を学ぶのがおろそかになってもいけません。人脈作りと技術向上のバランスの取り方が大切になります。
 
 今度、Beauty Boxは「Blue Machine Global」という名前に変わります。将来はBlue Machineを通してみんなでチームを組んで、何かできればいいなあと思っています。私もまだまだハリウッドではひよっこアーティストなので、将来はエージェンシーに入って、セレブのイメージ作りに携わりたいです。
 
 日本から来たメークを学ぶ生徒さんたちは、みんな目をキラキラさせて、「教えて、教えてー!!」って感じでした。こんな子たちがまだ日本にもいるんだとわかって、彼らに何でもしてあげたい、すべてに応えてあげたいと思いました。
 
 ある程度自分で何でもできるようになったら、「自分だけいい思いをすればいい」じゃなくて、若いアーティストの手助けをしたいです。自分の今までやってきたことを伝えていきたいんですね。
 
(2008年4月1日号掲載)

「アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)」のコンテンツ